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転生先は三代目魔王さまです  作者: 神坂将人
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誰かの幸せに関係する何かで

 自警団ギガスの紹介でたまたまいくつか部屋が空いている宿を借りた。従業員にギガスの名を言ったら不気味なほどの笑顔で部屋に通された。その際、二人部屋しか開いておらず、一人だけ二人部屋を独り占めできる状態だ。


 最後まで自分と誰がペアになるかという事でロザリー姉妹以外が取り合ったが、特に変なことをしないであろうマーリンを希望した。


 「…」


 一人ただ茫然と外を見る。夜だから人も少なく、街灯がただ静かに夜をぼんやり灯している。その光景はここにいる間は同じ部屋にいるのならば、毎日同じ光景が見れるだろう。


 しかし、今はその光景ではなくその空の星空を見ていた。


 いつの世界でもいつの世でも星空は変わらないように見える。キラキラと夜空を泳ぐような星は主張するように存在を証明するように光り、ずっと見ていると自分自身が夜空に吸い込まれそうだ。


 (いままで、いろんなことがあった。数え切れないほどに色々だけど、今まで死の事についてはほとんど考えたことがなかった。だけど、そのことに考えるとキリがない。死への恐れが一時でも考えるとこんなにも身が震える程の恐ろしさだとは知らなかった)


 「…生きるため…か」


 ふとそんな言葉が漏れる。初代魔王も同じ様な事を言っていたっけ、死ねばみんなに会えると思いながら死にたくないと足掻く。でも、そんな風に生にしがみつくのが人間の…いや生命の性なのかな。


 そろそろ、寝ようかと思いながらベットに就く。


 「…」


 隣ではマーリンが音もたてず静かに寝ている。


 「マーリン、起きている?」


 返事はない。


 「今から話すのはただの独り言だけど、寝ながらでもいいから聞いてくれる?」


 返事はない。


 「マーリンが英雄の武器に興味を持っているのは、やっぱり何かマーリンの生い立ちに関係しているんだよね。だけど、それを使う事に対して何か躊躇いはあるの?マーリンはさ俺がこの身体に入る前何回か色々な場所で色々な情報を集めていたけれど、それって本当は英雄の武器の事を一番知りたかったんでしょう?

 でも、俺が思うにそれがあったとしても、それが思い通りの力を持っているとは思えないんだよね。力を得るには何か対価が必要それだけでなく思い通りの力がなかったら払った対価も勿体ないって思うんだ。

 だからさ、何かに執念を持って行動するならさ、一番大切なのは何も上手くいかないという事を考えて行動することだと思うんだよね。

 戦いでも思ったことがあるんだけど、「しまった」とか「ヤバイ」とかそういうの心で言っている暇があったら、その思考している間に最良の策を弄すればいいじゃんって思うんだよね。だからこそ何も上手くいかないと思ったら、その後の事も視野も全て見る目が変わると思うから、だからさ…もっと、ほかの…うまく言えないけれど、人の幸せに関係する何かで…そうすれば、もっと自分の幸せを見つけられるかもしれないんだ。

だから、僕は立った一人の生きる者として、君を、いや、君たちの幸せを見守る存在として生きていたいんだ。その為に今は僕の目標の為に力を貸してほしいんだ」


 これだけの長い独り言を言っても返事はない。


 「…おやすみなさい」


 最後にそれだけ言ってベットに倒れ込み、舟をこぎ始め微睡に浸っていく。


 「すぅ…すぅ…」


 「…人の幸せに関係する…もっと、ほかの?」


 そんなものが、存在するのか…?


 師匠が死んでから、最初に出てきた感情は悲しさだった。数日間ずっと涙でベットを濡らして、眼が腫れるくらい泣いた。


 あの日から自分たちも死が待っているのを考えると怖くて仕方なかった。そんなある日師匠が残した古書に英雄の武器の事が書いてあった。


 数多の頭を持つ龍や、ユニコーンを従える宝石、生命を分け与え、辺りの生命力を吸い取る盾など、眉唾物だらけだったが、一つの物が特に興味を引いた。


 永遠を司る神像。これは所有するものに永遠をもたらし不滅の魂と身体を手に入れるという伝説が記してあった。

 

 その時の自分は永遠の意味など知らなかった。しかし、永遠の言葉は死を恐れていた自分の心に強く浸透していった。


 魔神軍に入ったのもそこに入れば色々な場所を訪れ、いずれ英雄の武器を手に入れられると思っていたからだ。


 しかし、いつからだろう。色々な場所や色々な人々、数え切れないほどの未知なるものに触れあえば自分の目標が陳腐に思えてしまう。


 そのことを伝えたくても伝えられずに何度も何度も辛い思いをした。魔族に与えられたのは永い永い寿命と強さそれを持て余して、ただただ、余生を過ごすだけ、それを感じているうちに自分の知らない感情が知らずの内に生まれてどんどんその感情が大きくなっていった。


 その感情は今でも分からない。だが、「人の幸せに関係する何かで…」少しだけ理解できた気がする。


 言葉だけで何かを表現するのは難しいものだ。それが、感情であろうと物であろうと、専門用語で混乱を招くだけで表現する難易度は跳ね上がる。


 そしていずれ思考を放棄してしまう。考えるのをやめてしまったら成長は出来ないとしても、意識してか無意識としてもそれはやめられないのだろう。


 でも、何度でも、何度でも悩めばいい。だって、今はまだまだ時間があるのだから。

次回12月21日月曜日予定

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