転生はファンタジーの味
目を覚ますと、何とも豪華そうな天井が見えた。
まだ完全に覚醒しきってないのか、少し眠い。
それでもやらなくてはならない事がある。まずは先ほどの出来事が夢でなかったかどうかだ。今こうして思い出してみると、どこか昔話のような感覚だ。ついさっきの出来事ではなく、もっと昔に起こった出来事のように思える。
やっぱり夢かなー、と思いつつお腹の辺りに紙のようなものがくっついているのに気付いた。体を動かすと音がするし、何よりかゆい。
お腹に付いている紙らしきものを取ろうと手を伸ばす。そこでもう一つのことに気付いた。
手が小さくなっている。
急いでいつの間にか寝ていたベットを降りて、立ってみる。するとどうだろうか。見事に体も縮んでいた。ベットに乗るのに手を使ってよじ登らなければならないのだ。随分と小さくなっている。二,三歳位だろうか。
何が何だか分からないが、今最も情報が得られそうなのはお腹にくっついているであろう紙であろうと考え、服をめくってみる。するとやはり、紙がくっついていた。どうやら手紙のようだ。
ちなみにお腹も、以前のような運動不足気味のたるんだお腹ではなく、綺麗なしっとりお肌のお腹だった。
とりあえず手紙の封を手でちぎり、内容を確認する。送り主は予想通り、あの悪魔だった。
『やア、君からしたらさっきぶり。この手紙からしたらお久しぶり。逐一説明するのは面倒臭イから、要点だけ抑えて説明するよ。君はとある貴族の元に転生した。状況は自分で確認してね。そして君はそろそろ三歳になるころだと思ウ。何故零歳からでなかったのかと言うと、単純に脳が発達しきってなイからだ。赤ん坊のころから大人と同じ働きを脳に求めてたら壊れちゃウからね。だから意識が戻ったのが物心つき始める今ぐらイの年齢になったんだ。でも、君のしそウな行動を脳にインプットしておいたから、多少のアドバンテージはアると考えてくれてイイ。順次、記憶も戻ってくるから、今説明が必要なのはこのくらいだ。あとは自分で色々と頑張ってね。
PS,この世界だと紙ってイウのは貴重だから読み終えたらこの手紙は燃えるよ』
読み終わると同時に、本当に手紙は燃えた。
「あっつ!?」
PSの時点で嫌な予感はしていたが、本当に燃えるとは思えなかった。だが幸いにも早くに気付けたため、火傷はせずに済んだ。それに、そのお蔭で目が完全に覚めた。悪魔のお蔭だと思うのは癪だったので、ここは自分の反射神経を褒めるとしよう。
それよりもここは本当に貴族の家なのだろうか?結構騒いだのに誰一人としてくる気配がない。あんなに騒いだら普通、使用人の一人や二人跳んできそうなものなのだが。
ここで、徐々に記憶が戻ってきた。
この家は貴族は貴族なのだが、没落しかけているのだ。原因は父親。顔は良いのだが、性格が最悪なのだ。傲慢で欲深、領地の人々に重い税を払わせ自分は豪遊。正真正銘の屑だ。
その屑の被害を最も受けているのが、母親。母親はお淑やかで綺麗な人なのだが、運が悪かった。昔は中々良い家のお嬢様だったのだが、政略結婚で屑と結婚。そして屑が当時雇っていた優秀な使用人の手腕で、母親の家をまるごと取り込んでしまったらしい。
もちろん、その頃は俺は生まれてないから聞いた話だが。今はその優秀な使用人はこの家を出て行き、能無しの屑が私利私欲に権力を振るったせいで、現在没落しかけている。
ちなみにさっき騒いでも誰も来なかったのは、屑が雇っている使用人の程度が低いから、というのが一つの原因だ。この屋敷にいるほとんどの使用人はメイドで、体つきの良い女の人ばかりだ。理由は大体察しが付くだろう。もちろん、お金と体だけの関係なので仕事もへったくれもなく、夜伽以外の仕事はまったく行っていない。なので、貴族の子供が騒ごうが、あやしに来たりはしない。
もう一つの原因は、物心付く前の俺が変態行為を繰り返していたかららしい。メイドさんに抱かれたら真っ先に胸に顔を埋め、ハイハイでスカートの中に潜り込み、授乳の際には乳を執拗に舐め回していたようだ。
おい、悪魔よ。これは些かやり過ぎではなかろうか?確かにちょっと魔がさして胸にタッチすることはあるだろうが、これは酷いだろ。何だよ、授乳のときに舐め回すって。チェリーボーイにそんな勇気はないのだよ。
だが、そんなことも一瞬で許してしまうほど、楽しみがこの世界にはある。
魔法だ。
意識が覚醒するまでの約三年、俺は魔法の練習をしていた。もちろん、記憶の中なのでまだ俺は魔法を体験していない。これには心躍らざるを得ない。
ここは、ファンタジーの世界なのだ。
更新しないとユニークやらなんやらがダダ下がり…