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男子高校の生物部員はコスプレイヤーの夢を見るのか?2 はい、見ています!  作者: 高城 剣


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第9話 怪談は晩夏にやって来る

法事から帰った俺は、望に電話でガン詰めされていた。

「謙一が生意気だ」と「麻琴が冷たい」「リリーナが可愛すぎる」という愚痴?は聞き流す。

で、ハロウィン前に写真集の撮影を終わらせなきゃいけないってことがメインになった。

中間試験もあるし、スケジュールはタイトなんだよな。

さらに、俺が撮影に同行しないってのがお気に召さないようだ。

気持ちはわかるけど、文化祭の準備もあるし、ぞろぞろ全員で行っても邪魔なだけだろうし、ユウさんだっているんだし。

出来る限りデートをして、ご機嫌取らないと、痛い目に遭いそうだ。

「そうそう、痛い目に遭わすから」

「電話越しでも心を読むのか」

「まぁ、幾美だけだけどね、そこまで心を通じさせられるの」

「デレればいいと思ってないか?」

「……思ってないよ」

まったくもう。



「望ちゃんから連絡あったけど、何か写真集のロケ地、提供してくれるから幸次は無駄なことするなって」

「なんで、あの人は無駄に攻撃的なんだ?」

「多分、幾美くんが甘やかしているのと、謙一くんがやたらと絡むからじゃないかな?」

「で、とばっちりか」

「諦めなよぉ、元々ドSなんだし、あの娘は」

と、成美がおれの背中に抱きついてくる。凶悪な停止スイッチを押し付けながら。

「事前にロケハンとか出来ないかな」

「自分で聞きなよ」

「無駄なことしてた男としては、ちょっと」

「女々しいなぁ、もう。いいよ、聞いたげる」

と、成美は僕の背中から手を伸ばして携帯をいじり始めた。

「見えないのによく出来るな」

「秘技、|無明心眼電子文打ちのむみょうしんがんでんしふみうちのじゅつ!」

「何言ってんの?」

「もっと感心しなさい!」

「いでぇ!」

成美が両足を前に回し、器用におれの太ももを足の指でつねってきた。

あっちは言葉の暴力、こっちは肉体的暴力。

幸福とは言い切れない環境だ。



「そんで、ハロウィンにオレは何をやらされるんだ?」

「ん?モーターエンジェル ベリファストのクゥちゃん」

「ボーイッシュなレースクイーンの?」

「そうそう、あの娘、可愛いよね」

かわいいキャラであることは同意するけど。

「で、未来は?」

「エースドライバーのラムネ」

どうしても女装は避けられないらしい。

「不満そうなんだけど?」

「彼女からひたすら女装を勧められて満足な男はあまりいないと思うけど」

「え?絶対似合うからのキャラ選択だよ」

「ボーイッシュだからボーイがやるってもんじゃないと思うが」

「あたしに任せなさい。ばっちり、生物部全員が惚れちゃうくらいの出来にしたげる」

「それは地獄絵図だな」

「地獄巡りも将来的に役立つと思うけど」

「未来はどうしてもオレを仏門に入れたいのか?」

「あ、どうせなら頭剃っちゃう?ウィッグ被りやすいのと将来に向けてと一石二鳥じゃない?」

「心行院女子は謙一に毒されすぎだ」

「浮気はしてないよ?」

「そういう返し方だ、そういう」

悲しいかな、オレは未来に心底惚れているので、結局は逆らえないんだ。剃りはしないけど。



リリーナとの今後にも関わる話なので、おれちゃんは実家での事を全て話した。

「OK!そしたら、一緒に勉強しよ。ひたすらアタクシと勉強しよう」

「えー!勉強だけ?」

「もちろん!」

「おれちゃん、ご褒美無いとなぁ」

「自分のことでしょ!なんでご褒美欲しがるの!」

「だってさ、嫌なことをし続けるには何かさぁ、モチベーション?それがさ」

「危機感なさすぎだよ」

それはわかってるんだよ。でもひたすら勉強に打ち込むのは、おれちゃん的にな。

「わかったよ。それじゃあ、無事進学が確定したら……」

と耳打ちされた条件は破格だった。おれちゃんには破格過ぎる。

「え?いいの、か?」

「あ、アタクシだって、憧れっていうか、その……とにかく、それでいい?」

「OKOKオフコース」

「もう!」

と、リリーナが投げつけたクッションは、おれちゃんの顔面をヒットした。



僕は麻琴とキスをしている。公園の木陰で。

お互い、隙あらばイチャつきたいお年頃だし。

「ふにゃああ」

キスのあとにフニャフニャになる麻琴が好き。

そんな麻琴を最近フニャコトと呼んでいる。

フニャコトを連れてベンチへと移動。

「もう、激しいんだもん」

「それに応えてくれる麻琴が好き」

「ばか」

「さて、写真集の件だけど」

「謙一、余韻を吹き飛ばすよね」

「外であんまり、よいんよいんしてると、通報されちゃうかもだから」

「そうかもだけど!もう」

僕は麻琴をよしよしと撫でながら話し始める。

「テーマは森の中でエルフを見つけた!ってやつ。最初はわざと判りにくい感じで偶然映り込んだ的な写真から始まって、徐々に彼女たちを追っていくうちに完全に姿を捉えることに成功したのである!ぱぱぱーぱぱぱぱー♪」

「なんで変な特番みたいになってるの?」

「僕と幸次とユウさんで、昨晩盛り上がった結果」

「そっか、そのユウさんも混ぜるな危険タイプなんだね」

「……そうだね、うん」

麻琴が辛辣だ。

「なにか質問や意見をお願いします」

「どうしても笑いを取りたいの?」

「ん?真面目に美少女エルフの写真集、だよ?笑う箇所はないけど?」

「でも、今の説明、他の人にしたら、みんなそう感じると思うけど」

「わかった。ぱぱぱーぱぱぱぱー♪は抜く」

「うん。良く気づいたね。偉い偉い」

と麻琴によしよしされた。あれ?

