ノイズとは
~第一階層~
「ッハハ!」
ライアーは両手のダガーを巧みに用いてルーツに反撃を与えまいと常に攻撃の手を緩めずに、武器を振り回す。
「ぬぅ…」
ルーツは籠手に装備した小楯で防御するが、盾から伝わる衝撃でその両腕に相当の負担をかけていた。
(あのユーレスという男はあの二人が押さえている。だからといって変に加勢しても相手が二人の時に対複数の戦法があってもおかしくない。となるとこのまま合流を難しくするため、この空間の端に追い込むかわざと追い込まれるかのどちらだろう)
「なに、考え事してるんだよ。じいさんっ!」
「痛ぅっ!」
ライアーのダガーは使い手と相性がいい。素早さが売りのため力自慢の大剣や弓などの両手が塞がる武器よりも、攻撃力が弱い分、回避行動や防御その他の複雑な行動も同時に行うことができる。
対してルーツが使う武器は大型ハンマー、魔法を組み込んで持ち手の回転式レバーを捻る事で炎、水、氷、雷、風、地、光、闇の8種の魔法効果を付与できるルーツ自身の戦いに合う特注品だ。
「…促進結審っ!」
ルーツがハンマーを叩きつけると床にヒビが割れそのヒビから火柱が上がる。
「うおっ!?熱つっ!痛い痛い!」
ライアーは痛がるそぶりを見せるが、火柱が上がって受けた場所は左足をかすめた程度、魔神軍の中でもトップクラスの攻撃力を持っていてもあれだけで大したダメージになっていないことを知っていた。
「じいさん、よくもやってくれたな、もういい、遊びはもういいや、足止めが目的だったが、そんな事どうでもいい。全力で潰す」
そう言うとライアーは手を上に上げる。
「鯨軍即爆」
そう言うと階層ごと水であふれかえり、その水は形を変えてクジラのような形になり、ルーツを飲み込もうと、その大きな口を開く。
「ぬうんっ!!」
即座に付与効果を氷に変えて、凍らす、一瞬にしてクジラの形をした水は凍り付き、行動を停止した…ように思えた。
ピシッと亀裂が入り、破裂すると同時に小型のクジラと同じような水が、大きな壁のように迫ってくる。
ハンマーを振り回して、応戦するが、凍らせて砕けば砕くほど、その中から新しいクジラが生まれ、取り囲んでいく、このクジラはただ、形がクジラなのではなく常に圧力を生み出しており、押し潰す事も強行突破しようとも、水圧で溺死させることも出来る、攻守両用の魔法
「さぁ!圧死、溺死どちらか選びな!もし、それが嫌なら自害でもいいよ!やっぱり弱者は死に近付いた時ほど美しい!さぁ!見せろ!絶望を抱きながら、死んでい…」
すると、クジラの渦の中から、一匹のクジラがライアー目掛けて脇腹を貫いた。
「…がっ!…あ、あぁ…?なんだよ…これ…」
その他のクジラも一匹、また一匹とライアーの身体を食い尽くすような勢いで飛びかかる。
「少し、慢心が過ぎたようですな」
「じ、じいさん…お前…なにを…」
「確かに、我はその魔法を甘く見ておりました、しかし、あれだけ多く増殖したという事は、逆に一匹一匹は大したことないという事、そこで使ったのが地と雷、地で鉄分を多く含んだ鉄塊を多くぶつけた、一瞬で鉄塊は砕けましたが何回も当てれば水は鉄分が溶け込んだ水になる、つまり磁力を帯びるようになった。そして…今まで増えたクジラ全てが鉄分を含み、貴方を飲み込んだら、どうなりますかね?」
「ふ、ふざけん…なっ!」
ライアーはその場から飛びのき魔法で水柱を出しながら、ユーレスのもとに向かう。
「待てっ!」
「ユーレスっ!手ぇ貸せ!あの野郎を始末するぞ!」
ライアーはユーレスに怒鳴り散らす。
「…ライアー、私達の目的はご存知ですよね」
「あぁ?天使を呼ぶんだろ?それが何だって言うんだ。預言者サマの理想の為に…」
「そのために我々は奏でる福音とならなくてはならない…ですが」
ユーレスは槍でライアーの胸を貫いた。
「ゆ、ユーレス、てめぇ…!」
「私達は福音だった。しかし、もうそうではなくなった…預言者は私のお仕えするものではない私がお仕えするのは天使様ただ一人、あなたはただの木偶人形だった。福音を歪ますノイズだったんだ。私も貴方も、しかし、最後くらいは銅鑼の音くらい奏でさせてあげますよ」
ユーレスはゴソゴソとライアーの傷口に何かを仕込むと三人に向けてライアーの遺体を投げる。
ライアーの遺体は三人の間をすり抜けて、エリアの中央に投げ捨てるとそこから流れ出る血が広がり、ユーレスとライアーの周りに魔法陣が浮かび上がる。
「っ!自爆魔法だ!!」
「いけないっ!」
「おねぇちゃん!!」
その後、爆音が、その場全体に鳴り響く。
次回3月29日月曜日予定




