第15話 聖女、イケメン王子さまと一緒に寝る。
その日の夜。
わたしはライオネルと一緒のベッドに入っていた。
例の巨大ベッドだね。
もちろんそのベッドの中で、いわゆるアダルティで大人な男女の行為をしてるって意味じゃなくて。
単に睡眠、寝るためだった。
ベッドはすごく大きいから2人で一緒に眠っても、スペースとかそういう意味では全然気にならないし。
もちろんだからと言って、隣で寝ているライオネルが気にならないわけじゃないんだけどね?
でもそんなの当たり前でしょ?
だってイケメン王子さまのライオネルがわたしの隣で、同じベッドで寝てるんだよ!?
ふぇぇぇっ!?
なんなのこのシチュエーション!?
寝つきの良さには定評のあるわたしが、だけどなかなか寝付けないでいる時だった。
キュッと、わたしの腰がライオネルの腕で強引に引き寄せられたのは──!
「ふえええぇぇぇぇっっっ!?」
わたしがまたもや、アホな声を出してしまったのも仕方のないことだろう。
「あ、あの、ライオネル……っ!?」
だけどライオネルからは返事がない。
返事の代わりにわたしはさらに強く抱き寄せられた。
両腕に抱えられて抱きすくめられてしまう。
「えっと、あの……その……ふぇ……」
しかもライオネルは上半身裸だったんだ。
寝るときは服を着てたから眠っている間に脱いじゃったんだね、きっと。
筋肉は発熱するから、筋肉の多い人は暑がりだって話を聞いたことがあるし。
服を着てるとスラっとした細身に見えるけど、ライオネルはかなりの筋肉質だ。
だからわたしにはちょうど良い室温でも、ライオネルはきっと暑かったんだと思う。
なのにわたしに合わせてライオネルは何も言わなかったんだ。
ほんとライオネルってば王子様なのに気づかいのカタマリなんだから……。
そしてそんな優しい細マッチョなライオネルにギュッと抱きしめられたわたしは、完全に固まってしまっていた。
「あの、ライオネル……その、わたしたち今日初めて会ったんだし。その、えっと、そう言うのはちょっと早いかなって……あの、その……思うんだけど……」
わたしは乙女のような(実際、乙女なんだけど)消えりそうな小声で、そう言ったんだけど、
「…………」
でもライオネルからは返事はなかった。
つまり。
グダグダ言ってないで黙って俺に抱かれてろってこと!?
ふぇぇぇっ、昼間の優しいライオネルとは違ってベッドの中ではすごく強引だよぉ……ベッドヤクザだよぉ……。
でもそんな強引なライオネルがイヤじゃない自分がいて。
ああ――。
わたしこのまま大人の女にされちゃうんだ……。
でもライオネルになら……なんて、キャッ!
あ、そうだ。
庶民用の飾りっけのない安物の下着をつけてるから、早く脱がないと恥ずかしいかも……。
わたしが大人の階段をのぼる覚悟を決めて、おそるおそるライオネルを抱き返そうとした時だった、
「すー、すー……」
ライオネルの口元から規則正しい息遣いが聞こえていることに、今さらながらに気がついたのは。
ライオネルはぐっすりと眠っているようだった。
それはもう気持ちよく眠っていた。
――ってことは、
「ただの寝相だったんかーい!」
わたしの小さな声のツッコミはしかし誰の耳にも入らず。
夜の闇の静寂に悲しく消えていく。
「ま、そうだよね。ライオネルは王子さまなんだもん、気の迷いでもわたしなんて貧相な庶民を相手にするわけはないよね……」
それにライオネルはリリーナさんみたいな綺麗な女の人を、昔から見てるんだもん。
当然、女の人に求める基準も相当に高いはずだ。
少なくともその基準はこんなAAカップの洗濯板ではないだろうと思われた。
「はぁ、寝よ寝よ……」
わたしは王子さまのライオネルが、庶民のわたしに出会ったその日に好意を抱いた――などと言うアホな妄想をかなぐり捨てると、明日に備えて寝ることにした。
……ライオネルの腕の中で。
「一緒のベッドで寝るんだからこれくらいの役得はあってもいいよね? えへっ」
それにぐっすり眠ってるライオネルを起こすのは可哀そうだもんね。
おっとっと、ナイスな言い訳もゲットしちゃったよ。
ってことで、おやすみなさーい。
今日はいつにもまして気持ちよく眠れそう!
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