「あと、合宿で撮ったようなのは撮らないから」

「当たり前だよね?」

「うん、二人のときだけね」

麻琴に両頬をつままれ、伸ばされた。



「おーい、美少女軍団!こっちこっち~」

とカフェ店内で手招きしているのは成美さん。

死ぬほど恥ずかしいので、やめてほしい。

放課後に成美さんの呼びかけで集まっての女子会。なので心行院生徒4名は制服姿。

傍から見れば、小さい美人のお姉さんが、女子高生を呼びつけて侍らせているかのよう。

なんてことを口に出すと、痛い目に遭うから、あたしは言わない。望が言いそうで怖いけど。

「まったく!恥ずかしい呼び方やめて」

と言いつつ、望は成美さんの隣に座る。

その正面にリリーナ、麻琴、あたし。

停止スイッチの大きな二人組に謎の圧を感じる。

「なんで望が仕切るかのような圧を発するわけ?」

「ん?撮影場所がうちの山だから、注意事項あるし」

そうかもしれないけど、圧は不要だよね。

「まぁまぁ、望ちゃん、緊張してるんだよね。よほどのことなのかな?」

「それをこれから、たっぷりと大げさに言おうとしてたのに、成美さん、腰折らないで」

「あんたは実際に腰折られなさい、まったく。普通に話して」

「はいはい。その前に」

とメニューを広げる。

「オーダーしないとね」

望ペースはいつものことかもだけど、麻琴とリリーナが妙に静かなのが。

「麻琴、リリーナ、どしたの?静かだけど」

「この前、ノゾミと遊んだから」

「散々だったから」

とため息を付く二人。

「望、あんた何したの!」

「私は別に……」

「おもちゃにされた」

「デートの邪魔された」

まったく、この娘は。

「あ、あれは、遊んだだけだよね?いっしょに」

「「そういうことにしたげる」」

と、何かビビる望に二人が声を揃えて言った。

「もー!」

ほんと、強くなったね二人とも。お姉さんは安心して卒業できるってもの。

「未来ちゃん、遠い目をしてないで。ほら、麻琴ちゃんもリリーナちゃんもオーダー決めちゃいなさい」

「OK」

「はーい」

「ビックリフルーツティーは無いからね」

「知ってるし、あっても頼まないし」

「麻琴ちゃんのイタズラのせいで、レンタカー屋さん別の店を探さなきゃいけなくなったんだよねえ」

「……何のこと?」

「ほぉ、だいぶ染まったねぇ」

「知らないもん」

あぁ、麻琴ってばケンチの悪影響だな。やはり1回ケンチを絞めた方が良いのかな。

なんて思ってたら、麻琴があたしの背中に顔を隠すように入り込んできた。

「ちょ麻琴、あんた」

「へえ、未来ちゃんを守備表示で召喚か。なら、ボクはトラップカード発動!停止スイッチ発動」

「店追い出されるよ、いい加減にしないと」

というリリーナの冷静な一言で事態は収まった。

リリーナの成長が怖いわ、あたし。

望は笑ってるし。



放課後の生物部室。

本日はいつもの5人衆+ユウさん。

幾美、崇、恭ちゃんは文化祭、僕と幸次とユウさんで写真集、それぞれの打ち合わせ。

「おれちゃん、写真集の方がいいなぁ」

「やかましい、たまには生物部員として役に立て」

「イクミン、言うよね」

あ、恭ちゃん、拳固食らってる。


あっちは放っておこう。

「で、宝珠からロケ地の森のマップが来たんだけど」

と、僕は自分のタブレットに幸次が部室に置きっぱなしにしていたプロジェクターを繋いで、地図を壁に投影。

「禁足地って書かれた場所が飛び飛びにあちこちにあるのがイヤなんだけど」

と、ユウさん。

「あまり奥に行かない、アンド、宝珠の注意に従う、が絶対条件だってさ」

「おいらたち、殺されに行くの?」

宝珠慣れしてるこちらとは違い、ユウさんは不安でいっぱいのようだ。ちょっと面白い。

「肉体戦闘と精神戦闘のプロがいるから大丈夫だと思う」

「おまえら、どんな女子と付き合ってんだよ」

「「可愛い女子」」

「声を揃えて惚気ないでほしい」

