幽霊屋敷
「捨てる神あれば拾う神ありだなあ〜」
美人さんが用意してくれたフカフカのベッドに寝っ転がって見波は幸せを感じてた。
昔から変なものを良く見てしまうし、事故でよく怪我もした。
自分にしか見えてないみたいで、寂しかったが
アキラも見えているらしい。
そして何より家主さんが美人だ、男だが。
ハッキリ言って振られた彼女より数倍綺麗だ。
それも嬉しい。
散々な1日だったが、最後はハッピーエンド。
「俺って不幸に見えて、ラッキーなのかな?」
幸せな気持ちで部屋の明かりを消して眠りに落ちた。
どのくらい経ったろう?
部屋に時計が無いから分からない。
まだ外は暗い。
ベッドが寄せられてる壁からコツコツと音がするのだ。
最初は誰かが壁を叩いているのか?と思ったが、
靴音だと気付いた。
誰かが階段を靴で降りる音だ。
あれ?
階段なんか、あったかな?
部屋に案内された時、階段なんか無かったような…
まず建物が平屋だったような…
無視して寝ようとしたが、靴音がだんだん近付いているような…
「ダメだ!気になる!」
アキラは玄関横から別棟になってる日本家屋の方だと
言ってた。
つまり足音なら綺麗な家主、有間さんだ。
少し期待もしつつ、部屋からそっと顔を出した。
当たり前だが、有間はいない。
「だよな。ハア、俺のバカ、寝よ!」と扉を閉めようとしたら、
応接間に続く廊下に女性のドレスの裾のような物が
見えた。
えっ、なんで?女性なんか居たっけ?
思わず部屋から出て、奥の廊下へ曲がる。
突き当りは風呂でその手前にキッチンの扉、
その次がダイニングの扉、そして1番手前が応接間だが有間さんの部屋兼無数の本の腐海の森みたいなのが
さっき少し見えた。
その両開きの豪華な扉は、しっかり閉まってる。
反対側は、トイレと見波の寝てる部屋しか…あれ?
おかしくないか?部屋が少ないような…
壁を伝いながら奥へ向かう。
風呂の扉の手前にこちらはトイレしかないはず…と
横を見たら…そこは階段になっていた。
「あれ?さっき階段なんか無かった…ここは壁だったはず!」
が、今は登れる。
そう言えば、見波の部屋の入り口は扉が低くて屈まないと入れない。
そして入った廊下側の壁は斜めで奧に狭くなっている。
「あれ?あれは上に階段があるんじゃないか?」
独り言を言いながら、急に現れた階段を上る。
と見上げた先に踊り場があり、そこにほとんど下着姿の裸の女が!
「!!!」
妖艶な女が、見波を手招きしている!
ふらふらとその女に吸い寄せられるように階段を上る見波。
階段の手すりにもたれていた女は、やがて両手を広げて見波を向かい入れようとする。
が、その腹は血だらけで穴が空いている。
「ヒッ!」見波は立ち止まった。
アレだ!いつものアレだ!
生きてる女じゃない!
階段を降りようと階下を見たら、今度はウエディングドレスの女が!
今度は可憐な少女。
だが、そのドレスは血染めで無数の穴が首や胸や腹に空いている。
ウエディングブーケを持ったまま恨めしそうに見波を
見ている。
「ヒイイイイイイ〜ッ!」
後ろには、もう穴の空いた腹にただれた肉片がこびりついた女が
迫っていた。
反射的に階下の花嫁姿の少女の方へ走り、脇を抜けて
キッチンに逃げ込んだ!
追いかけてくる気配はない。
さっきまで居たキッチンだ。
だが、何か違う。システムキッチンだったはずなのに
かまどだ。
そして狭くなって和室の襖がある。
さっきまで冷蔵庫とレンジや炊飯器があった壁は消えて和室の引き戸になっている。
少しだけ扉が開いている。
気になって中をのぞくと、そこには着物の女が長い髪を振り乱して横たわっている。
見波に気付いたのか?上半身を起こしてきた。
が、その首には紐が巻き付き口から血が吐き出していた!
皆、死んでる!生きてる女じゃない!
キッチンの外の廊下には下着姿の女と花嫁、キッチンには和服の女が!
皆殺された女達だ!
じりじりと近寄ってくる。
「誰か!誰か、助けて〜!」見波は叫んだ!