新たなる命
「おーい!みんな!」
そう言って僕は少し遠慮がちに手を振る。するとコウが苦しそうに駆け寄ってきた。
「カイやん!!聞いてや!あのおっさんマジで鬼やねん!」
4人の顔を見るとだいぶゲッソリしていた。何をしたらこうなるんだろ…
「誰が鬼だ!」
コウの言葉に近くにいたお祖父様が反応してこちらにやってくる。
「何したの?お祖父様。」
「とりあえず訓練所10周走って来いって言っただけだぞ?カイもするか?」
このだだっ広い訓練所を?鬼だこの人。コウやエレンは大丈夫かもしれないがイリアスやユウリにはキツイだろ、きっと。
非戦闘員が初手にやることじゃない、、と思う
「……まあ、ハイ。」
Noと言えない日本人という言葉はこのためにあるのではないだろうか?
身分の高い人にあんないい笑顔で言われて断れる日本人はそうそういないだろう。いたら教えてほしいぐらいだ。
とゆうわけでとりあえず適当に走ることにした。
いつも走る時は必ずなにかしら危機が迫っている時なので平時のペースがわからない。そのため手探りでスタートをきる。
ちなみにだが僕は長距離走は別に嫌いじゃない。なぜならこの世界では長く走って疲れたためしはほとんどない、というかないのだ。
前世ではそこまで体力バカというわけではなかったしシャトルランでもちゃんと疲れたため、今日習ったようにこれはハルシャ家の血が関係してるんだろう。
なんとも都合のいい力だ。
剣術の才能は受け継いでないのに体力は受け継いだか…
そんなこんなで10周走り終えて水分補給をしているとコウに
「何で息きれてへんねん!!」
なぜかキレられた…少し不本意だ。
「ほら、、、ハルシャ家って、、身体能力がバカげてるから、、」
そう息も絶え絶えにイリアスが説明する。
大丈夫か、イリアス。あんまり喋んない方がいい気がする。余計に息ぐ乱れるぞ。
「そんなことよりカイ、何か俺らに用があったじゃないのか?」
そうエレンが聞く。
「ああ、コイツの孵化の仕方が分からないから相談しようと思って。」
そう言って盗賊のアジトで見つけた卵を魔法鞄から取り出した。
4人の知恵も借りようと思ったのだ。三人寄れば文殊の知恵というのだから5人いればだれかしら解決案を見つけることができるだろう。
「うん?この卵はなんだ?」
そう言ってお祖父様が覗き込む。そういえば言ってなかったな…
「僕らがライズに来る前に盗賊のアジトからかっさらったものだよ。お祖父様は孵化のさせかた知ってる?」
ここは年長者に聞くのがいいだろう。もしかしたら知っているかもしれない。
「ふむ。刃馬の卵と少し似ているがこれは亜種だな。色が違う。」
亜種か…ルーンもそうだがなんで亜種ばかり拾うのだろうか?
結構貴重な存在だと思うのだが...
神様が何か仕組んでいるのかもしれない。
「ど、どうしてわかるんだ?!」
エレン、わからなくもないが興奮しすぎだ
「私の愛馬も刃馬の亜種だからな。」
そう言ってお祖父様は懐かしげに微笑む。それはいいことを聞いた。
「それじゃあどうやって孵化させればいいかわかるの?」
僕がそう聞くとお祖父様は少し頷いた。
「ああ、任せてくれ。それじゃあみんな耳をしっかり塞いどけよ!」
「えっ、どういう」
真意がわからず聞き返そうとしたが、本能がそれを阻止して手が耳を塞いだその瞬間
「風魔法ウィンドヴォーチェ、、"お" "き" "ろ" "ぉぉ!!"」
うっ、うるさ!!!!なんだこれ、耳が死ぬ
パキッ パキパキッ
うん?まさか、
「むむむ~」
「か、かわいい。」
真っ白な体に銀色のたてがみの小さい子馬が卵を破って出てきた。
「むっ~!むむっむー!!」
子馬はお祖父様を睨み付けながら僕の足に頬を擦り付ける。
かわいい仕草ではあるが鳴き声がおかしい気がする。馬ってこんな風に鳴くのだろうか?あいにく鳴いているところを初めて見たのでわからない。
「…お祖父様、随分嫌われたみたいだね…」
まあそれは当然か…
「…まあ仕方ないだろ。だが、私がお前の命の恩人であることを忘れるなよ!」
そう言ってお祖父様は荒々しく子馬の頭を撫でると子馬がお祖父様の手に噛みつく。
「いや、馬に言ってもわからないと思うけど…てゆうか命の恩人って?」
「刃馬は亜種関係なく孵化する確率が低いんだ。だから高額で取引される。亜種になれば孵化率は0.001%ぐらいだろうから言うまでもない。低い孵化率の理由は卵の中で深い眠りについてそのまま目覚めないからと言われている。その分物凄く強いがな。…結局のところ物凄い大声で起こしてあげれば起きるってわけだ。それはそうと早く名前をつけてやれ。」
「そう、だね」
少なすぎる孵化率に色々と納得がいかないが名付けは早くしないといけないだろう、そう思って
ねえ、僕の仲間にならない?と心の中で呟いた
ピコン 刃馬を仲間にしますか?
YES NO
迷わずYESを押す。
ピコン 名前を決めてください
「君の名前は今日からレインだ。」
「レイン?なんか理由あんの?」
「レインボーローズからとったんだ。花言葉は“奇蹟”だからね。彼女はまさに奇蹟の存在だから似合うと思ってね。」
馬と花は全く関係がないがまあ構わないだろう。
それに雨は別に嫌いじゃない。自分の汚い心も全て洗い流してくれそうだから。
ピコン テイムが完了しました
ステータスオープン!
名前:レイン
種族 刃馬 レベル1 年齢 0 レベル 1
体力 347/500
魔力 2450/2450
俊敏 60
スキル
激怒:レベル1 貯蔵:レベル1
身体強化:レベル1 体力回復:レベル1
固有
体力無尽蔵
魔法適正 風
称号
最高の仲間
鑑定
激怒レベル1
怒ると少しだけ基本的な能力があがる。
貯蔵レベル1
水や食料を余分に食べると数日食べなくても問題ない。いわゆるラクダのようなもの
体力回復レベル1
5分で体力が1ずつ回復する
体力無尽蔵
刃馬の亜種における固有スキル。命の灯火という意味の体力ではないがどれだけ走っても疲れない。
最高の仲間
裏切ることは天と地がひっくり返ってもありえない。刃馬は仲間として最高の種である。
「どうだ?有能だろ?」
「うん、そのようだね。…ちなみにお祖父様のさっきの技なに?」
「あれか?あれは風魔法のウィンドヴォーチェといって声を拡大する魔法だ。使えるやつはほとんどおらんがな。私も昔これで敵兵の耳をぶっ壊して戦っていたな。」
意地が悪い戦い方だな…とゆうか味方の耳も壊しそうな戦い方だな…
「執事長、レインを馬小屋に連れていってくれ。そしてカイはちょっと着いてきてくれ。少し聞きたいことがある。そこの4人は休憩しておいてくれて構わない。それじゃあ行こうか」
それから僕は少し戸惑いながらもお祖父様の後ろをついていくことにした。