「ユウさん、諦めろ、謙一は特に重症なんだ」

「そっか、諦める」

「僕に対して失礼なことを言ってることは判るぞ」

「わかってくれたなら光栄だ」

幸次がサムズアップしてきやがった。

「いいから話進めろ。おいらだって暇なわけじゃない」

「はいはい」

僕は恐怖マップから、夏コミエでの写真に切り替えた。

「こんな感じのコスなんだが・・・あ!」

「どした?」

「リリーナさん、学校で金髪NG食らって、今黒髪なんだった」

「ムリョウさんにウィッグ準備してもらう?」

「そだな。メールしとく」

とメールしたところで、僕は幾美に呼ばれたので、幾美の用事と崇の相手をさっさと済まし、すぐに戻った。

我ながら勤勉だ。



「ん?ケンチからLIMEだ……確かにそうだ。なるほどね、銀で統一しちゃうか」

「謙一から?」

「そうそう。約束通りグループで来てるから見てみ」

と未来さんがスマホの画面を見せてくれた。

そっか、リリーナさん黒髪だもんね、今。

「リリーナ、写真集用にウィッグ準備するから、頭のサイズ測らせて」

と未来さん、カバンからメジャーを取り出した。

「いいけど、ミキはメジャーを持ち歩いてるの?」

「うん、いつでもどこでも色々測れるようにね」

何か邪な雰囲気を漂わせる未来さん。

「麻琴、夏休み明けで油断しなかった?したなら、今測ってコス直しとくよ」

「カフェでスリーサイズ測られたくない」

「じゃあ、ウチ来る?キングと遊んでもいいよ」

キングという存在に一瞬心が揺らいだけど、

「大丈夫。変わってないから。そんな誘拐犯みたいなセリフには釣られないよ」

「まったく麻琴は、もう。ケンチの誘いにホイホイ乗っちゃってアレコレしちゃうクセに。ズルいんだから」

「変な言い方しないで、もう」

思い当たるフシがあるのは内緒。



麻琴から返信。

なるほど、未来さんはOKくれたようだけど、未来さん宛の問い合わせの返信が麻琴から来るのは……まぁ、一緒にいるからだろうけど。

「ムリョウさんから回答きた。シルバーのウィッグを準備するってさ」

「戦隊の統一感ってやつだな」

「あれだけキャラがバラバラなのに、統一感も何も。そもそも、そういう事を言うなら、戦隊じゃなくて種族とかジョブだろ」

「なるほど」

「狂戦士、呪術師、ビーストテイマーとジョブもそれなりに揃ってるし」

「崇と恭も相方に、早めにジョブを取得するよう勧めないとな……狂戦士ってジョブか?」

「知らん。本人に聞け」

「殺されるんだが」

するとユウさんが僕と幸次の肩をガシッと掴んできた。

「頼むから話を進めてくれ。暇じゃないって言ったよな?」

「「はい」」

ユウさん、怖いんだよ、凄むと。



「合宿で捕獲したカブトやクワガタは生きていれば生体展示、死んだら標本展示。なのでテーブル4分の1でOKだ」

幾美が言っているテーブルっていうのは理科室の6人用テーブル。なので結構でかい。流し台も各テーブルに付いてるし。

「恭には、捕獲に使った樹液レシピと捕獲の様子の写真をレイアウトした説明書きを作ってほしい」

あからさまに面倒くさそうな顔をする恭。幾美相手は懲りたのか、一言も発さずに。

「謙一!樹液レシピ!」

と、幾美が単語だけで命じるのは相変わらずで

「僕は樹液レシピじゃないですよ。しっかりしてください」

と、謙一が余計な返しをするのも相変わらずだ。

実に生物部らしい。合宿以降、部活動らしいことはしていなかったしな。

「崇、謎の感慨にふけった顔はやめろ」

「やかましい。別にいいだろ」

「崇が老けたと聞いて!」

と急に謙一がこっちに顔を出してきた。

「はいはい、ユウさんに怒られる前に戻れ」

「ちぇっ、崇のいばりんぼ」

「いいから、謙一!樹液のレシピ!」

「バナナ、焼酎、お酢、黒砂糖、水を煮詰めるだけ!」

と叫んで戻っていった。

適材不適所だな、こりゃ。

