ソノサキへ
朝起きるとなんか妙にスッキリしていた。
いやそんなことより変な夢を見た気がする。銀髪の人が突然現れて…あれ、、なんだっけ?
「カーイ!起きてへんの??朝ごはんやって!!」
マジか…寝坊したな。まあ、いつものことか…
先に行っとくよう告げてからパパッと服を着替える。ちなみに超高級品とかではなくちょっと裕福な商人が着てるレベルの服だ。高価すぎる服は落ち着かないのでやめてほしいとお祖父様に頼んだのだ。
「お待たせ」
そう言って自分の席に着く。
「いや、以外に速かったな」
エレンが少し、いやだいぶ嬉しそうにそう言う。
そんなに僕が二度寝しないのが嬉しいのかと思いつつ手を合わせる。
「ホンマやな。せっかくもう一回寝るにかけたのにな~」
と言いながらコウはデザートらしきものをエレンに渡す。
「いや~カイを信じてよかった」
なに人で賭けをしてくれてるんだろうか?ひどすぎる…
「お祖父様は?」
「今日客人が来て忙しいからパスって言ってましたよ。」
「客人か…」
多分次期公爵だろうな。自分の息子と同い年の僕が現れて少し様子を見に来たというところか…こんなすぐに来るとは思っていなかったな
この際はっきりさせておいた方がお互い楽だろうし後で会いに行くか…
「カイはこれから授業なん?」
少ししょんぼりした顔でコウが聞いてくる。
「うん。昼食を挟んで3時までだけどね。」
本当は勉強なんてしたくないがこれからの人生のため仕方がない。逃げて手に入るものは何もないのでここは素直に従っておく。
「もしよかったら授業の内容を俺らにも教えてくれへんか?知っといて損なことはないと思うねん。もちろん、負担になるんやったらノート貸してくれるだけでもかまへんで」
残念ながら僕はノートをとっていない。なぜなら書くことに集中してしまうためだ。
僕はなぜか先生が話すことを聞き取ることに集中するか先生が話すことを書き取るに集中するかしかできない。
前世で高校の時に一度だけノートをとってみたがやはり効率が悪かった。だからそれ以来とらないようにしているのだ。
「それくらいなら問題ないよ。君達も知っておいた方がいいと思った内容をかいつまんで話すよ。で、そっちの予定はどうなの?」
都合が合わなければ話せることも話せない。
「俺らは昼までは訓練やな。その後は好きなように過ごしていいって言っとった。」
それは、、いいなぁ…
「なるほど。じゃあ3時以降に部屋にいるようにするから来たい人は来てね。それじゃあ僕はそろそろ授業に向かうよ。」
そう言って食堂から出た。
教室に行く途中で黒髪の男性と公爵が歩いているのに遭遇した。
「丁度いい!カイ、コイツは私の息子のクレインだ。挨拶しなさい。」
その言葉に少し頷いて挨拶する。
「公爵家次期当主様にお初にお目にかかります。カイ・ハルシャと申します。」
そう言って胸に手を当ててお辞儀する。たしかこれがこの国の最も敬意を払った作法だったはずだ。
「君がフィオレーナの…これは失礼した。私はクレイン・ハルシャと申す。父から君のことは聞いている。突然ですまないが1つ質問させてくれ。君は公爵位に興味があるか?」
少し警戒していることが言外で伝わってくる。それにしても真っ直ぐな人だ。普通面と向かってこんなことをしかも初対面で聞く人はなかなかいないだろう。
真剣な問いには真剣に答えてやらないとな
「いえ、全くといっていいほどありません。そもそも公爵家をつがなくていいという約束でしたし、私としても友をそして自分を守るために公爵家に入っただけで爵位に興味はありません。」
と言うと少し驚いた様子で
「それはなんでだ?」
と聞いてきた。
「めんどくさいからです。権力争いも領地の運営も。僕は自分のために生きたいんです、今度こそ。領民のために生きたくはありません。まあ、貴族になったからには義務はもちろん果たしますけどね。」
貴族の義務はいろいろある。例えば戦争への参加だったり学院だったりと様々だがこの生活は民の税金によって支えられているため、それらはきちんとしていくつもりだ。
「そうか。私の息子は君と同じアクアマリン寮に所属している。仲良くしてくれると嬉しい。息子は少々臆病なのでね。」
もう寮が決まっているのか…お祖父様が圧力をかけたに違いない。
「まったく初対面で言うことじゃないだろ、それ。クレイン、お前は大人気なさ過ぎる。」
とお祖父様がたしなめるがあまり効果はなさそうだった。
「カイ君と過ごすために仕事を全て私に押し付けた父上に大人気ないと言われる筋合いはないかと。」
「うぐっ」
淡々と答える様にお祖父様は眼をそらすしかできない。
「えっと、クレイン様とお呼びすればよろしいですか?」
「いや、叔父さんでいい。私は君の母上の兄なのだから。」
「わかりました。」
「それじゃあカイ、これから授業だろ?頑張ってくれ」
そう言われたのでぺこりとお辞儀をしてそのまま去る。礼儀作法は完璧だったはずだ。これで評価か落ちることはないだろう。
「それではテストを始めます。制限時間は30分です。」
ざっと問題を見てみたが全て解けそうな問題ばかりだな…さっさと解くか…
公爵の執務室では当主のルークス次期当主のクレインそしてカイの家庭教師のカーティスが話し合っていた。
「それで、カイは合格か?」
公爵はそう言って口角をあげる。
「はい。初回の授業で満点ですからね。これからの授業もついていけると判断しました。」
「4人目の合格者の誕生ですか…」
クレインがそう呟く。
「その中でも1、2を争う程の能力があります。」
「カーティスがそこまで言うとはな。将来が楽しみだ。」
「父上、カイ君は将来どこを目指しているんです?」
聞かずにはいられないといった様子で尋ねるクレインに公爵は眉を寄せる。
「まだ疑ってるのか?アイツは公爵家を継ぐ気は一切ないぞ。冒険者として活動したいみたいだしな。」
「…公爵家の人間が冒険者ですか…」
「お前も昔やっとっただろうが。」
「若気の至りです。」
「まあいいじゃないか。俺も冒険者をやっているしな」
「…父上、そういえば何故カイ君の前では"私"と言っていたんです?」
「うん?この顔で初対面から"俺"なんて言ったら怖がられると思ってな。優しそうなお祖父様を目指しているというのにそれじゃあダメだろ?」
「そんなどうでもいい理由ですか…」
そう言ってクレインは深々とため息をつく。
「まあ話はずれてしまったが、カーティス、これからカイのこともよろしく頼む。」
「お任せください。公爵家のご子息はどちらも頭が切れるようなので私としても楽しみなんですよ。」
「そうか、それはよかった。ところでクレイン、お前何しにここに来たんだ?カイを威嚇するためだけに気たわけじゃないだろう?」
「ええ、もちろん違いますよ。私がここに来た理由は国王陛下から伝言を父上に伝えるためです。」
「そんなもの手紙でいいだろうが。」
「機密の内容だったので私が来たのですよ。」
「それでは私はここで失礼させていただきます。」
そう言ってカーティスが部屋を出た後、2人の話は夜遅くまでかかった。
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