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繁栄のエクスペリメント - チートなしで異世界に放り込まれたニート -  作者: 辰政
              (タイトル未定;)
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第二六話 おとめ心、おとこ心

「せあっ!」

 切り上げた桜花の剣が、カッパーゴーレムの左腕を斬り飛ばしていた。

 それだけのダメージを負いながら、まるで痛みを感じていないのか、即座に右腕が襲ってくる。



 斜め上から振り下ろされてくる腕に対して、桜花は同じ様に剣を振り下ろす。

 速度を合わせるように当てれば、土砂で出来た大槌(おおつち)の様な腕がいなされ、()れていった。目の前を重々しい風音をひきながら振り下ろされた腕が、地面に激突し、振るわせる。



 カッパー・ゴーレム自体は人の背丈程度だが、その重量は勇者の倍は超える。

 振り回す腕一つとっても、今までの魔物とは比較にならない威力があった。

 同時に、空振ると次の動作までが(にぶ)い。



 ゴーレムの腕を()らした桜花は、振り下した勢いのまま、その場で体を回転させる。帰ってきた腕が剣を水平に放ち、ゴーレムの額に輝く魔道回路を斬り裂いた。

 ゴーレムの動きが止まり、一拍をおいて崩壊(ほうかい)が始まる。

 ざっと流れ出した砂と、その中に埋まっていた魔鉱石がぼとり、ぼとりと崩れ落ちていく。



 剣を軽く振ると、(さや)に納める。

 本当は砂粒をきちんと払わないと、鞘と剣が傷つくからよくないのだが、連日の戦闘であっという間に、剣が(ゆが)み刃を失う程の酷使しているのだから、気にしても仕方がない。



 手に付いた砂は、スカートではたき落とす。

 男女平等を、悪意をもって誤解したような、あの初期装備のズボンとシャツはもう着ていない。



 薄赤いワンピースに、青みを帯びたグレーのジャケットと、腰には同じ色のスカートをワンピースの下に重ね着していた。その上から、ウッドアーマーを着込んでいるから、ファッション的には色々どうしようもなかったが。

 スカートは膝上。(すね)当てや、太もものアーマーも付けているので、その(もも)(おお)鎧下(よろいした)がまるでオーバー・ニーソックスみたいになる。



 そんな衣服のオシャレは、桜花のささやかな楽しみだが、少し迷うところがある。

 別に、スカートの(すそ)はミニという分けではない。

 ただ、激しく動く戦闘では、いろいろと気になるというか、ともすれば危ない。

 二週間以上もズボン一択だったので、その辺の想定が(おろそ)かだった。

 下に短パンでも()いた方が、良いのかもしれないだろう。



 そんな事を考えていると、視線を感じて振り返った。

 妙にまじめ腐った顔の男二人が立っている。

「なにボケッとしているの?」



「え! あ、ごめんなさい」

 桜花に言われて、ジンは慌てて魔道杖にチャージしてしまった霊象(マナ)を解放する。

「あぁ、いや、この辺は片付いたな」

 ツヴォイも、何でもなかった風を(よそお)いながら剣をしまった。

 彼女いない歴=年齢の男心は、桜花には分かりようもない。



「桜花さんは……」

 ジンの言葉に、剣を収めた桜花が振り向く。

「どうかしたの? 最近、元気ないようだけど」

 出会った当初は、恥ずかしくなるような事を言ってくるイケメンに、桜花はげんなりさせられたりもした。それが、最近のジンの様子はどうも遠慮(えんりょ)がちに思えてしまう。



