人面魚と人魚の旅は続く③~終幕~
2話連続更新しました
そして、これが魚類最後のお話です
語尾に『〜』が付く鯉、鯉子
普通の話し方をする鯉、鯉未
丁寧な話し方の人魚さん
ホエールウォッチングは常に海を泳いでいる彼女達にとっては日常茶飯事なので良いとして。妖精達に連れられて来たのはとある海沿いの一軒家。レシオンがその一軒家のドアをノックすると出て来たのは恰幅の良いたれ目が特徴的な老婆だった。
「あら、レシオン友達を連れて来たの?」
老婆の言語はもちろん外国語だが様々な海を旅して来た彼女達はその言語が分かる。
「さっき、海で会ったんだ」
「まぁ、可愛いお顔をしたお魚さんね。こちらは人魚さんかしら」
「鯉未です」
「鯉子です〜」
「人魚です」
彼女達が視えると言うことはこの老婆は数少ない視える人だ。そんな老婆はジェシーと名乗る。ついでにこの家の裏では小さな食堂を経営していると聞いた。
「どうやってお料理しましょうか」
「「「ジェシーさんっ!」」」
「ふふっ。冗談よ、レシオンの素敵な友達ですもの、食べるわけはないでしょ」
一瞬、命の危機に瀕した彼女達の心臓の鼓動は早くなっている。冗談にも聞こえない冗談は心臓に悪いと思った。
「ジェシー!こいつらを観光案内したいんだ」
「そうなの。それじゃぁ、今からは無理だけど明日なら良いわよ」
レシオンは遠回しにジェシーに車を出してくれと頼んでいる。
* * *
その晩、レシオンは海藻を食べている彼女達にジェシーとの出会いを語った。なんでも、レシオンとその仲間数名が海鳥に襲われて怪我をした時、助けてくれたのがジェシーだと言う。そこから、レシオン達を含め妖精達はジェシーを慕うようになり今の関係になったと言う。
「ジェシーさんは優しいのですね」
「当たり前だ!」
「素敵な友情ですわ〜」
ジェシーを、褒めるとまるで自分の事のように喜ぶレシオンを含む妖精達。すると、ここでレシオンはとある情報を彼女達に話した。
「ついでに、ジェシーの孫もここに住んでいて視えるぜ」
「遺伝ね〜」
「血は争えないのね」
「どんな方なのですか?」
ドヤ顔で言う2匹をおいて人魚とレシオンは話し込む。名前はアドルフ・クラッカートニー、25歳。今は一般企業に勤めてるらしい。そして、既婚者である事も。
「この前、結婚したばかりだ」
「あらあら〜新婚さんは熱いわ〜」
彼女達はにまにましている。
* * *
そして、ハワイに着いて妖精達やジェシーと関わること数週間、珍しく彼女達にしてみれば長く滞在した。と言うことは、ここハワイはとても居心地が良かったのだろう。
「「でも、私たちは旅を続けるのよ (〜)!」」
「えっ!そうなのですか⁉︎」
「もしかして、人魚さんここに居たい?」
その問いに人魚は暫く悩む。
「正直に言いなさい〜」
ここ数週間、人魚はジェシーの手伝いとして海から貝を採ったり自分の出来る範囲でお店の手伝いをした。そして、お店に来るお客の良い笑顔を見るのが楽しくなっていたのだ。これは、旅をしていてどこかに拠点を置かないと出来ないことである。
「でも、これは私のわがままで」
「なーによ〜!水臭いわね。私たちは仲間でしょ〜」
「わがままの一つや二つを言っても鯉子には敵わないわ」
「遠回しに私をディスったわね〜」
軽やかに笑う鯉子と鯉未。
そんな彼女達に人魚は正直に言った。
「私、ここにいたいです」
その数日後…
「鯉未さん!鯉子さん!今まで本当にありがとうございました!私、あなた達と旅が出来て良かったです」
鯉子と鯉未が新たな旅を始めるその日、そう人魚からすれば別れの日。ジェシーが経営する店の裏にある浜辺で人魚、ジェシー、妖精達は鯉子と鯉未を見送った。
「人魚さん、離れていても私たちは仲間だからね」
「うぅっ」
「留まるならジェシーさんのお手伝いしっかりね〜」
「はい」
人魚の目からは大粒の涙がこぼれ落ちている。そして、鯉子と鯉未は見送ってくれた全員に最後の別れを告げると朝日に向かって泳いで行った。
「うわぁぁぁあ!」
「鯉未〜泣きたいのは私もだよ〜。でも、これはあの子が決めたことなんだから〜温かく見守るのが私たちの役目でしょ〜」
「うん…ぐずっ」
旅は出会いあり別れありと言う。
鯉子と鯉未はそんな言葉を誰かが言ったような気がした。そして、彼女達はこれからも旅を続けるのであった。
みなさまへ
今まで彼女達の旅路にお付き合い下さり
ありがとうございました




