表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四神相応  作者: たま
1/41

渡月橋

見波(みなみ)が気付いた時には、嵐山の桂川の渡月橋の欄干に立ち

飛び込もうとする自分に驚く。

昼間は賑やかな観光地も夜は早く11時には人気もない。

恋もバイトも金も失い、下宿は不審火で燃え、もう生きてるのがイヤになったのは確かだ。

夏だし良いだろうと渡月橋の橋の下で雨露を凌いで

寝転がっていると河原から「おい」と声を掛けられた。

男のようである。

川岸だからかなり距離がある。

夜目には黒いシルエットしか分からない。

また「おい」と呼ぶ。

「なんですか?俺もう何ももってないですよ!

何もかも失くしたんで!」

吐き捨てるように言ったが、男らしきシルエットは

意に返さないようで「おい」と手招きする。

「なんなんですか!一体!」

腹も少し立って近づいた記憶まではある。

が、次に気がついたら欄干の上に立っていた!

「うわあああ〜っ!何でこんなとこに!」

急いで降りようとしたが、脚が固定されたように動かない!

足をよく見ると川の方から2本の手が伸びてしっかり

見波の足を掴んでいるのだ!

が、手しかないのだ…本体が無い!

その手がグイグイと川の方へ足を引っ張っていく。

「うわああああ〜やめて〜助けて〜」

両手をグルグル後ろに回して、その手から逃れようともがく。

「ねえ、何やってんの?アンタ?」

後から若い男の声がした。

振り向くと、自分と同じ年頃の男が怪訝な顔でこっちを見ている。

「助けて!足を誰かが掴んでて動けないんだ!」

必死で説明する。

「死にたい訳じゃないんだ?

さっき自分で欄干登っていくから飛ぶ気なんだと思った。」

そうなのか?

記憶が無い間に自分でココに来たんだ!

死にたいのか?俺は?

よく分からなくなってきた。

「死にたくないなら、ソイツは邪魔だな。

飛ばしとくよ。」

そう言うと、足を掴む手に触れた。

バチッと音がしてギャッと叫び声がしたような…

足が自由になって降りることが出来た。

「ありがとう!命の恩人だよ!」

感謝して男の手を握る。

「いや、死ぬ気も無いのに、アイツに憑かれる方が

珍しいよ。」

驚いたように手を引っ込められた。

「えっ、そうなの?

昔からこんなもんだから。

それより見えるんだね?親や友達に言っても信じて貰えなくて〜

死にたがりの頭おかしいヤツとしか思われないんだよね〜」

見波は嬉しくて男の手をまた握りにいった。

「俺、見波って言います。良かったら名前教えて?」

「えっ、イヤだよ。

アンタ大丈夫?ちょっと警戒心なさ過ぎ!」手を払われた。

ふと悲しくなる。

確かに警戒心がなさ過ぎかも…

大学入って浮かれてて、バイト先で可愛い女の子に声掛けられて

付き合う事に。

お金に困ってると聞いてどんどん貸してたら

他の男に貢いでた。

それを聞いたら逆ギレされてお金も返して貰えず

ストーカー扱いされてバイト辞めさせられた…

果ては、下宿のアパートが燃えて住むとこ無し。

今朝から何も食べて無いのも思い出した。

「俺って、ほんとバカだな…死んだ方が良かったかも」

その場でしゃがみ込んでしまった。

涙が勝手に溢れてくる。

「わああ〜やめてよ。とにかく何か食べなよ。

腹がすげーなってる。」男が焦る。

「金も住むとこも全部失くした。バイト先の女の子に

騙された。

本当に俺はバカだあ〜京都なんて都会に出てくるんじゃ無かった〜」地面に突っ伏して泣き出した。

助けてくれた男は、目を閉じて自分のおでこを人差し指で突いている。

「えっ、やだよ〜えっ、でも〜分かったよ。」

深くため息をついて目を開いた。


「僕のアパートの大家さんに話してみよう。バイク乗って?」ヘルメットを渡された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