「いえ、そうではないのですが……リアルに帰ったら、どうするのかなと」

「リアル側の情報を聞き出すのは、マナー違反でしょ?」

 ついこの間の自分を棚に上げて、桜花が言っていた。

「すみません……」



 目を伏せるジンの顔に、桜花はそこまできつく言っている積りはなかったのにと、少し悩んでしまう。

「そう、よね。不安になる気持ちは良く分かるわ」

 桜花は、少しだけカミナを真似して優しい声色で言ってみた。

 ジンの表情が目に見えて和らぐから、良かったと桜花もほほ笑む。



「リアルに帰ったら、か。アタシは、ちゃんと働けるかな?」

 軽い口調で笑って言った積りだった。

 しかし、その表情はジンから見たら泣きそうな笑顔だった。

「は、働けますよ! 村で、一番強い勇者なんですから!」

 両手を握りしめて、ジンが力強く応援してくれる。

「ありがとう……」

 桜花も何とか笑顔で返したが、そんなジンの言葉では不安を消し去る事は出来なかった。

 いくらこの世界でクエストをこなしても、仕事をしているというイメージには結びつかなかった。



「履歴書にカッパー・ゴーレムも倒せますって書こうかしら?」

「え、えっと……」

 桜花の冗談を真に受けて、ジンが戸惑(とまど)っていた。

「きっと、落選通知もくれないでしょうね…………」

 桜花の経験上、まじめに履歴書を書いて送っても、少なくない会社は何も連絡を寄こさない。



 このご時世、履歴書を送ってくる人間なんか、文字通り()いて捨てるほどいる。そういう、不景気な時代なのだから。

断りの連絡を入れる手間すら、時間の無駄だと思っているのだろう。

「若者が……、無価値な時代……ね」

「え? なんですか?」

「うんん。なんでもない」



 そういえば、と桜花は思う。

 こうして、自分を飾らないで男性と会話できる事はリアルじゃまずなかった。

 あの日、防衛戦の日にコウを投げ飛ばして叫んでから、普通の女の子を演じるのを止めてしまった。

 もう、めんどくさかった。

 凶暴な自分が、常に渦巻(うずま)いているのを知っている。

 それを(おさ)えて、リアルでは精神安定剤までもらって、必死に耐えてきていた。現実と、戦い続けていた。



 なのに、今こうして魔物と戦っている間は、そういう嫌な事を忘れられる。

 ずっと、心が軽くなっていた。



「今更だけど、言っておくわ」

 真剣な面持ちで、桜花がジンへ向き直る。

「あの日、アタシを(かば)ってくれてありがとう。そこそこ、嬉しかったわ」

 巨大花に遭遇したとき、降り注ぐ雷光撃(ライトニング・ボルト)にパーティーの大半が撃たれ、一撃で壊滅した。ジンに(かば)われた桜花だけが、襲われた勇者のなかで村まで逃げかえる事が出来ていた。

