真実は闇の中
神殿から出て武器屋に向かう途中奇妙な男とすれ違った。男は真っ青な顔していて息を切らして走っていて、ところどころ傷のついた服を着ていた。
「危なっ」
なに、この人。ぶつかった肩がめっちゃ痛いんだけど。大人なら謝るぐらいしたらどうだろうか?
よしっ、顔は覚えた。次会ったら文句の1つくらい言わせてもらおう。
そういえば、今日の晩御飯の材料を買いに行ってないな…。市場に行くか~
ん?あれ、もしかして本屋さんか?…ちょっとだけ、、ちょっとだけ見ていってもいいかな?
コウもイリアスもいない今のうちに行っとかないと!!
小走りで本屋さんに入ろうとしたその時自分を呼ぶ声が聞こえた。
「カイ!!」
くるっと振り替えるとコウをのせたルーンと並走しているイリアスの姿があった。
「…どうしたの?何かあった?」
「コウが襲われたんだ!傷は治したんだが眼を覚まさなくてな。今から神殿に向かおうと思っていたんだ。カイも来てくれ!」
確かにコウに目立った傷は一切ない。
「まあ、まずは落ち着こうよ。怪我は治ってるから後は気持ちの問題だと思う。それだと神殿に行っても意味はないよ。詳しい話を聞きたいから一旦宿に戻ろうか。何かあったんでしょ?」
そう言って放心状態のイリアスを引っ張って宿に戻った。
「それで、一体何があったんだ?」
「カイが出かけた後、俺はギルドで依頼を受けに行ったんだ。そして依頼を達成した後、宿に戻る途中に黒い格好をした怪しい人に『お前の仲間があそこの路地裏で倒れてるって』言われたんだ。その路地裏に行ったらコウが傷だらけの状態で倒れていて…周りに野菜とかが転がっていたから買い出しの帰りだと思うんだが、誰にやられたのかは本人に聞かないとわからない。」
「黒ずくめの怪しい人間ねぇ……
そんなやついたらすぐに衛兵に見つかって取り調べられると思うんだけど…
イリアス、周りの人はその人を気にした様子はなかったの?」
「ああ、誰も気にしてなかった。」
「もしかしたら、どっかの暗殺部隊だったりしてね…
まあ、なんでもいいけどさっさとコウを起こそうか」
コウが起きないと何も始まらないしね…
「起こすって言ったってどうやって起こすんだ?」
「そりゃあまあ、水をかけるとか?」
「どこの拷問方法だ、それ?さすがにそれは後でコウに怒られると思うぞ」
「だよね。怒られたくないからこれは却下か…
あっ、じゃあ口と鼻を塞ぐのはどうだろうか?証拠も残らないから怒られないよ!!」
何かの映画でやってた気がする。
「そういうことじゃないんだけどな。…ってもう聞いてないし」
コウの口と鼻を塞いで10秒程たつと眼がカッと開いたため、すぐに手を離した。
「ゲホッ、、コホ、、カイ、、お前、やってくれたな!!」
「…何のこと?」
「息苦しい思ったらカイが手で塞いどったんやろ?」
「…ボクジャナイヨ」
「眼がめっちゃ泳いでる上、片言やん。って、そんなこと言ってる場合ちゃうわ!今どういう状況なん?俺、倒れてたはずなんやけど」
「簡潔に言うと倒れてるコウを怪しい人が見つけて、その人がイリアスにコウのことを伝えたらしい。その時に傷はほとんど治したらしいんだけど、君が一向に眼を覚まさなかったからいろいろあって今かな。」
「いろいろってなんやねん。…イリアスと接触した人ってもしかして全身黒い格好の人?」
「ああ、見たのか?」
「気を失う直前に黒っぽい影が俺の前にたったっていうことは覚えてんねんけどな。」
「怪しいやつは一旦置いといてさ、そもそも誰にやられたのか教えてよ。」
イリアスもこくっと頷いてコウの話を待つ。
「…うーん、簡単に言うと俺の兄の死に関係がありそうな心根の腐った男やな。名前はベーグルって言うんやけど…」
「どんな容姿?」
「ええっとなぁ、暗い赤色の髪に黒眼やな。年はたしか27くらいやったと思うで。」
「赤髪に黒眼か…もしかして……。ちょっと待ってて」
今日僕の肩にぶつかってきた人、たしかそんな感じの容姿だったな。
そう思い、ペンを走らす。
10分くらいたってようやく完成したのでコウとイリアスに見せようと顔をあげると、2人は僕の手元を凝視していた。
「…え、なに??」
「やっぱ人って不平等に創られてんなぁ」
「カイって絵をかくの得意なんだな」
「まぁね、ちなみにあんなこと言ってるコウの方が上手いよ、普通に。」
昔、アルバイトを首になった際によく自分で絵を描いて売ったり街中で楽器を演奏してお金を稼いでいたからなぁ。
でも、この年でズルをしている僕と同じくらい絵が上手いコウの方が才能はあると思うんだけどね
「コウ、この人なのか?」
「ああ、そうやで。」
「なるほど、、なんか匂うんだよね、コイツ。コウをこてんぱにしたんでしょ?僕らにも勝ち目はないからしばらく3人で行動しようか。」
なんか嫌な予感がするんだよね
そう思いながら僕はため息をついた




