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第5話 紳士的口調は精神的に辛いです


 第5話投稿



 「それでトウヤ君、具体的にはどのぐらいを目安にするんだい?」


 恐らく死ぬ一歩手前の目安ということだろう。ギルドマスターが聞いてきたので、少し考えて口を開く。


 「そうですね……陽乃様、今までどんな怪我をしましたか?」

 「え? わ、私?」


 取り敢えず目が合った陽乃ちゃんに声をかける。さっきから何となく目をそらしたり見つめたりしてたのでね。少し意趣返しにという意味も込めた。


 「えっと……過擦り傷?」


 いや、予想以上に可愛らしい怪我が出てきた!?


 「……質問を変えますね。今まで負った中で、一番酷かった怪我はなんですか?」

 「……骨折?」


 首をかしげながら言う陽乃ちゃん。俺はさり気なく他の勇者にも目を向けると、頷きが返ってきた。


 「では、骨折したかしてないかで判断しましょう。それ以上の痛みとなると、思考能力が著しく低下するでしょうから。無論、それと同等の状況に陥った場合も助けには行きます」

 「そうだね。というか、本当に治せるの?」

 「治せますよ。確かめてきました」

 「……確かめてきた?」


 ギルドマスターの後半の言葉は俺の耳元でそっと告げられたものだ。どうやら疑っていたらしいが、残念、既に確かめ済みです。

 なお、確かめたのは自身の体でだ。どの程度の怪我を治せるのか、鍛錬の合間に[快復魔法]を解放してやってました。


 基本どんな傷でも治せます。状態異常も直せます。部位欠損だって治せます。オマケにハゲも治せると思います。毛根の再生治療?


 さて、この世界の一流の回復術師がどこまでできるのか。


 痛みにはもう慣れてしまった……痛いのは最初だけってやつです。

 何故自分で自分の腕を切り落とすなんてことが出来たのか、自分の狂気的な部分が顔を顕にしたようで少し怖い。


 「あの、トウヤさんはどの程度の強さなのでしょうか?」


 ふと、スッと天貝君が手を挙げた。まぁ最もな疑問でして。


 「レベルは100を超えていますよ」

 「ひゃ、ひゃく!?」

 「嘘!?」

 「強いですね」


 驚きや感嘆の声が出される。こう、純粋に驚いてくれると何となく嬉しい。

 隣のギルドマスターから視線が飛んでくるが、正確な数字は教えませんよ。


 「勇者様達は如何程なのですか? 目安として大体の数字を聞かせていただければ」


 代わりに俺は門真君に目を向けながら聞く。鑑定は最後までしない所存なので。敵とか、鑑定せざるを得ない状況の場合は別だけど。


 「俺達は大体レベル40ぐらいです。一応この中ではレベル的には俺が一番強いはずです」

 「なるほど……ありがとうございます」


 40となると、迷宮の階層で言えば30階層ぐらいか? いや、パーティーで行くんだろうし、40階層ぐらいまで行けるか?


 「あ、一応俺達は勇者なので、普通の人よりは成長力が高いはずです。なので実際のレベルは50か60ぐらいかと」

 「それは、勇者様もお強いですね」


 ニコッと嫌味の無い(はずの)笑みを向ければ、苦笑が返ってくる。

 まぁどう頑張ってもレベル100より強いということはないよな。でも返す言葉が見つからなかったんです察してください。

 そして、それなら50階層ぐらいまで行けるかな? と思考。はっきり言って普通の人の成長力が分からんので比較できないのだ。

 唯一わかる俺の成長力は、勇者と比べても明らかに異常のはずだしな。参考にならない。


 「勇者様は今まで何でレベルアップを?」

 「えっと、俺達は昨日まで滞在していた王城の裏にある迷宮で鍛錬してました。その時はまだ騎士達が居て、俺達もただ敵を倒すだけでしたので、本格的な迷宮探索をしてた訳では無いですが……」


 え? この世界は一つの王城に一つの迷宮があるのがデフォなの? ルサイアも裏の森にあったんですがそれは。

 ……まぁ、置いておこう。うん、考えても分からんし、実りのある情報が得られるとも思えん。

 

 「なるほど。でしたら迷宮のイメージに関しては問題ないのですね?」

 「はい。それに『原初の迷宮(アルファメイズ)』については予め伺っていましたから」


 困惑を顔に出さずに俺は聞いて、肯定が返ってくる。それなら話が早くて助かるな。


 「トウヤさん、迷宮は全員で行くんですか?」

 「そうですね……ギルドマスター、その辺の指示は来ていますか?」

 「ん? 人数に関しては別に好きにしていいよ。そこは何も言われてないからね」

 「ということですので、そこは後で勇者様方の実力を見てから決めます」

 「はい、分かりました」


 素直に頷く門真君。相変わらず黒澤君はムスッとしているが、根は真面目、もしくはドジっ子キャラの可能性も捨てきれてないです。

 つまり、弄られ役?


