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第11話 主演男優賞

「いきなり本家本元のブリリアントリリー賞なの? しかも主演男優賞だなんて。」


 僕が瑤子さんに報告すると驚きの声をあげる。


 一報を受けたときは僕も驚いた。しかもいつの間にか主演男優になっている。主演は『西九条れいな』で単なる共演者という位置付けだったのが和重さんの指示で試写会後にクレジットを書き換えたらしい。


「ノミネートされただけさ。あの女とまた顔を合わせなくてはならないなんて気が引けるが映画の宣伝になるから、行かなくてはならない。」


 映画が売れれば出資している球団社長に戻ってくるお金も増える。それだけが僕の楽しみだ。


「『ユウ』にガードして貰わなきゃね。身体を要求されたからって拒否しちゃダメよ。」


「おいおい。それでも僕の恋人かよ。」


「妊娠中のね。大事を取って付いていかないことにする。心配だけどね。」


 当たり前だ。


 最近はマタニティー旅行とか行って、財布の紐の緩んだ妊婦やその両親を目当てにした商売が流行っているらしい。それに従って旅行中の流産も増えているらしい。たとえ渚佑子さんが『転移』魔法を使ってくれるとしてもそんな危険を冒したくない。


 ブリリアントリリー賞の会場で昔テロがあったらしい。前アメリカ大統領も駆けつける。もちろん万全の警備体制を組み立てるそうだ。


 ここまで完璧だと僕の出番は無さそうである。せいぜいオリハルコン製防弾スーツ着て弾除けになるくらいだろう。


     ☆


「あの映画がアメリカで配給されただけでも驚きなのにブリリアントリリー賞にノミネートされるなんて!」


 あの女が何かほざいている。そんなにイヤなら来なきゃいいのに。


「ワシもそう思うが、これはアメリカ映画界からのテロに屈しないという強烈なメッセージだと思うのだよ。」


 出演した映画の評価と僕がテロに立ち向かったことが関連するとは思わなかった。まあ売れてくれて少しでも球団社長の元にお金が戻ってくれば・・・と思っていたが、この場に球団社長も渚佑子さんも居たのでは持ち出しもいいところだ。


 球団社長が動けば1時間で1千万円以上の価値がある。渚佑子さんはそれ以上の価値があるはずなのだが球団社長に付いて離れない。自分の価値が解っていないらしい。


「そういえば以前、この会場でテロに遭われたのでしたよね。ということは、今日もテロの標的にされるかも知れないということですか?」


 あの女が物騒なことを言ってくれる。僕の『超感覚』スキルには何も引っ掛かっていないからありえない。あるとすれば、この女が被害に遭うような出来事だろう。先ほどから、この女に向けた敵意が酷いのだ。全く何処でも嫌われる女だ。


「前アメリカ大統領も招待され、アメリカ軍が厳戒態勢で見守っている中でテロ事件か。それは無理だろう。」


「那須くんも居ますからね。」


 僕は関係無いって。逆にテロを引き寄せることを恐れている。いっそのことテロリストたちを殲滅したほうが早いかもしれない。日本国内では制約が多すぎる。


 結局、主演男優賞を頂いた。余程、この賞の審査員はあの女が嫌いなようだ。ノミネートもされていない。『ユウ』は助演賞だそうだ。


 参ったな。


 俳優業が忙しくなりそうだ。ノミネートだけでも引き合いは多く。受賞となれば、契約金も破格になるので断るという選択肢は無い。だが僕が俳優業を続けるには、あの女が演じた動画が絶対に必要なのだ。1回も顔を合わせずには済むことはないだろう。


 今考えている構想では数年に1回程度『ユウ』にガードして貰いながら、この女と共演する。その他の仕事は『ユウ』に手伝って貰う。自分だけで俳優業をこなせるようには最低限10年は必要になるに違いない。


 どう考えても必要なのは『ユウ』なのだ。あの女が自分の仕事以外でも手伝ってくれるとは思えない。


 従って『ユウ』に交渉してみた答えは対価として肉体関係が欲しいそうだ。結局、散々悩んだあげく出た結論がブリリアントリリー助演賞の受賞という条件だったのだ。


「こう見えても以前、ブリリアントリリーはノミネートされたこともあるし、日本ブリリアントリリー賞で主演男優賞も主演女優賞も獲得しているの。」


 そういうことは早く言って欲しかった。


 恋人公認なんだから、楽しめば良いんだよな。少なくとも『西九条れいな』の代わりにはなる。


 僕だって男だ。抑えきれない欲望を持て余して、ついフラフラっとあの女の誘惑に耐えられなくなるときがきっとくる。その時に『ユウ』にぶつけても笑って許してくれるに違いない。


「この後、部屋においで。」


 受賞の喜びを身体で表現する『ユウ』に伝えると強烈な性的欲望の臭いを『超感覚』スキルの嗅覚が捉える。この女、いやニューハーフかなり性欲が強そうだ。


 それと同時にあの女がいる後方から、怒りとも困惑ともつかない臭いを嗅覚が捉えていた。


 ざまぁ。


 世の中の男の全てがお前の思い通りになると思うなよ。


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