第34話 混浴
わたしとライオネルはコテージのお風呂に背中合わせでつかっていた。
お風呂に入るのは、湖に落ちて冷えた身体を芯から温めるためなんだって。
庶民上がりのわたしは別に濡れたくらい平気なので、
「もう夏だからこれくらい大丈夫ですよ」
って言ったんだけど、
「自分では気づいてなくても身体の奥は冷えてるものなのよ? 女の子に冷えは大敵なんだから。お風呂でしっかり温めないとだめなんだよ?」
リリーナさんにそう言われて、まぁそんなものかと思ったんだけど――。
ううっ、背中からライオネルの感触が伝わってくるよぉ……!
素肌と素肌がめっちゃ触れあっちゃってるよぉ!
ふぇぇっ、どうしよう!?
なんでこんなことになったかと言うと――、
「身体が冷えてるのは二人とも一緒だから、一緒に入りなさい」
リリーナさんに有無を言わさず言われてしまったのだ。
さっき久しぶりにチラッと見ちゃったライオネルの全裸は、相変わらず筋肉質で細マッチョでかっこよかった。
それに比べて、わたしの平均を大きく下回る肉付きの悪い身体(主に胸。お尻は人並み)ときたら……。
ううっ、恥ずかしいよぉ……。
触れあうほど近くにいるのに、いろいろ意識しすぎてなかなか話しかけられないし……。
わたしってほんとバカ。
わたしが空しい自虐をしていると、
「クレア――」
ライオネルが突然わたしの名前を呼んできた。
「は、はひっ!? なんでそう!?」
はい、なんでしょう――って言ったつもりが噛んでしまったわたし……。
いろいろ意識しすぎて恥ずかしいほどに噛み噛みだった。
しかも声が裏返ってるし。
「ごめんね。なんか強引に一緒にお風呂に入ることになっちゃって。恥ずかしいよね」
「えっと、それはその、はい、恥ずかしいです……」
こんなに挙動不審じゃ今さら誤魔化せるものでもないだろう。
わたしは正直に申告した。
「怖がらなくても大丈夫。なにもしないから安心して」
「えっと、あ、はい……」
「じゃあボクはもう十分にあったまれたから、先に出るね。クレアはもうちょっとあったまってから出てきてね」
「あ、ありがとうございます」
さすがはライオネルだ。
わたしがゆっくり一人でお風呂につかれるように、先に上がってくれたんだ。
こういうところも気づかいの人だなぁ……。
わたしはライオネルの優しさに、今日も胸をキュンとさせたのだった。
そうしてお風呂から上がって一息ついたわたしとライオネルの前に、リリーナさんがやってきて言った。
「今回の件はライちゃんが完全に悪いです」
「ほんとうに面目ない」
「まず男性にはエスコートの義務があるのに、エスコートしきれなかったこと。次にボート初心者のクレアちゃんに対して、ライオネルは経験豊富だったのに注意をしておかなかったこと。異論はある?」
「ないよ、ぜんぶ姉さんの言う通りだ」
「では判決を言い渡します。ライちゃんはこのコテージにいる間、クレアちゃんに誠心誠意尽くすように。それこそ王さまに対する家臣のようにね」
「もちろんだとも。クレア、ここにいる間はボクのことを使用人と思ってくれて構わないよ」
「いやあの、そこまでのことではないと言いますか? 大元はわたしのドジが原因なのに、それではあまりにも申しわけないと言いますか……」
「ダメよクレアちゃん。甘やかすだけじゃ男は成長できないんだから。相手の女の子をちゃんと見て、相手に合わせてエスコートするのが本当の紳士なんだからね」
「まったくもって姉さんの言うとおりだよ」
「でもでも! すぐに助けてもらえましたし! すごくカッコよかったんですよ? いきなり飛びこんで、ギュッと抱きかかえて引き上げてくれたんですから、えへへへ……」
わたしが最初は一生懸命に力説、でも最後はだらしなく笑うと、
「……まったくもう。クレアちゃんってばライちゃんにはとことん甘いんだから……ライちゃんも、クレアちゃんには感謝するように!」
リリーナさんがそう最後に締めくくった。
とまぁそんな感じで?
コテージに滞在中、ライオネルはいつにも増してわたしに優しかったんだ。
えへへ、最近のわたし幸せすぎてやばくない?
幸せすぎてなんかもう逆に怖いくらいだよ。
シェンロンを出てブリスタニアに来て良かった!(*'▽')パアッ
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