 「あぁそれとだね、追加で情報が」


 するとギルドマスターが口を開く。どうやらそれは俺にも向けているらしく、一応耳を傾ける。


 「あと何日か後に他の国の勇者も来るから、そのつもりで」

 「はい。それは先に言われていましたので」


 冷静に対応する門真君。無論俺もそれは何となく分かっていたから、驚くという程ではない。

 

 「それの担当はトウヤ君だ」

 「ほぉ、それはまた面白い冗談ですね」


 なお今の言葉を訳すと、『何ふざけたこと言ってんだ?』である。そして無意識に威圧が出てるんじゃあるまいな? 勇者達が心なしか強ばった顔してるんだが。

 まぁ無意識で出る威圧なんてたかが知れてるので、ギルドマスターには効かないだろうが。


 「悪いんだけど、これは本当だ。他の第一階級(アインス)がまだしばらく帰ってこなさそうなんだよ。帰ってきても捕まえる前にまた潜りそうだ」


 どんだけフリーダムなんだ第一階級(アインス)。勇者のこと知らないんじゃあるまいな?

 いや、迷宮にずっとこもってるのなら知らない可能性が大きいな。そしてそんなに長時間なぜこもっているのか。


 ゲームの廃人ガチ勢か、というツッコミを飲み込む。


 「言っとくけど迷宮って基本は数日かけて探索するものだからね?」


 と思ったら、俺の困惑が顔に出ていたのか、疑問に答えられてしまった。

 そしてその言い方に勇者が若干困惑気味。まるで俺が普通じゃないみたいな言い方ですね。


 まぁ確かに一日以上こもってる事は無いけど。


 「という事だから、まぁ最低でも10日ぐらいでこの勇者達をある程度まで鍛え上げなければいけないね」

 「今回のはそういう目的ではなかったような気がするのですが?」


 ただ単に勇者の護衛って話だったような。勇者の強化とか聞いてねぇよ。


 「ほら、あの話には”勇者に護衛が必要なくなるよう”という意味合いが込められていたんだよ」

 「あまりふざけているようですとその首が飛びますよ? 物理的に」

 「無論冗談に決まってるさ」


 変わり身が早いことで。

 そして未だ困惑気味の勇者達。


 「でもここは頼まれてくれないか? 勇者達のためにも」


 しかし、それでもギルドマスターは頼み込んできた。

 何か、勇者に思い入れでもあるのかと勘繰ってしまうが、そこは見送り。流石に頭を下げられては俺も断れないしな。


 なにより勇者達の視線が痛い。あっちからしたらギルドマスターの方が立場的には上だからな。

 俺の立場は皆無みたいなもんだけど。日本みたいに戸籍があるわけじゃないから、死んだ人間扱いというわけじゃないけど、まだ公にしてもいないし。


 「……分かりました。これは貸しにしておきますよ」

 「ホント!? ありがとうトウヤ君! しっかりと借りは返すから!」


 俺が渋々頷くと、『パァ!』と向日葵のような純粋な笑みを俺に向けるギルドマスター。何気にギルドマスターがこうやって笑うのは初めて見たな。

 前科がある以上、今更惚れるなんてことはしないけど。


 「あの……」

 「すみません勇者様。今聞いたように期限ができましたので、10日間で護衛が要らなくなるように育てさせていただきます」

 「あ、はい。宜しくお願いします」


 若干状況を飲み込めていないながらも、頷いて見せた門真君に俺も頷き返す。そりゃ目の前で立場を逆転したような光景を見せられたら困るよな。

 俺もそろそろ敬語が怪しくなってきそうだから困る。


 「打ち合わせはこのぐらいかな。後のことはトウヤ君に任せていいかい? 基本的に君に任せるから」

 「分かりました。勇者様方、早速ですが、最初は皆様の実力を見させて貰って宜しいでしょうか?」

 「はぁ、別に問題ないですが、何処で?」


 ふむ、確かにどこでやるか。迷宮だと測りにくいし、もう少しまったりと、しかし広い場所……。


 「ならギルドの訓練場を貸そうか? 私の権限で貸切にしておくから」

 「じゃあそこにしましょう。丁度勇者様方も完全武装のようですしね」

 「はい。お願いします」


 ということで、この後は勇者達の実力を訓練場で見させてもらうことに。

 はてさて、どうやって見させてもらうかな……。




 次回はあれです。勇者の実力を測りますが、あまり期待せんでください

 それと、今日はどうにかストックを増やすことが出来たので、後3話ほど増やせば夏休み終了までは毎日投稿できるはず


 次回投稿は明日16時です

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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者の護衛の報酬に刀哉が無頓着な件…オリハルコン一年分、ヒヒイロカネ東京ドーム10杯分とか、後で請求して通るのかな?
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