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6/6

vs. かくれんぼの神 秘世子

「クソゲーじゃねーか!」


息を切らしながら、俺は叫ぶ。


ダークブルーに染まった薄暗い洞窟の中を、全力で走る。


前方に一枚の戸が見えた。


俺はそこへ飛びつくようにへばりつき、取っ手をひねる。


だが、戸は微動だにしない。


ドドドッ。


背後から、地面を揺らすような音が響く。


振り返る。


ドドドドドドッ!


大量の何かが、こちらへ迫ってきていた。


人――いや、正確にはヒト型の怪物だ。


むき出しの牙。とさかのように逆立った体毛。子供ほどの小さな体躯。


(ドラゴンの次はゴブリンかよ!)


俺は戸へ向き直る。


ドアノブの横に、赤いコード情報が浮かび上がっていた。


そのコードへ手を突っ込み、修正を試みる。


どうしてこんな状況になったのか。


原因は少し前に遡る。


――断る。


かくれんぼの神、秘世子の提案に、俺は即答した。


我ながらバカだと思う。


明らかに閉じ込められ、不利な状況に置かれている。


嘘でも提案に乗り、隙を見て逃げるという手もあったはずだ。


ふっ、と笑いが漏れた。


それこそ、バカらしい。


あの少女の寂しそうな表情が頭をよぎった時点で、嘘でもそんな選択はできなかった。


その結果、秘世子は俺と同じくこの空間に閉じ込められていた腹ペコのゴブリンたちを解き放った。


そして、今に至るわけだ。


ただし、秘世子にも想定外だったことがある。


『なーんで、開けられちゃうかな』


呆れたような秘世子の声が響く。


ガチャリ。


コードを修正したことで、戸の鍵が外れた。


俺はすぐにその向こうへ転がり込み、追っ手が来る前に戸を閉める。


『むー。そこに近いのは……』


戸に背を預け、その場に座り込む。


ここの戸は、どうやら普通の戸ではない。


同じ戸を通ったからといって、入ってきた場所へ戻れるとは限らないらしい。


おかげで、秘世子が次の追っ手を送り込んでくるまで、少しだけ休める。


『ねえ、考え直したら? 今からでも遅くないよ?』


「うるせーよ」


ここまで来たら意地だ。


絶対に、このクソゲーを攻略してやる。


呼吸を整え、俺は立ち上がった。


そして、迷うことなくある方向へ歩き始める。


実は、攻略の糸口はすでに見つけていた。


この空間に無数に存在する戸は、遊びのコードによって制御されている。


戸ごとに形や雰囲気が違うだけでなく、書き込まれているコードの中身も少しずつ違っていた。


だとすれば――。


『あ、ちょっと』


秘世子の声に、わずかな焦りが混じる。


俺は構わず進んでいく。


『え? ちょっと待って。もしかして、見えてる?』


声から、明らかに余裕が消えた。


やがて俺は、一枚の戸の前で足を止める。


他の戸とは比べものにならないほど、大量のコードが書き込まれていた。


出口か。


あるいは、この空間の中枢に繋がる戸。


どちらにせよ、重要な場所であることは間違いない。


俺はコードの中へ手を突っ込み、世界に生じているバグを修正する。


ガチャリ、と鍵が外れた。


取っ手へ手をかける。


『ちょっ! なんで見えてるのーっ!』


秘世子の叫びと同時に、俺は戸を開いた。


向こう側から、眩しい光が差し込んでくる。


(やっぱり、当たりだ!)


俺は意気揚々と、戸の向こうへ足を踏み入れた。


そこで目に映ったのは――。


白とピンクを基調とした壁。


戸棚に並べられた、いくつものぬいぐるみ。


ふわふわとした、可愛らしいベッド。


どう見ても、そこは女の子の部屋だった。

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