第12章12節: リリア達へのお裾分けと反響
調理実験で作った「鹿肉の低温調理、オレンジキノコのソテーと粘液ソース添え」は、私一人で食べるには量が多かった。それに、あのキノコや粘液の安全性について、他の人間での反応も見ておきたいという(研究者としての)意図もあった。
私は少量を取り分け、残りをリリアの家へ持っていくことにした。もちろん、カイが騒ぎ立てないよう、「これは実験の副産物であり、特別なものではない。決して他言無用」と強く念を押すことを忘れずに。
リリアとカイ、そしてリリアの母親は、その未知の料理を前に、最初は恐る恐るだったが、一口食べると、案の定、目を丸くしてその美味さに驚嘆した。
「こ、このお肉、信じられないくらい柔らかい! どうやったのハルカさん!?」
「キノコも、すごくいい匂い! このトロトロしたのも美味しい!」
「まあ……こんな手の込んだ料理、初めていただきましたわ……」
三人の反応は良好だ。少なくとも、短期的には毒性はないと見てよさそうだ。私は満足し、彼らの賞賛の声(と、また聖女扱いされそうな雰囲気)を適当に聞き流し、小屋へと戻った。
しかし、翌日。村ではやはり、新たな噂が囁かれ始めていた。
「ハルカ様が、また新しい、天国の料理を作られたらしい」
「森の奥で見つけた、光るキノコと、虹色のソースを使ったとか……」
……光るキノコ? 虹色のソース?
伝言ゲームは、かくも情報を歪曲させるものか。
私は頭痛を覚えた。
口止めは、やはり無駄だったようだ。
やれやれ。
まあ、わかってはいたけどな。




