炎の海にsink 溺れてくペシミスト
アスファルトの隘路を抜けると、雑草が茂る開けた場所に出た。勇利が「ここだ」と叫ぶとエリーザは頷き、停車した。
僕と勇利は下車すると、カエルの合唱があちこちに、沼だ。
その上には小さな丘があり、背の低い緑色の草に囲まれる形で建つ、家というよりは納屋かある。
そして、納屋の隣に停まっている不審な黒い軽自動車。
「母の車だっ!」
勇利の声が聞こえた後、納屋をにらみつけると、一階の窓から長い黒髪の初老メイドがこちらを訝しげに見つめている。
一方、勇利も納屋をしかめっ面で眺めている。
先に開口したのは、勇利の方だ。
「母さん、なんで放火なんてバカなことをしたんだ? おかげで、ウチにまで警察が来て迷惑だったんだぞっ」
家政婦は目の下にクマ、やつれ顔なのに恍惚そうな笑みを浮かべ、
「そう、大変だったわねぇ。でも、私も大変だったのよ。これ、木中家から奪ったお金、一千万!」
家政婦はジェラルミンケースを両手で抱え、見せつけるように胸元に据えて開けた。
「このお金さえあれば利息も払える! ……ようやく、綺麗な体になれるのよ。この私が、プライドをねじ曲げてまで木中の小娘の下で働いて、完済したのに、あの男は利息までつけやがってぇええっ!!」
「何を言ってるんだ、母さん! それは木中さんのお金だろ」
「あなたこそ何を言ってるの? このっ、お金を見なさいよぉっ。エヘヘェッ、また、苦しかった借金生活に戻りたいのぉ?」
「い、いや、戻りたくはない……。思い出すだけでこの傷がうずく……。だが、罪をこれ以上重ねられても迷惑だっ!」
「エヘェッ、このお金がないと戻るのよ……。あの頃にっ! ウフフッ」
不敵に笑う家政婦。勇利はポケットに手を入れ、スタンガンを取り出してスイッチオン! 青白い電流がほとばしっている。
「罪をこれ以上重ねるなっ。こっちにもしわよせがきてウザいんだよ!」
「あんたもバカねぇ。これでウチが助かるならいいじゃない。なくて苦しい思いをするなら、奪ってしまうまで! ウザいなんて言われる筋合いはないよっ。この青二才がっ!」
「いいや、ウザいんだよ! 罪を重ね続けるあんたが。あんたは外道だっ!」
「なんとでも言いなさい」
膝をつき、へたりこむ勇利。目を大きくつぶると吐息のように言葉を紡いだ。
「あんたは、外道だ。あんたは、外道……。でも嫌いになれない……。俺の母親。だからウザいんだよ。もう、悪いことはやめてくれよ……」
それは、貧弱そうに見えて、へそ曲がりな勇利が見せた涙だった。普段は皮肉屋な彼でも、僕は弱いと思った。同時に、優しいとも思った。
人間は涙を流すと、こうも弱くて優しく見えるものなのか。しかし、鬼ババな家政婦は火炎ビンをこちらに投げてきた。
地面にぶつかって草が引火! 近くにあったエリーザの車が炎に包まれた。
「危ないっ、伏せて!」
エリーザが叫ぶと同時に車が爆発、猛火が周囲に広がる!
車内にはエリーザとこりすがいた。猛火で何も見えず、二人の安否は不明だ……。
不安で僕はまごついている。無力だ。
こんなときにもマイナス思考になっている自分がどうしようもなく嫌い。どうせ、こりすを助けられなかったから、スクラップだ……。




