契約は脅迫の味
「次はこれからの事だ。君にはある世界に『生まれ変わり』として行くことになる」
生まれ変わり?
これではピンとこなかったが、言い換えれば転生だ。この考えに行き当たった瞬間、自分の中で何かが繋がった。この展開に少々見覚えがあったのだ。ニート道まっしぐらの時に、暇つぶしにネット小説を読み漁って時期があったのだが、その小説の中でも結構ポピュラーな展開、所謂『王道』でこういう展開がよく見られた。
ということは、アンタは神様か!
生きてる頃はろくなことが無かったが、そのかわりにこうして哀れな自分に、ツラい人生を耐え切った褒美としてこの転生を授けてくれたのだろう。
そう呑気に考えていたが、次のソイツの言葉で、そんな甘い話はない、とまたまた現実を見ることとなる。
「何言ってるんだ?僕は神じゃなイぞ?」
え?アンタは神様で、色々なチート能力をくれるんじゃないのか?
「何だそれは?人間の創作か?神がそんなことするわけなイだろう。」
もう何がなんだか分からなくなってしまっていた。だが、これだけは分かる。
これは、自分にはあまり良くない展開である、と。
「急いではイるが、時間はアるし説明してやるよ。まず、アンタがなんで僕を神だと勘違イしたのかは分からなイが、神はそんなことはしなイ。神は人間を平等に扱ウから、誰か一人の為に何かをする、とイウのは絶対になイ。ちなみに、僕は悪魔だ。お前はこウして僕に選ばれたが、特別な理由はなイ。僕が定めた条件をたまたま君が満たしていたのから選んだだけ。まア、君からしたら都合のイイものだったでしょ?なんせ君は──────
地獄に落ちるところだったんだから」
何が何だか分からなかった。だが、もし今の自分に顔があったとしたら、恐らく俺は泣いていただろう。
「何で?って顔してるから一応言ってオくけど、君は自殺扱イになってるんだ。で、自殺ってイウのは罪が重イ。そこの説明もするけど、自殺ってのは『自分』を『殺す』こと、つまりは殺人だ。君は生きてイた間に人を一人殺めてる。それなのに罪悪感などは一切なし。なんとなく分かるよね?君は、喜びながら人を殺したんだ。人間の間じゃ、すっごい笑顔で人を殺す人がイたら話題になるんじゃない?」
理屈は、なんとなく分かった。だが納得はしてないぞ。
「君が納得する、しなイは関係なイ。世界ってのはそうイウ風に出来てるから割り切ってね。さて、脇道にそれたけどここからが本題。君には生まれ変わって『ある事』を成し遂げてもらう。そのための『生まれ変わり』だ。まア、大変だと思うけど頑張ってね」
ちょっと待て、何で俺が引き受けることを前提に話をしてるんだ?まだ承諾したわけじゃないぞ。
「んー?まだ君の立場が分かってなイ?君に拒否権はなイよ。まア、出来ることはできるけど、オススメはしなイよ。もし断ったら、君には地獄よりも酷い所に行くことになるからね。質問して答えてじゃキリがなイから言っちゃうけど、本当なら君は大地獄ってところに行くはずだったんだ。僕の力で地獄にまで引き上げてる。理由もアるけど、それは省略ね。ちなみに霊界は、『天国』『楽園』『中間天国』『地獄』『大地獄』の計五つで構成されてイる。さらにちなみに言うと、今までで『天国』に行った人は一人もイなイ。イやー、人間てのは醜イねー。ま、僕たちがそうさせてるんだけど」
ソイツは、ほんとに愉快そうにケラケラと笑った。こっちからしたら笑い事ではない。
「さっきも言ったけど、僕は急いでるんだ。あとの説明は後々してイくとしよう。習うより慣れろ、だ。それじゃ、頑張ってねー」
ソイツがそう言うと、だんだん意識が遠くなっていくのを感じた。
冗談じゃない!まだ聞きたいことは山ほど──────
手を伸ばそうとしたが、手はない。ソイツが手を振っている場面を最後に、水無月の意識はブラックアウトした。
早くも挫折しそうですよ…