「崇はマツモムシに刺された際の痛みと危険性に関しての文章を」

「どんなレポートだよ」

「聖火着火の儀のパネル展示にしとくか?」

「はいはい、マツモムシ痛い痛いの方ね」



オーダーした品が全員の前に並んだところで、望ちゃんが話し始めた。

「さて、注意事項なんだけど、成美さん、腰折りたくてウズウズするのやめて」

しまった、バレている。

「はーい。お姉さんは静かにしまーす」

麻琴ちゃんが大きなパフェをパクついているのを眺めて和むことにする。

「それじゃ、男子たちの欲望の結晶である私たちの写真集のロケ地について説明します」

皆、話の腰を折らないように、望ちゃんの余計な言葉をスルー。

微妙に不満げな色を顔に浮かべながら、望ちゃんが続ける。勝手だなぁ、この娘は。

「松本家の所有する森……っていうか山ね。その一つで今回のロケを決行します」

別荘持ちの幾美くんも歯が立たないレベルだね。山だし。

「山の中は、いくつかの禁足地があります。そこは赤いしめ縄で囲われてるから絶対に入らないようにね。しめ縄に触れるのもNGで」

なにやら洒落にならない場所に行かなきゃいけないらしい。

あ、麻琴ちゃんのパフェを食べる手が止まった。

「さ、触ったらどうなるの?」

「二度とケンチには会えないのは確か」

「死んでも触らない」

健気だねぇ。謙一くんの名前を出す望ちゃんは大概だけど。

「ノゾミ、きんそくちって何?」

「足を踏み入れることを禁ずる。要は立入禁止ってこと」

「わかった」

「未来は何か質問ある?」

「ないわ。続けて」

「当日、山に入るのは私たちだけなんで、知らない人を見かけても、なるべく反応しないこと」

何か無事じゃ済まないフラグ立ててないか、望ちゃん。

さすがに突っ込んでおかないといけない。

「反応すると?」

「気づくと禁足地の中にいる、らしい」

「コスプレの撮影だよね?都市伝説を追え!とかじゃないよね?」

「やだ、わたし行かない」

「アタクシも。キョウに会えなくなるの困るし」

「の・ぞ・み?」

あ、未来ちゃんが怒りの眼差しで望ちゃんを見てる。

「あ、あはは、あのね、そういうことがないように、私がちゃんと処理してから、皆には山に入ってもらうから。うん、大丈夫だから。麻琴もリリーナも、ね。大丈夫だから」

こうなるのわかってるだろうに、自制の効かない娘だね。

「「ホントに?」」

普段の行いが信用度を決める、良い例だ、ホント。



あ、麻琴が、こっそりメールをしてきた。

……

「なぁ、幾美!」

「なんだ?」

「あーーーやっぱりいいや」

「なんなんだよ!」

宝珠のやらかしを、幾美に言ったところで、何の解決にも役にも立たないし、こっそりメールだし、いちいち言うことも無いか。



「ロケ地に関してはわかった。あたしたちの初のロケ撮がデンジャーゾーンってのが……まぁ、あたしたちらしいか」

「未来ちゃん、完全に発想が毒されてるよ」

「えー?成美さんに?」

「うん、そういう返しも含めて、男子連中のね」

「そっかぁ、崇に染まっちゃったか、あたし」

「麻琴ちゃんより重症とは」

「なんで、わたしを引き合いに出すの?」

「ツップリーズはバカップル、でしょ?」

「でしょ?じゃないし、ツップリーズ言うな」

「バカップルはいいんだ」

「だって、みんなそうだもん」

「「「「ナイス、ツッコミ」」」」

謙一がいないと厳しい戦いになる。よくわかった。

「それはともかく!」

ここで仕切り直さないと先に進まないことはわかる。経験則ってやつで、わたしにはわかる。

「謙一からの伝言があります」

あ、静かになったけど、みんながげんなりしてる。

「いいですか?今回の写真集のテーマは森の中でエルフを見つけた!ってやつ。最初はわざと判りにくい感じで偶然映り込んだ的な写真から始まって、徐々に彼女たちを追っていくうちに完全に姿を捉えることに成功したのである!とのことです」

