29稼 見た目
「……………あぁ。この機能良いね。限定して使えたらいいんだけど」
闇を感じさせる会議を盗聴してから数日。相変わらず色々とせめぎあいがある中で、特に何も重要なことがないタイミングが合って少し時間ができた私はヘルプを眺めていた。
そこで見てるのは、最初にヘルプを見た時にはあまり重要だと思ってなくてそこまでしっかり覚えてなった部分。
ただ、今読み返してみるといろいろと重要なことが書かれてあって、
「見た目の変更ねぇ。これ、使う対象によっては結構変わりそうな気がする」
見た目、それもモンスターのものを変更できるということが書かれていた。
今思えばモンスターの姿を人っぽくすることでこのダンジョンのモンスターと戦うことへ抵抗感があるようにしたり、放出の時にもより人間社会になじみやすくなったりするし使うべきだったかも。
やり方もそこまで難しくはなく、モンスターの3Dモデルみたいな物が出てきて、それの体を隆起させたり沈降させたり。そんなことができる。
ただ、作るのは難しくなくてもちゃんとその姿で活動させられるのかどうかというのはまた別の話だけど。ちゃんと体の各種機能も働くような作り方をしなきゃいけない。
「ガチャでスキャナーを当てることができればそこに入った人の情報を読み込んで使用することができ、かぁ。条件厳しいけど、当てた人が悪用する未来しか見えないな~。私の情報を取られないようにしないと」
天才的なセンスと大量の知識を持っている人じゃなくても、一応やり方はいくつかあるみたい。見た目としてはゴブリンとか他のモンスターとかもあんまりかわいくないしどちらかと言えば気持ち悪い部類だから、ある程度そこを改善できるようになるのは人によっては凄い助かるんじゃないかな?
そういうモンスターが嫌すぎて自分のダンジョンの様子を見れないっていう人も中にはいるだろうし。
「スキャナー使えるようになればモンスター美少女化も夢じゃないっていうのがまたいやらしいよね~。そういうことできるなら放出した後もあんまり多く出し過ぎなければ気づかれないだろうし。それにもしかしたら、顔を武器にそっち系の商売でお金を取るっていうのも可能かも……………」
まず美少女をスキャンするのが難しいと思うかもしれないけど、私のダンジョンなら人もたくさん来るしできなくはないと思う。
それこそ宿泊施設みたいな状態にして、ベッドをスキャナーの中に作るとかだったらスキャナーのスキャンできる条件次第ではあるかもしれないけど大量のデータを取り込めそうだし。
なかにはきっと美少女もいるはず。
「もちろん私のデータを取るのが1番手っ取り早くて最高な美少女のデータの取得方法だけど、さすがに私の姿をした人がたくさんいるのも倒されるのも嫌だしなぁ……………」
もし知能がとてつもなく高いモンスターとかがいた場合私の影武者として使えるかもしれないけど、人に紛れ込ませるっていう目的で私の姿を使うつもりはない。完璧で究極な私は1人で十分なんだよ!
…………まあ、そんなこともありつつ。
合間にヘルプを見返したり揉めてる人たちから経済の動向を読み解いたり仕事にいったりといろいろしていたらいつの間にか時間は過ぎて、
「あっ。そろそろガチャいけるかな」
いつの間にかそう思えるくらいにはDPがたまっていた。
ガチャ用の石を購入するために課金しても今後の経営に支障は出ない程度のタイミングで石を獲得。そのまま、流れるようにガチャ、
「来い来い来い!ボス来いボス来いボス来い!!!」
聞き間違えたらお相撲さんかと思われるような願いを口にしつつ、私はガチャを回していく。
そして出てくるものを確かめていき、やはり私が注目するのはレアなものが出る枠。ここでモンスターが出たら、ダンジョンコアの前にある扉を守るようなボスにできるわけだよ。
ただ私の引きが悪いのかもしれないけど、出てくるのはたいてい罠かフィールド。モンスターは今のところまだ低いランクのものだけ。
今後使えるかもしれないけど、それじゃあ今度の抗争に勝てるとは思えない。やっぱりここは、ボスが欲しい。
そしてその願いが届いたのかは分からないけど。大体6回目くらいのガチャで、
「おっ!来た!高ランクのモンスター!!」
私の求めていたものが来た。
もう私のダンジョンのガチャではボスになるようなモンスターは出てこないんじゃないかと思ってたけど、さすがにそこまでひどくはなかったらしい。
ボスにしようと思って早速それを確認してみれば、
「パラサイト?」
そうした名前が書かれていた。もうこの段階で嫌な予感がしたが、それでも一縷の望みにかけて姿と説明文を見てみれば、
「む、虫だ。寄生虫だぁ……………」
高ランクのモンスターになるのは間違いないと思われる存在。それが寄生虫。実際使えるようになれば強いと思うし、確実に防衛にも役立つと思う。
説明書きも読んでみると、
「モンスターや人に寄生し、死後その体を操ることができる。また、死体が動かなくなった場合は他の個体への新しい寄生が可能。新しく寄生を行なった場合、寄生主に以前の寄生主のスキルを与えることができる。与えられるスキルの質と量は以前の寄生主への規制期間に依存、かぁ。まあ強そうなんだけどからめ手的な強さだよねぇ。私の求めてるものとは違うんだけど……………」
非常に残念なことに、全くもってボスには向いてないタイプのモンスターだった。
もしかしたら長い事時間をかけて寄生虫の寄生主へ付与できるスキルをより強力なものに変えたりすることで通常のモンスターをボスクラスまで引き上げるなんてこともできるかもしれないけど、絶対にそれは長い時間が必要。
到底これから先に待ち構えてる抗争には間に合わないと思う。
「ぐえぇぇ!!!マズいマズいマズいマズい!もっとボス向きなものが来ないと本当にマズいよ!お願い!来い来い来い来い来い来い!」
私は必死に良いモンスターが出てくるように祈る。
それでも次に出てくるのは罠。そしてその次はフィールド、そしてまた罠と私の精神へと負担をかけてくる。
私の石はボスになりそうなものを得られないまま減り続け、
「うわぁ。これで最後。これで本当に最後の11連だよ!本当にここで出てくれないと困るから!頼むよ本当に!私石余ってもおまけの付く11連しか回すつもりないからね!本当にこれで最後だからね!頼むよ!!」
誰に頼んでるのか分からないけど、泣いても笑ってもこれが最後。
ここでレアなモンスターを引くしかないわけで、私はこの11連の最後に出てくるレア枠を狙って、
「って、ん?最初から何か………」
完全に最後のレア枠だけしか狙ってなかったから、ちょっと驚かされる。
私の引いた11連の最初に、レアな何かがやってきて、
「え?来た?これモンスターだよね?……………や、やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」