第13章1節: 歓喜の声、味噌もどき完成
「ついにやったぞ!」
私の研究室(小屋)に、珍しく抑えきれない歓喜の声が響き渡った。
長期間にわたる試行錯誤の末、ついに、ついに私は「味噌もどき」を完成させたのだ!
この世界には大豆が存在することは確認済みだった。
納豆菌らしき微生物も発見した。
ならば、味噌の主原料である麹菌に近い微生物も存在するのではないか?
その仮説に基づき、私は様々な穀物(硬麦、アワに似た雑穀、森で採取したデンプン質の高い根など)に自生するカビ類を採取し、丹念に培養・選別を繰り返してきた。
目指したのは、アスペルギルス・オリゼー、つまりニホンコウジカビに近い、デンプンやタンパク質を効率よく糖やアミノ酸に分解する能力を持つ菌株だ。何百というサンプルの中から、ようやく有望な数株を選び出し、それを使って大豆と塩、そして「種麹」として選抜した菌株を混ぜ合わせ、発酵・熟成させること数ヶ月。
本日、熟成させていた樽の一つを開けてみたところ、そこには紛れもない、あの芳醇な香りと深いコクを持つ、赤みがかったペースト状の物質――味噌もどき――が出来上がっていたのだ。
塩味、旨味、そして発酵由来の複雑な風味。
完璧とは言えないまでも、これは間違いなく「味噌」と呼べる代物だ。
ああ、この達成感!
まるで、長年追い求めてきた未知の化合物の合成に成功した時のような、純粋な科学的興奮と、そして食いしん坊としての歓喜が、私の胸を満たした。
さて、この自家製味噌もどきが完成したとなれば、私がやるべきことはただ一つ。