あれ、リアクションがない。ぱぱぱーぱぱぱぱー♪は抜いたのに。

「うん、指示されたように動くから、あたし」

「私もカメラマンの、ユウさんだっけ?ちゃんと従うから」

「アタクシ、頑張る」

「ボクは年長者として、若者に従うよ」

あれ?逆に怖いレベルに素直なの、やめてほしいなぁ。



女子会も終わり、私が家に帰ると

「久しぶりね、望」

玄関に姉、(ひびき)がいた。会うのは2年ぶりだ。

(ねえ)さま。帰ってたんだ」

「仕事も一段落ついたからね。聞いたよ、コスプレ撮影で三の山、使うんだって?」

「え?うん、まぁ」

耳が早いと言うか、母様の口が軽いというか。

「下準備、やってあげようか?」

「え、姉さま、でも」

「当日は撮影に集中したいでしょ?私も昔はそうだったし」

姉の響は元レイヤー。私とは10歳も離れているので現役時代のことは良く知らない。何回か写真を見せてもらったことがある程度。

「彼氏も出来たんだよね、しかも掟は守ってるみたいだし、偉い妹にはご褒美をね」

「よくご存知で……とにかく、私、着替えたいから部屋に行こう?」

「そうだね。望に早く会いたくてお出迎えしちゃった。あはは」

以前と変わらず、仕事の時以外は明るい姉。

再会はとても嬉しい。無事でいてくれて嬉しい。

「望?」

「うん、おかえり、姉さま」

「ただいま、望」


私は部屋に入るなり、速攻で制服を脱ぎ、部屋着に着替えた。

「相変わらずの早わざだね。しかも部屋着まで着てて偉いね。昔はパンツ一丁で走り回ってたのに」

「思い出を捏造しないで」

「捏造?おかしいな、写真撮った記憶が」

うん、私があいつらと普通に付き合えるのは、この姉さまのノリに慣れていたからかもしれない。

そして、それに飢えていた、のかも。

「ちょっと待ってね、今、三の山の掃除しちゃうから」

と、姉を両手で印を結び、小声で真言を唱えた。

「はい、終わり。向こう3か月は大丈夫だよ。禁足地は相変わらずだけど」

「ありがと」

「それじゃあ、望の最近の活動を写真も合わせて教えてもらおう!彼氏の話もね」

逆らうと、笑顔で金縛りとかかけてくるので、私は逆らわない。逆らうような話じゃないしね。


一緒にお風呂に入ったり、丑三つ時まで話をして、一緒のベッドで寝たり、姉との再会のひとときを楽しんだ。


朝になり、アラームで目を覚ますと、横に姉はいなかった。

母様に確認すると、また仕事だそうだ。

今度会えるのはいつだろう。無事にいてほしい。

私はそう思いながら、学校へと向かった。

眠いなぁ。



昼休み。生物部室。

僕は学食で買った焼きそばパンとチーパン(フランスパン生地にチーズと玉ねぎを載せて焼いた、学生の財布の味方)をコーヒー牛乳で流し込んだ。

イジメの件は解決したけど、ここで昼飯を食う習慣は変わらない。

崇は学食から持ってきたらしいカレーライスを食べている。

学食から食器を持ち出すことは禁じられているのだけれど、部室が食堂の隣の棟にあるので、バレにくいから、崇はもとより、今はいないが、恭ちゃんがよくやっている。

「崇、女装は順調?」

「逆に何がどうなったら順調じゃないという判断なんだ、おまえは」

「質問に質問で返すな!あ、そうだ、宝珠に連絡しなきゃ」

「おまえはよぉ、まったくよぉ」

なぜか文句を言い始める崇を無視して、僕は宝珠にLIMEを打った。

幾美も幸次もいないし、崇いじりを一人でやってもあまり面白くないし。

LIMEの要件は、昨日ユウさんから言われた、事前のロケハンもしくは山の中の様子の分かる写真の提供依頼だ。

確か幸次も成美さん経由で頼んだような話をしていたけど、無視されたのかな。

女性陣からの命令で、個人間のLIMEは禁止、グループLIMEオンリーに最近させられた。

別に他人の彼女を口説いたりとか浮気したりとかはしないんだけど、女性陣の不安を取り除くためというなら仕方がない。見られて困る内容なんかないし。

