次会う日まで
それから速くも1ヶ月がたち、学院へ行く前日となった。叔父さんが僕を学院へと連れていってくれるらしく、今も屋敷に残って仕事をしている。
授業は順調に進み召喚術学以外の学問の初級と教養はあらかた覚えた。これで学院でもなんとかなるだろう。
「今日は授業ないんやろ?」
と聞くコウに少し頷く。
「うん。そうらしいね。」
流石に最終日まで授業があったのなら僕はストライキしていただろう。
「ならカイ、俺と手合わせ願うわ!!」
「ゲッ、嫌なんだけど。勝てるわけないじゃん。僕、負ける戦いはしない主義なんだ。」
この国の法律を死ぬ気で覚えるために訓練も所々サボっていたのだ。勝てるわけない。
ちなみにレインはすくすく育ってもう成体と変わらないほどの大きさになった。
学院には連れていけないが時々家に帰れるので僕のことを忘れるという心配はなさそうだ。
「そんじゃあ一緒に街行かん?まだゆっくりこの街を回ってへんかったやろ?」
もしかしてこれはアレか?難しい頼みを最初にして断られた後に本命の頼みをするという高等テクニックなのか?
「たしかに!それはいいな!僕も行くよ」
イリアスが行くのか…
「じゃあ僕も行く」
一人だけ行かないのはちょっとな…
「では僕もお供します。」
「俺も俺も!!」
「んじゃみんなで行こか!」
というコウの一言により全員で行くこととなった。
それから僕らはいろんな所を見て回った。
街のシンボルである時計塔や一番美味しいと言われている串焼屋、そして武器屋に本屋 ect …
「この街本当にすごいな」
街に必ずできるスラム街でさえも他の街とは違ってかなり整備されていてキレイだった。
街中も活気に溢れていて皆笑顔だった。
「まあ、あのお祖父様が治めている場所だからね」
頭のいい人間が治める領地が全て素晴らしい領地だと言うわけではないが、お祖父様は圧倒的なカリスマ性や強さ、優しさを持っているので統治する側の人間としては最高だろう。
「もっといろんな所に行きたいのはやまやまなんですけど、そろそろ戻りませんか?」
ユウリの声にふと空を見るともう赤みがかっていた。
「もう夕暮れか、時間が過ぎるのがいつになく速いな」
そうして僕らが屋敷に入ると執事さんになぜか食堂まで案内された。
食堂の扉が開いたと思うとクラッカーのような音が聞こえた。
パンッ!!
「なっ、何?」
思わず耳をふさいでしまう。
「カイのお別れ会やで!」
お別れ会?
「なんだそれ?」
「とりあえず真ん中行って!」
よくわからないが言われたとおり真ん中に行く
「ケーキでかっ」
よく作れたよね、これ。僕の身長ぐらいあるんじゃないだろうか?
「遠慮せず食べなさい。この家で食べる最後の晩餐なのだから」
そう言われたので遠慮なくケーキから食べる。僕はけっこうな甘党なのだ。
「あーだから朝っぱらから僕を街に引きずり出したわけか」
何かおかしいと思ったんだよね。
「引きずり出したって…」
とイリアスが苦笑いする。
「まっ、こんな日があってもいいかもね。」
と言って一番上のイチゴを食べた。
翌朝
「ムムムゥ~」
「ワフッ!」
「じゃあカイ、次の長期休暇の時にまた会おな!!」
「忘れないでくださいね!」
「次会ったら手合わせ願うぜ!!」
「いや、さすがにそれは嫌かな」
「それじゃあカイ君、準備はいいか?」
僕らはテレポートの魔法陣で移動するらしい。
テレポートの魔法陣とは伯爵~公爵までの本邸に設置されており王都のルーヴルに繋がっている。学院はルーヴルにあるため魔法陣を使うのだ。
もちろん普通は使ったらダメなんだが、今回は叔父さんに緊急の用事があるということでついでに僕もという感じだ。
「いつでも大丈夫です。」
「そうか、ではまた会いましょう父上。」
叔父さんがそう告げた瞬間、パッと景色が変わった。もっと酔ったりすると思ったんだが少し拍子抜けだな…
「ここがルーヴルにあるハルシャ家の別邸だ。ここから馬車で学院へ行く。こっちだ。」
馬車を走らせて30分、ようやく学院が姿を現した。
「ここがアルバード王立高等学院だ。ここから先は私は立ち入ることができない。」
たしか学院には大きな結界が張ってあるとか言ってたっけな…
それじゃあ僕1人でこの迷宮を進まなくてはならないのかな
「あの、ハルシャ家の方ですか?」
声の方を向くと青紫の髪をした青年が立っていた。
「ああ、そうだ。」
「私はアクアマリン寮の寮長のゼノン・ティールと申します。」
ゼノン・ティール。男爵家の次男で学院での成績は非常に優秀。誰にでも優しく女子生徒からの人気も非常に高いとか…
「そうか、それはちょうどいい。それでは私は戻るとしよう。カイ君、彼に案内してもらいなさい。それでは」
と言ってクールに出ていった。
「はじめまして、カイ・ハルシャです。これからよろしくお願いします。」
そう言ってお辞儀する。
「ふふっ、君はいい人だね。寮に案内するよ。」
それは男爵家の人間にもかかわらず敬語で話したからだろうか?
そう思いながら彼の後についていった。




