第十二章 新しい予感
どんな展開にしようか心の中で何度もぐるぐる悩みながら書いてます。
キャラたちの気持ちに寄り添いながら、物語を少しずつ進めていけたらと思っています。
そんな作者の迷いも含めて、楽しんでいただけたら嬉しいです。
王都から馬車で半日、ルーデンドルフ領の郊外にある孤児院には、陽射しがやわらかく降り注いでいた。
子どもたちの笑い声と、風に揺れる洗濯物。
丘の上に立つ白い石造りの建物は、決して豪奢ではないが、温もりと清潔感にあふれていた。
「ずいぶん整った場所だね。正直、思っていたよりずっと……明るい」
馬車を降りたウィリアルドがそう言うと、隣に立つリアナが小さく頷いた。
「ありがとうございます。父が長年支援している施設なのですが、
ここ数年、領民の支えも増えて、ようやく形になってきたのです」
リアナは少し誇らしげに微笑んだ。
その横顔に、ウィリアルドもまた穏やかな笑みを返す。
「君の働きかけのおかげだね。素晴らしいことだ」
「ありがとうございます!
……そう仰っていただけると、努力した甲斐があります」
施設の中では、年長の子どもたちが読み書きの練習をしており、
年少の子たちは庭で遊んでいた。
ウィリアルドが近づくと、照れくさそうに手を振ってくる子どもがいて、彼も思わず笑って手を振り返す。
「ウィリアルド様は、子供がお好きなのですね」
「うん。……素直で、まっすぐで、いい。自分のしていることが、誰かの明日に繋がっていると実感できる気がする」
「ふふ……そういうところ、本当にウィリアルド様らしいです」
リアナはそっと呟いたが、ウィリアルドはその言葉に気づかぬふりをして微笑み返した。
***
帰りの馬車の中。
揺れるカーテンの隙間から差し込む光が、静かにふたりの間を照らしていた。
「ウィリアルド様」
「なんだい?」
「……今度の視察、わたくしもご一緒できればと良かったのですが――」
「王都視察は日程が詰まっているし、今回は私だけでとの王命だからね」
「そうですよね…いえ、仕方のないことです。寂しいですが、お帰りをお待ちしています」
言葉では理解していても、その声にはほんの少しだけ寂しさが滲んでいた。
「…リアナ」
リアナの頭に手を伸ばしかけて
――その名を呼びそうになるが、彼は喉の奥でそっと飲み込んだ。
かわりに、頭ではなくリアナの肩に手を置き、柔らかな笑みをたたえて言う。
「今日の君の働きは見事だった。ありがとう。
君の善意はきっと子どもたちの未来を照らす」
「えっ…あっありがとうございます」
リアナ俯きながら頷いた。
心の中では――
暴れる鼓動を抑え
ほんの少しだけ、届かないものに手を伸ばしかけていた。
(少しだけでも私のことを考えてくれてる?)
***
馬車が再び王都の門をくぐる頃、
夕陽が街の屋根に柔らかな金色を落としていた。
誰かの記憶を引き連れて――
確かな運命が、静かに近づいていた。
皆さんのおかげで、ここまで書けました!
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