麻琴とのメールくらいだ、見られて困るのは。

あ、返事きた。

【山の場所は運転手である成美以外には教えられないし、車じゃないといけない場所。だから写真送るけど、景色以外に写ってるものは無視して】

もう、写真見るのも怖いじゃないか!

「崇、宝珠からの写真確認して」

「イヤだ、馬鹿野郎」

崇も怖くてスクロールして写真を見たくはないらしい。

仕方がない。事前に知りたがってしまったユウさんに、後で見せよう。



放課後。

「なんてもの見せるんだ!バカ謙一!」

「へんなものを望に送らせるな!」

ユウさんと、なんだか幾美にまで叱られた。

僕は全く悪くないと思うのだが。

「リリーナから、今夜一人で寝られないって連絡きたから、おれちゃんは一緒に寝るんだ」

そんな報告は、いらない。

ここまで来ると、逆に写真が気になるのが、人間の(さが)というもの。

「幸次、一緒に写真見よう。幸次もロケハン、したがってたよね?」

「そんな罠にかかるとでも?」

「あはは、でもこのままじゃ、グループLIMEを開けないのはお互い様だと思うが?」

「おい、幾美!宝珠さんに確認取れ!ホントに見ても問題ないのかどうか!」

「ちっ、しかたない」

宝珠め、生物部を殺伐とさせやがって。

「返事きた。ちゃんと見てから消した方が良い、だって」

「見なきゃいけないのかよ」

幸次はがっくりと項垂れた。

仕方がない。見るか。

と画面をスクロール。

森の中、赤い注連縄が張られた木の陰から、真っ赤な爺さんがこっちを見てる。ありえないくらいの笑顔で。しかも爺さんの目線、こっちを追視してくる。

「デリート!」

僕も幸次も崇も一斉に写真を消した。

あ、麻琴から電話だ。

宝珠のことはきつく叱っておいた。今夜怖いから寝るまで電話して、とのこと。

くそっ、変なご褒美が発生してる!


脳裏から、あの爺さんの笑顔が消えてくれないのだが、仕方がない。ここは仕切り直さないといけないのだが。

「こっちで撮る写真に、アレが写らない保証が欲しいんだが」

ユウさんの主張は最もだ。

「幾美くーん、確認してぇ」

と、故意にダル絡みしてみる。

「待ってろ」

あ、宝珠のやらかしだと反抗しないな。

コレ以上のやらかしはしてほしくないから、幾美の弱点としては弱いな。

「拡散して弱めて消去で完全決着、問題なし!だとさ」

「そういうのは身内でやってほしいよな」

幸次の言い分も最もだ。僕たちを巻き込まないでほしい。

「追伸来た。尋常じゃない運の強さを持つグループが必要だったのよ、ケンチ。だってさ」

もういいや、まったく。

「そんじゃ、文化祭と写真集の……」

「崇、恭、出来てるとこまででいいから、原稿見せろ」

「現場は広葉樹メインだな。木漏れ日で神秘感を出すのはあり、だな」

うん、自主的に進めていただけるのなら、それが何より。

もう、黙っていよう。



放課後のいつものカフェ。

さっきから、麻琴とリリーナが私のことを、両脇から、ずっとポカポカ殴ってくる。

「望が悪いんだから、今日はずっと叩かれてなさい」

と未来に言われた。

だって姉さまが、あいつだけは独力じゃ無理って思い出した、とか言うから……

「なんで、あんたは怒られてるのに、美少女両脇に侍らせた女王様みたいな顔してんのよ」

「え?そんな顔してる?」

「「「してる」」」

なんだろう。私の立場が堕ちてきている。

「なぜだろうみたいな顔してんじゃないの。まったく。部長にでも相談してみなさい」

「幾美に?なんか言いづらいなぁ」

「望さんが遠慮?」

「ノゾミが消極的?」

両脇から驚愕している様子が伝わってくる。

こういう状況よね、結局。

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