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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
ハルシャ公爵領のライズにて

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生きることの難しさ

「なにしとったん?」


そう言ってコウはぶんぶんと剣を振る。なんかあたりそうだからやめてほしい...


「それはこっちのセリフだよ、コウ。何してんの?」


怪訝そうに僕が尋ねるとコウは少しこっちを向いてニカッと笑った。


「まあ見ときって。」


そう言って剣を持った兵士の近くに駆け寄る。ってこれまさか…


「そんじゃ、よーいスタート!」


と謎の声が告げるとコウと知らない人が剣を交える。


休憩しとけって言ったのに…まったく…これだから血の気盛んなバカはダメなんだ…



「で?あの人ら誰?」


と座って見学をしている他3人に聞く。


「公爵家の騎士団らしい。王国騎士団よりも規模は小さめだけど精鋭揃いってことで有名なんだぜ!」


ああ、だからコウはあんなにぼこぼこにされているのか…


「なるほどね。じゃあ公爵が来る前に僕は屋敷に戻るよ。」


そう言ってスクッと立ち上がる。


「え?じゃあカイは何でここに来たんだ?」


たしかに…なんで僕ここに来たんだろ…あぁ、アリバイ作りか…


「僕も訓練に参加しようと思って来たのはいいものの少しやらないといけないことを思い出してね。」


そう言って不審げな顔をしたイリアスからの問いをのらりくらりとかわして屋敷に戻った。










部屋に戻り昨日見た学院の資料をもう一度開ける。


そして全学生と先生がのっている一覧を見て顔と名前と爵位、そして寮を覚えていく。


訓練なんかほっといてこちらの対策をしなければならなくなったのだ。とゆうことにしておこう。


なぜこんなことをしているのかと言うと

それはさっきのチェスぇあの人も本気を出していなかったからだ。


囮作戦を使うならば相手のことをわかっていないといけない。


例えば、木を見て森を見ない人には大ダメージを与えることができるだろうが冷静に分析し何事も落ち着いて行動できるタイプの人にやってもノーダメだということだ。


良策も相手を間違えれば愚策、いやそれ以下に成り下がる。


あの人は間違いなく囮作戦だとわかっていながらも敢えてその策にのり相手の手のひらで踊らされているふりをするのだ。


今さらだが僕は自分でも頭がいいと思っている。だがどんなに頭が良くとも知らないことはわからない。


僕は今までにあの人のような人間に会ったことがなかった。

もし仮にお祖父様と戦うことになっても行動を予測して作戦をたてることができない。


相手のことをよく知らないほど策の有効性が減り逆手をとられることも多くなる。


もう後悔はしたくない。




この名簿に載っている数百名を全て暗記するのに約3時間。

その後に校則も暗記しておきたいがこれにはかなり時間を要するのでこまめに覚えておかなければならないな。

校則を覚えるのはグレーなことをする時に役立つとおもったからだ。まあそんなことをする日がこないことが一番ではあるが…何が起きるかわからないので仕方ないだろう。


それにこの国の法律も今日の授業の内容も、あーあとこの屋敷にいる全ての人の顔と名前と職業も覚えないとな



そう思いながら暗記勉強をし眠りについたのは深夜0時を過ぎていた。












夢の中



銀髪に金の眼の神々しい男?の前にカイは立っていた。



「久しぶり、いや、初めましてといった方が正確か…。私の名前はノアだ。」


ノアという名前の人物はこの世に1人しか存在しない。恐れ多くて人間にはつけることができないからだ。


「ノア…?創造主様ですか?」


カイは動じずそう言って首を少しかしげた。


「ああ、確かにそう呼ばれているな。」



「私に何か用ですか?」



「少々謝罪をせねばならないと思い改めたんだ。本来は我々がお前に関わるのは避けなければならないことだが状況が変わった。レイのことは知っているな?アイツはお前を消滅させるために私が送り込んだ神だ。」


カイは少し眼を見開くが落ち着いた様子で聞き返す。


「どういうことです?」


そう言ったカイに創造主は少し眉を寄せる。


「私は偶然にもお前が前代未聞の殺人鬼となり人々を殺し尽くすという未来を見てしまってな、どうにかせねばならないと思い暇そうにしていたレイを地球に送ったんだ。だが、アイツは何を思ったのかお前に情を抱き掟を破った。お前を転生させたのもアイツの仕業だ。そこまではまあ良くはないが別に構わん。………知らないと思うがアイツは不注意の神として有名なんだ。だからか今回の転生も大いにやらかした。お前の未来の姿である殺人鬼も今お前のいる世界に送り込んでしまったらしい。」


まるで興味がないかのように創造主はそう淡々と語る。


「そう、ですか…」


カイは少し複雑そうに顔を歪める。


「レイを1発殴るか?その権利は俺が保証してあげるぞ。」


そう創造主は愉快そうに言う。


「大丈夫です。彼にはそれ以上に救われましたから。」



「そうか。…あいにくとアイツはお前を信じているようだが、俺はお前を信じていない。レイには悪いが本心を見させて貰う。」


創造主が指をならすとまるで魂が抜け落ちたかのようにカイの瞳に色が無くなった。


「汝に問う。汝が今一番欲しいものはなんだ?力か?それとも富か?」



「……あなたに、、1つ、聞く、、権利が、欲しい」


そうやってまるで中途半端に壊れてしまった機械のように言葉を紡ぐ。


「…そうか。では余に何が聞きたい、言ってみろ」



「生きても…、いいのですか?こんな…僕が、、生きても、、いいのですか?」


そう言ってカイは色のない瞳から涙を流した。


「昔から、ずっと、、気になっていた。自分に、、生きる、資格が、、あるのか、」



思いもよらない質問に創造主は顔をしかめた。



「…生きるも死ぬもお前次第だ。だが、お前に生きていてほしいと思っているやつがいることも頭にいれておいた方がいい。お前に救われたやつは少なからず存在する。…忘れるなよ、お前の気まぐれな優しさがお前自身を救うことがあるということを。たしか日本語では"情けは人のためならず"って言うんだっけか?まあ俺から言えることは"もっと自分を大切にしろ"っていうことぐらいだな。」


そう言い終わってもう一度指をならすとカイの姿は消えていった。


「アイツが気にかける理由が分かった気がする。コイツはあまりにも危なっかすぎる。それにしも、なんか悪いことしたな。

まさか神の頂点である俺に自分の存在を肯定して貰おうと思ってるやつがいるとは思わなかった。

だがまあ…今のところ思い通りに事が進んでいるようだな。このまま上手くいってくれると仕事が減るんだが…」


創造主はそう呟いて新な世界の創造へと赴いた

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