第七十七刻 魔族激突 拘束
気持ちが悪い…
頭は痛み、地面が揺れているような感覚、酒を飲み過ぎた次の日に近いそんな感覚。
霞む目を開ける、埃っぽい。
ジメジメした陰気な場所だ。
「ここは…。そうだ、アイツは?」
手が動かない、俺の手は地面に雑に打ち付けられた手錠に繋がれていた。
(思い出せ、ゲルムに突っ込んでそのまま黒い渦に吸い込まれて…)
思い出そうとすると頭に痛みが走る、記憶の消失。
ここにどうやって来たのか、誰に囚われたのか何も覚えていない。
コツコツと響く足音、数は一人。
「おぉ!起きたな大丈夫か?お前。」
声の主は先程まで殺し合いをしていたゲルムだった。
「最悪の気分だ、記憶は抜けてるし酔ったように気持ちが悪い。」
「ハハハッ!毒吐けるくらいだ大丈夫そうだな!
待ってろレイナスを呼ぶ。」
「待て!俺をどうするつもりだ!」
俺の声も聞かずにゲルムは去った。
(これから始まるのは…拷問だよな普通。
敵の捕虜になった者がされることは…)
「まだ死ねない、我に宿りし精霊よ…」
身体強化で鎖を破壊しようと詠唱を始めたその時、頭の中に声が流れ込んで来た。
(そんな焦らないで、あの人いい人!)
聞き覚えの無い声、勿論周りには誰もいない。
わけも分からず周りを見回しているとゲルムが戻ってきた。
「レイナス、オレ説明下手だからコイツに話してやってくれよ。」
「ん……分かった。」
あの時火の槍を打ってきた黒い包帯の女。
彼女は俺の前で立ち止まる。
「話がしたい、抵抗しない?」
「拷問されないなら抵抗はしないさ。」
「それはない、非効率的。」
そう言うと彼女は手錠に魔力を流し拘束を解いた。
「ずいぶんあっさりだな、逃げ出すかもしれないんだぞ。」
「大丈夫、その心配はしてない。
私はレイナス、あなたは?」
「ふっ、そうかよ。俺はセス。」
まるで絶対に逃げられないというような反応だった。
「セス、なんで私達を阻んだ?」
「何故ってお前達が攻めてきたからだろう。」
「……この前の先行隊を殺したのもお前達か?」
「あぁ俺達の部隊と勇者だ。」
そう言うとレイナスは黙った。
表情は変わらないが滲み出る怒りの感情。
「代行者…また奴に同胞が…」
「やっぱ先行隊は奴が絡んでたか。」
側で聞いていたゲルムが呟く。
「代行者?何だそれは勇者じゃないのか?」
「勇者?誰が決めた、神を見た者がいるのか。」
強い口調で言い返すゲルム。
「だって神紋が出て…」
エヴァンは王都に連れて行かれ神紋を持つ勇者だと任命されたはずだ。
「そんなもの奴らの隠れ蓑だ。」
彼は吐き捨てるように言った。
「隠れ蓑だと!?そんなのお前ら魔族が適当言ってるだけだろうが!」
意味が分からずついに大声を上げる。
「魔族……そう見えるの?」
そう言うとレイナスは小声で呟く。
シャイン。暗かった部屋が明るく照らされる。
そこに居たのは変わらず黒い包帯で身を包んだレイナスとどこにでもいるような青年の姿。
俺の知る魔族はどこにも居ない。
「は?……お前誰だ?」
「今まで話ししてた相手も忘れる程記憶抜けてるのかよ、傑作だなセス。」
吹き出し大笑いする青年は間違い無くゲルムの声だった。
読んで頂きありがとうございます。
毎日2〜3話投稿出来るように頑張ります!
初投稿なので右も左も分かっておりません。
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