「……っ、どういたしまして」

 驚いたようなジンの表情が面白くて、桜花は優しく微笑む。



「なに話してるんだ?」

 言葉に振り向ければ、袋を肩に担いだツヴォイが戻って来ていた。

 近寄ると、桜花の足元に転がっているゴーレムの魔鉱石を拾って袋に詰めてゆく。

 村役場に持っていけばお金になるのだ。

ただ残念な事に、異世界ファンタジーでおなじみの、異次元収納できるアイテムボックスやストレージの類は存在しない。

おかげで、魔鉱石が詰まった袋を、ツヴォイは自分のバックパックにしまって、それを背負って持ち帰る事になっている。



「んー? リアルに帰ってからも、討伐クエスト受けたいねって言ってたの」

 桜花が、ものすごく適当な事を言う。

「自衛隊にでも入りたいのか?」

 怪獣討伐できると良いな。と、心の中で付け加える。

「それじゃ駄目よ。思いっきり戦えないじゃない」

「また、物騒な……」

 ツヴォイの嫌そうな顔が楽しくて、桜花は逆に笑っていた。

 今日は、やたらと楽しい一日だなと、桜花の心までもウキウキしていた。

「なんでだろうね。こっちの仕事って、とても楽しいのよ。なんでだろうね」

「…………」

「…………」



 ただ、働いているだけのはずだった。

 ゲームのような爽快感もない、無駄に手間がかかって、怖いばかりの戦闘だ。

 それでも、村に帰れば村人たちの笑顔に迎えられて、お金も貰えて、それは信じられないほど、働くことが楽しくて仕方がなかった。



 一体、リアルと何が違うのか、誰にも分かりそうもなかった。



   ***



「わぁ! なんか、きれい!」

 そういうと、コウが一人で走り出す。

 周囲には、カッパーゴーレムやロッククラブなどのモンスターは見当たらないので、危険はなさそうだった。



 そこは、坑道内とは思えないほど広い空間だった。

 左右だけではなく、天井が高く、一部は裂け目のように外界から日の光が降り注いできていた。

 その裂け目から一筋の水が流れ落ち、きらきらと輝いている。

 崩落したらしい瓦礫(がれき)に水が降り注げば、そこにはコケや草が生えて、きれいな緑を光の中で輝かせていた。



「いいわねぇ。やっぱり、坑道内は狭くて息がつまりそうだったのよね」

「綺麗ですね。それにしても、ずいぶん高いですね」

 ジンの言葉を追って、桜花とツヴォイも上を見上げる。

 陽の光が入ってくる裂け目までは、20メートルはあるだろうか。

 崩落したらしい土の量は全然少ないので、もともと広い空間だったのだろう。



「なんか、妙じゃないか?」

 しかし、一人難しい顔をしていたツヴォイがそんな事を言う。

 ゲーム的には、洞窟内部の開けた空間が安全地帯と言うのは、しっくりこない。

 ただ、ゲーム的な判断が当てはまらない事が多いので、ツヴォイにも断言できなかった。

「そういえば、村役場でもらった地図データには、ここは少し広いだけの通路になっていますね」

 ジンも、自分の視界右上に表示されている周辺レーダーの地図を見ながらいう。



「また、あれでしょ。カッパー・ゴーレムが勝手に掘っているって言っていたじゃない?」

 桜花がそういったが、ツヴォイは納得していない様子だった。

 そんなツヴォイを見て、本当に小心者だなと桜花は思う。

 ツヴォイが頑張る時は、間違いなくコウが危ない時だけだ。それ以外は常に消極的に逃げの一手だから、勇者っぽくない。

 まだ、ジンの方が勇敢だろう。



 いや、一度だけツヴォイが頑張った時があったなと思い出す。

 奴隷商人に桜花が襲い掛かったあの時だけは、ツヴォイは桜花を助ける為だけに前に出てきていた。

 なぜ、助けようと思ったのだろうか。

 ジンもツヴォイも、どうして自分を犠牲にしてまで、助けようとしたのだろうか。

 少なくとも、あの時点では、桜花も彼らも知り合いと言うか迷う程に、出会ったばかりの他人だったはずだ。



「な、なんだよ……」

 じっと見ていたら、ツヴォイが聞いてくる。

「ねぇ、ツヴォイはアタシの事、異性として好きなの?」

 だからあの時、助けてくれたの?

「な、何言ってんだよ?!」

 顔を赤らめて、手の甲で口元を隠しながら視線を泳がせるツヴォイは分かりやすい程にうろたえていた。

 おぉー、これが男性の恥ずかしがり方か。と桜花は冷静に観察する。

 ちょっと、かわいいと思ってしまった。



「べ、別に俺は、そんな下心がある分けじゃ……」

 ん? 何の話だろう?

