第9章5節: 逆輸入される知恵
宴が進むにつれ、他の村人たちも、自分たちが作った料理を「ハルカ様にぜひ!」と持ってくるようになった。保存食教室で習ったものをベースに、それぞれが工夫を凝らした一品だ。
ある者は、ジャーキーに香りを強くつけて、野性味あふれる風味に仕上げていた。別の者は、ジャムに森で採れる香りの良い花の蜜を加え、華やかな香りを添えていた。ピクルスに、私が使わなかった独特の酸味を持つ実を使っている者もいる。
それらは洗練されているとは言えないかもしれない。だが、それぞれに創意工夫があり、この土地ならではの知恵が活かされている。中には、私が思いつきもしなかったような食材の組み合わせや、調理法(原始的ではあるが)も見られた。
「この香りづけの仕方は?」
「この花の蜜はどこで?」
「この酸っぱい実は?」
私は、いつの間にか酔いも忘れ、村人たちに質問を始めていた。彼らは喜んで、自分たちの工夫や、森の恵みについて語ってくれる。それは、私にとって新たな知識の獲得であり、この世界の食文化(あるいは、その萌芽)に対する理解を深める貴重な機会だった。
教えたはずの私が、逆に彼らから学んでいる。知識とは、一方通行ではない。相互に作用し、刺激し合うことで、新たな価値を生み出していくものなのだ。その当たり前の事実を、私はこの辺境の村の宴で、改めて実感していた。




