第108話:放課後の呼び出し
キーンコーンカーンコーン――。
ついに放課後を告げるチャイルが鳴った。クラスの男子たちが一喜一憂しながら下校していく中、蓮はあえてゆっくりと荷物をまとめていた。
すると、隣の席の真白が、蓮のノートの端をツンツンと叩いた。
「蓮くん、ちょっと一緒に帰らない? 公園に寄りたいんだけど」
(きた……! 陸の作戦を実行するときだ!)
蓮はあえて真白の顔を見ず、気だるそうな声を意識して作った。
「公園? べ、別にいいけど。なんか用事でもあるの?」
「うん、ちょっとね」
二人は学校を出て、いつもの公園へと向かう。2月の風は相変わらず冷たく、二人の距離は自然と少し近くなる。
公園のベンチに座ると、真白はカバンから、丁寧にラッピングされた小さな袋を取り出した。
「はい、蓮くん。これ、約束のやつ」
目の前に差し出された本命のチョコ。蓮は心臓の暴走を必死に抑え込み、冷淡を装って言った。
「あ、これチョコ? ありがとう。そういえば今日、バレンタインだっけ。すっかり忘れてたよ」
完璧な演技のはずだった。真白が「えっ」と驚いて照れるのを待った。
しかし、真白はしばらく蓮の顔を見つめた後、クスッと小さく笑った。
「そっか。蓮くん、忘れてたんだ。……じゃあ、これ、渡すのやめよっかな」
真白はチョコをカバンに戻そうとする。
「え!? あ、いや! ちょっと待って!」
慌てて真白の手首を掴んでしまった蓮。その瞬間、真白は満面の笑みを浮かべた。
「あはは! 忘れてたなんて嘘でしょ? 手、すごく熱いよ?」
「う……あ……!」
陸の作戦は、真白の圧倒的な観察力の前で、1分ともたずに完全崩壊してしまった。