 ツヴォイの視線を追えば、スカートの方をチラチラ見ていた。

 ははん、スカートに覗く太ももにでも視線が行っていたのだろう。

 試しに、スカートの端をつまんで、ひらりと揺らしてみる。

「ぅ……!?」

「今時、高校生でも見せないようなウブっぷりね」

「う、うるさい! 何なんだよ、今日の桜花は……!」



 そんな恥ずかしがり方をしてくれれば、桜花としては益々楽しくなってくるというモノだった。

「コウが居るのに、他の女の子に目移(めうつ)りするなんてずいぶん余裕ね」

(あお)ってる張本人が言うのかよ!」

「そう言えば、アズミナとも仲がいいけれど、なに? ハーレム展開でも狙っていたの?」

 いつもの様にニヤニヤ笑いながら、桜花はツヴォイいじめを楽しんでいたが、アズミナの名前を出した途端、ツヴォイの表情が一変してしまった。

 恥ずかしさが可愛かった表情が消え、深刻そうな暗い顔つきになってしまう。



「……どうしたの?」

 なにか、変な地雷を踏んだらしかった。

「…………アズミナに、結婚を申し込まれた」

 その言葉に、桜花はしばらく思考が追い付かなかった。

 コイツは、ナニヲ、言ッテいるンダ?

「初めて……、女の子から好きだと言われた。嬉しかった」

 その表情は、悩んでいる中にも、確かに嬉しそうな声色が含まれていた。



「ん? ん? いろいろ突っ込みたい事はあるのだけれど、その前に、初めて告白されたの? コウに好きだって言われた事ないの?」

「ない」

「ないの?!」

 どこまでも、コウとツヴォイの関係は不自然だった。

 本当に、この二人は両想いなのだろうか? 実は、それほど好き合っていない?

 それにしては、ツヴォイはコウに対して余りにも献身的(けんしんてき)過ぎるし、コウもツヴォイにべったりだ。



「なんだよ。桜花なら、もっと喜んでくれると思ったのに」

「よ、喜ぶ……わよ。あなたが、進展させる積りがないなら、コウはアタシが貰っていくわよ」

 ははは、とツヴォイが力なく笑っていた。

「ハーレムか……。俺も、アニメを見れば(うらや)ましいななんて思ってはいたけど、実際に選択を迫られる立場になるなんて、思いもしなかった。……これは、苦しいな」

 そう言って、困ったように笑っている。

 桜花には、掛けるべき言葉が見当たらなかった。



「えーと、ごめんなさい。聞こえてしまったので」

 それまで黙っていたジンが、おずおずと口を挟んできた。

「慌てる必要はないと、思いますよ」

 まさに、脳内で慌てふためいていた二人は、ジンの言葉で足を止める。

「お二人とも、とても真剣に向き合っているのですね」

 それは、アズミナと言う個人をきちんと認めた真摯(しんし)な態度だった。

 ただ、アズミナとは距離があるジンだから、そんな彼らの慌てぶりが少しズレている事もよく分かる。



「アズミナさんはまだ子供ですから、これから考える時間が沢山あります。今すぐに、答えを決める必要はないと思いますよ」

 現実の日本で考えれば、まだ12歳の子供が結婚を考えるなど可笑しな話だった。

 ただ、それは子供だと馬鹿にしてあしらえと言う意味でもない。

「ツヴォイさんは苦しむ程に、アズミナさんに好意を持っているのでしょう? なら、それをきちんと伝えて、その上で、今はまだ早いから、数年後にもう一度考えてみて欲しいと言ってはいかがですか?」

 勿論、数年後にはツヴォイはこの世界に居ない。

それを伝えて分からせるか、それとも、今すぐに現実を叩きつけて泣かせる必要もないかもしれない。



「そうか……。ありがとう、ジン。少し、気が楽になったよ」

「こんな僕の話で、お役にたてたのならば」

 ツヴォイとジンが笑顔を交わしていた。

 男同士の不思議な支え合いに、桜花は不覚にも胸の奥で何か違うトキメキが湧き上がって来そうな感覚に襲われてしまっていた。

 微笑み合う男同士……!!

