旅立ちの餞別
魔法陣破壊が終わった後、詰所に戻った俺たちは、それぞれどの様に壊したかで自慢し合っていた。
「そこで、槍を取り出し一息に突き刺して亀裂が一気に広がり…」
「コアさえ見つければ後は小型爆弾でフッ飛ばせば…」
「アイスランスで簡単に…」
その自慢を聞きながら一緒に帰ってきたギガス自警団の皆さんは机にうつ伏せになりながら、目から光を完全に失っていた。
「…俺たちがやっていた苦労と、努力って…何だったんだろう」
「まぁ、それだけ世界は広いってことですよ」
「っはは何ですかそれ、慰めにもなっていないんですけど」
「こっちにとっては、それよりも、約束通り、情報をもらいたいんですけど」
「あぁ、そうでしたね。といっても大した情報になるかどうか…」
ゴスペルの集団の名前は広まっていないと思い子供や怪しい集団、預言者などの核心に迫る部分は一部ぼかしたり、脚色しながら心当たりがないか聞くと、少し困り顔になっていく。
「その手掛かりだけじゃ、流石に難しいですね。交易が盛んだったころはツアー目的にここに来る人も少なくなかった。誘拐犯だとしても、いちいちツアー参加者に親子似ている似ていないなどと確認すらしませんもの」
「でも、まったく心当たりがないわけではないのが、わたし達自警団です」
「というと?」
「話を聞く限り、あなたたちが追っているその違法カルト集団は恐らく焦っている状態です。もしかしたら魔法陣もあなたたちを足止めする為の苦し紛れ、だとすると奴らが向かっている先は…」
地図を取り出し、この街から結構離れた場所を指す。
「ここ、「ロランド」ではないでしょうか?」
「かなり離れた上にここは集落じゃないのか?ここより、かなり小さいところだが…」
「確かに、そういう所ですが、ここはかなり昔からある伝統集落とでも言うべきでしょうか、かなり離れた集落からも村長や市長がわざわざ足を運ぶほどです。情報としては隠れ場所やカルト集団がやろうとしている儀式に最適な場所も聞き出せる可能性は十二分にあり得ます」
「確かに、それなら今度こそ足取りをつかめるかもしれない…だが、あいつらもだが、そう簡単に教えてくれるだろうか?伝統というのはそれなりに魅力はあるがよそ者に対して冷たいイメージがあるんだが…」
「確かに、そのイメージもあるでしょう。しかし、それ以上に、他の大陸の情報について飢えていると言ってもいいでしょう。そこで、等価交換を持ち込むのはいかがでしょうか?争いの火種というよりはあなた達が乗ってきた船、荷台を少々拝見させていただきました。見たことのない乗り物、果物そのどれもが私たちにとってとても魅力的であり価値があるものでした。それを交換で情報を聞き出せるでしょう」
「なるほど、では次の質問だが、そこまで行くのには時間もかかるだろう整備されている道もあるかどうか分からない。車やバギーなどの乗り物もあるが道が狭かったり進むのに不便な土地もあるだろう」
「そうですね…そういえば、この街から皆さんが来た門の反対側の方角に整備された道から外れるんですが、坑道があったような…使われてはいないもののトロッコもそのままあったはず…それを使えば乗り物の速度にもよりますが、二日でつけるでしょう。…改めて計算すると滅茶苦茶早いな…我が団員にもこれくらいの戦力を持つ人材が欲しい」
「あげないよ」
「それは残念です」
ねだればもらえるようなものだと思ったのか?
「しかし、そうなれば、さらにうちの待機班を減らさなきゃいけないな、でも、それだと、食料を持っていく量を増やすことになるし、だからって、少ないと流石に交換用の奴まで持つか分からないしな。生もののせいで氷まで持って行くことになるし…ギガスの皆さん、その件でも手伝って貰えませんか?お礼は魔法陣破壊の件で随分貢献したと思うのですが…」
そういうと、少し考えるような顔で何かを躊躇しているようだ。
「もちろん、それで協力したいのは山々なんですが、こちらも少し問題がありまして、あのサメ型のモンスターは徐々に疲弊しているとの報告がありまして我々自警団は日々、耐水性のスーツで奴らと戦っているんです。あなた方の力があればあのモンスターだって倒すことが出来るでしょう。
しかし、あれを倒すという事はその報告を領主様に報告しなくてはならない。魔法陣の事は我々独自に解決するべき問題で領主には報告すらしていないんです。だから、あれを倒したのなら、その事を領主には話さなくてはなりません。
あなた方の事を聞いたら、領主は全財産、いえ、全武力を使ってでもあなた方を取り込もうとするでしょう。もし、そうなったら…」
「私たちをめぐって、大陸間、いえ、世界中が私の組織をめぐって戦争が起こる…と」
「お察しの通りです。その為モンスターの人員をあなたたちに分け与える余裕がないんです。魔法陣の件から放たれた団員も元はモンスターの討伐のチームに入れてありました。自警団というメンツとしてもこれ以上の手柄を自分たちの力でやらないと…」
「…分かりました」
そういうと、懐から無線機を取り出して、特例ダイヤルをかける。
「第一及び、第二、第三親衛隊に告ぐ、有力な人材を臨時で交易都市サディーの自警団ギガスの団員に指名する。人員の選抜はレイに一任する。残った人員はロランドへ行く準備及び情報交換の食料、車の手配しろ!」
「シンシアさん、それは…」
「呆けている場合ではありませんよ。すぐに彼等は来ます。採用書類と、ハンコをすぐに用意しないと、いけないですからね。私達は今からこの街を発たなければ行けなくなりました。何故か突然現れた、この自警団に恐ろしいくらいの力を持った人たちが大勢来るんですからね」
そういうと、全員に行くぞ、というジェスチャ―をしてその場を去る。
次回1月4日月曜日予定




