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第十五話 依頼

「お帰りなさい。……あれ? お客さん? それとも新入部員?」

「これを見てまだそんなことを言えるとは、ほんとうに楽観的な人間なんだな。お前は」

「依頼ですよー、明里さん」


 俺と舞の言葉を聞いて目を輝かせる明里。


「何ですって? だったら早く言いなさいよ。でも、私は確かホームページの作成についてWWW部に聞いてこい、って話をしたはずだったけれど……」

「俺が、WWW部の部長で、君に記憶探偵の依頼をした。そして報酬はホームページの作成。それでどうかな?」

「成程ね」


 明里は読んでいた本をテーブルに置いて、立ち上がる。


「それで? 依頼とはどういうことかな。見たところ部長であるあなたの記憶が要因では無さそうだけれど」

「まあ、その通りなんだ」


 溜息を吐いて、WWW部部長は言った。

 空いていたパイプ椅子に腰掛け、話を続ける。


「依頼というのは、俺の妹のことなんだ」

「妹?」

「ああ。今年この学校に入学したから、君たちと同級生になるのかな。……名前は宮地希未」


 宮地、聞いたことがあるな。

 そういえば同じクラスにそんな名字の学生が居たような……。


「……ああ、聞いたことあるわね。そういえば自己紹介でもあまり慣れたような言葉遣いをしていなかったように思えたけれど。話すのが苦手だったのかしら?」


 まるで全員の自己紹介を覚えているかのようなそんな口調で話をする明里。

 それを聞いたWWW部部長は目を丸くしていたが、直ぐに冷静を取り戻す。


「……成程。同じクラスだったか。ならば話が早い。普通の学生と違うような様子が見られなかったか?」

「違う様子? ああ、強いて言えば気怠そうな感じだったか。それが何か?」


 それにしてもこいつはどうして先輩にもため口でいけるのだろうか。普通は敬語の一つや二つぐらい使っても良いものだろうけれど。

 いや、こいつには常識というものが通用しないのかもしれない。何せ記憶探偵なんていう普通じゃ無い職業をしているのだから。と、いうかそもそもこれって職業なのか?


「……そう。それなんだよ。気怠そうな感じ。実はここ数日、と言って良いのかな。あんな感じになってしまってな。親はただ環境が変わったことによるものだと言っているのだが、俺にはそう思えない。まるで……別人になってしまったような」

「別人、ねえ」


 明里は不敵な笑みを浮かべて、そう言った。

 きっと俺のあずかり知らぬところであいつは何か考えているのだろう。或いはもう何らかの結論を導いているのかもしれない。篠田に聞いた話だが明里は中学校時代秀才として知られていたらしく、学年テストは常に一位だったという。だから俺とは基本的に頭の構造が違っていて、考えるスピードも違うのかもしれない。まあ、それは俺の想定だけれど。


「……ちょっと気になることはあるわね。ねえ、もし可能だったらその妹さん、連れてきて貰える? あと、昔はどういう様子だったかも併せて教えて欲しいわね」

「あ、ああ。……でももう帰ってしまったはずだから、明日でも構わないか?」

「構わないわ」


 そうして今日はWWW部部長と俺たちは別れることとなった。

 WWW部部長が部屋を出て行って、明里は小さく溜息を吐く。


「恐らく、希未という子は偽りの記憶を入れられて、性格を変えられた可能性が高い」

「偽りの記憶……だって?」

「ええ。簡単に言ってしまえば、それだけで済むけれど、そんな簡単にできることじゃない。人間の記憶を書き換えるなんて、そんなことをするには私が持っている機械か、祖霊以上の機械を必要とする。……というか、これは、読み込むことは出来ても書き換えることは出来ない簡易型だしね」


 明里はHCHが入っている鞄を入って頷く。

 つまり、希未という子は記憶を書き換えられた可能性が高い……?

 でも仮にそうだとすれば、いったいどのタイミングで書き換えられたのか、きちんと確認しないといけないような気がする。それは記憶探偵同好会として活動している俺の使命なのか、それともただの探究心なのかは分からないけれど。


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