第12章8節: 古老の知恵と森の伝承
カイを連れて村へ戻る道すがら、偶然、森の薬草を採りに来ていた村の古老(腹痛騒動の際、ハルカの薬草知識に関心を示していた老人だ)に出会った。カイが無事だったことに安堵しつつ、古老は私たちが森の奥から戻ってきたことに驚いていた。
「おお、ハルカ様とカイ坊ちゃん。ご無事で何よりじゃった。しかし、あの奥まで行かれるとは……」
私は採取したオレンジ色のキノコや粘液植物、そして輝く鉱石について、古老に何か知らないか尋ねてみた。
古老は、オレンジ色のキノコを見て首を捻った。
「ふぅむ、こんな鮮やかなキノコは見たことがないのぅ。わしらも、色の派手なキノコは毒が多いと教わって、手を出さんようにしておるからのぅ」
粘液植物については、「ああ、『ベトツキカズラ』じゃな。あれに触ると厄介じゃから、皆避けて通る。何かの役に立つとは、考えたこともなかったわい」と教えてくれた。
そして、輝く鉱石の話をすると、古老の表情が少し曇った。
「……光る石、とな? それはもしや、『霧吹き谷』の近辺で見つけなさったか?」
私が頷くと、古老は声を潜めて言った。
「あの辺りには、近づかん方がええ。昔からの言い伝えじゃ。『谷の奥には、触れてはならぬものが眠っておる。光る石は、その力の欠片。人の手に余るものじゃ』と……。ボルガン殿もご存知のはずじゃ」
ボルガンが言っていた「眠れるもの」の言い伝えと一致する。迷信かもしれないが、無視はできない情報だ。古老は、マナ鉱石の近くに生えていた銀色の薬草についても、「見たことがない」と言った。やはり、特殊な環境下で育つ固有種なのかもしれない。
古老の知恵と伝承。書物にはない、口伝の情報もまた、この世界を理解する上で重要なピースとなる。私は古老に礼を言い、新たな情報を胸に、村への道を急いだ。