「……?」

 ただツヴォイが不思議そうに見てきただけなのに、桜花は内心がばれたのではないかと、慌てて表情を取り(つくろ)う。

 特に、変な笑いが込み上げ来る口元は危なかった。



「ごほん! あなたの悩む姿は、見ていて深刻過ぎるのよ。今度からは、悩む前に誰かに相談しなさいよ。あ、アタシだって、聞くぐらいならしてあげるわよ」

 腕を組みながら胸を反らし、しかし視線は明後日(あさって)に桜花が言う。

「…………そのしぐさ、可愛いな。見事なツンデレ」

「な! か、かわ!? ツンデレじゃないわよ!」

 思わぬツヴォイの無自覚な反撃に、桜花は慌ててしまった。

 男なんて意地悪な奴か、下心見え見えのゲス野郎ばかりだと思っていたから、こんなに純粋な感想を言われるとは思っていなかった。

 しかも、ジンと一緒になって微笑まれてしまうと、顔がほてって来てしまいそうだった。



「そうですよ。桜花さんは可愛いのですから、優しく微笑めば男なんてダースで釣り上げられますよ!」

 微笑みながら、ジンが過剰に力を入れて()めて来ていた。

 歯の浮くような事を言う割に、下心どころか何を考えているのか見えない、変な男だった。

 しかし、褒められて悪い気はしないと、桜花も笑ってしまう。

「そんなに要らないわよ。アタシには、あなた達で十分よ」



「「!?」」

 瞬間、二人の男が驚きに表情を固める。

「…………? はっ!? ち、違う! 違うわよ!! そういう意味じゃないから! 勘違いしないでよね!!」

「お、桜花がそんなふうに思ってくれるのは嬉しいけど……」

「桜花さんにそこまで言ってもらえるなんて、僕は幸せです!」

「だから、違うから!!」

 今度こそ本気で顔がほてってしまった。こんな恥ずかしい言い間違いは、今までに知らない程だった。これじゃまるで、告白しているみたいではないか。

 しかも、男二人に同時に。



「!?」

 いっそ、これは乙女ゲー的なフラグなんじゃないか!

 と、思考が桃色に咲き乱れそうになり、桜花は慌てて頭を振った。

 幾らなんでも、ちょっとおだてられたぐらいで舞い上がり過ぎだと、自分に(かつ)を入れる。

 相変わらずふにゃふにゃ笑っている男二人を見て、桜花は素早く指を走らせる。



「おわ! なんでいきなり決闘申し込んで来るんだよ!」

「照れている桜花さん、可愛いですよ!」

「可愛くないわよ! いい加減にしないと、本気で叩き斬るわよ!!」

 腰の剣に手をそえれば、ツヴォイはさっそく逃げ腰になっている。

 ジンの方は何が楽しいのか、いつまでも楽しそうに微笑んでいた。

 ただ、それを見て桜花も少し眉間のしわが消える。

 今日は、ツヴォイもジンもどこか暗い雰囲気だった。こうして笑って、柔らかい表情になってくれた事は、桜花としても少し良かったなと思う。



「ねぇねぇ! ここでお昼にしようよ!」

 三人で揉めていると、一人奥に行っていたコウが呼びかけてくる。

 裂け目から落ちる光を浴び黄金の髪をなびかせて、楽しそうに手を振っていた。

 それだけで、ビビった顔をしていたツヴォイの表情が溶けてしまう。

 コウが楽しそうなら、本気で何でもいいらしい。

 桜花もまた可愛い姿のコウを見れば、いいなぁ、ほしいなぁ、と(よこしま)な欲望が優先され始めた。



「あれ?」

 桜花が見つめるコウの先、後ろの瓦礫(がれき)が少し崩れたように見えた。

 日の光からずれた影の中にあるので、いまいちよく見えない。



 しかし、勘違いでない事がすぐにわかってしまった。

「コウ!」

 ツヴォイが叫ぶとともに、誰よりも真っ先に走り出す。

 コウが背後を振り返っていく。

 しかし、何もかもが間に合わなかった。

 横殴りに襲ってきた、土砂の塊がコウを宙に飛ばしていた。



 人よりもはるかに重い勇者の体が、まるでトラックにでも跳ねられたように。

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