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罪状:人権停止処分  作者: あいますく
7/9

最終日 未来 前編

翌朝、電気は復旧していた。

朝食中、芥はいつにもまして怖い表情だった。

それは恐怖ではなく、きっと、決意だ。

芥は無言で立ち去った。

入れ違いになるように、永川がやってきた。

「一昨日言いましたけど、今日は研究区画へ入れませんからねー。ん?ってことは屋上も行けないな。あー失念してました。今日は倉庫整理をよろしくお願いします。」

「お、おう。」


書類整理をしていたが、手につかない。

5分ごとに時計を見ていた。

確か、生放送は8:30から。

もう9:15。始まっても良さそうだが…


プツン


電気が切れた。その後、内線で「停電が起こりました。復旧まで、暫くお待ちください。」と聞こえた。

ここから書庫まで10分。大丈夫だ。落ち着いていこう。

どうせあの部屋では電気がなければ何も見えない。

懐中電灯を貰いに行く体で進んでいく。


ちょうど書庫へ着いた頃、再び無線が流れた。

「緊急!002が脱獄した!射殺せよ!繰り返す!総員を以て002を射殺せよ!」

俺は書庫の入口から見えないように隠れた。

書庫から数人の看守が出てきた。

今しかない。


書庫に忍び込んだ。

暗がりで分からないが、恐らく人はいないだろう。

俺は急いで例の棚へ向かった。


棚をずらすと何度か動かしたのだろうか、簡単に動いた。

地面を触っていると、タイルの一つが外れて、縄ばしごがかかった空洞があった。

「これか。」

俺はそう呟くと急いで降りた。


中には俺が倉庫で見たようなファイルだらけだったが、一区画だけ明らかに厳重に保管されているファイルがあった。


ここまで目立つと逆に罠じゃないかと思うが、俺は敢えてそのファイルたちを掴み、戻った。


最後、俺は呼吸を整え、クラウチングスタートの体制をとった。

3…2…1…


俺は駆け出した。目指す先は研究区画。

手を引っ張られていたとはいえ、場所はだいたい察していた。


右、真っ直ぐ、また右に行って左…


俺がついたのはいつも外される場所だ。そこからどよめきは聞こえない。


ということは、一か八か。


俺は、診察室の方ではなく、惨たらしい実験が行われたあの部屋へ向かった。


そこでは研究員と思われる白衣の男と、あの少女。そして…

「えー、虐殺事件を起こした極道寺芥受刑者が脱獄して数分、未だ捕まっていないようです。」

カメラに向かって"事実"を報道し続けるキャスター。

ここは3階くらいの高さだが、叫びながら、飛び降りた。

「助けてくれぇぇぇぇ!!」

もちろん、助けは来なかった。

着地には成功したが、足首を軽く痛めてしまった。

「と、突然男が飛び降りてきました!どうしたのでしょう。手にはファイルを持っているようです。」

そう言いながらキャスターがカメラを従えやって来る。…が、

その前に白衣の男が血相を変えて走ってきた。

俺は白衣の男が捕まえようとしているのがわかった。

素人の組み付きは回避し、キャスターとカメラマンと、あの少女の元へ向かう。

「あ、あなたはあの時の…」

少女は涙の跡が残っていた。

「これを…見てくれ!」

息も絶え絶えに、キャスターに、ディレクターと思われる人に、ファイルを渡した。

白衣の男はファイルを見ると紅潮した顔が急激に土気色になり、

「そいつが脱獄犯だ!近づくな!」

と言い放って腰から拳銃を引き抜いた。

「な、なんだこの内容は!大スクープだ!」

ディレクターはファイルを読み漁っていた。

「完璧な証拠だ…!これだけあれば…!」

「それは真っ赤なでまかせだ!」

白衣の男は言葉を遮るように叫んだ。

「くそっ!お前だけは許さない!」

俺に再び銃口が向けられ、弾丸が放たれる。

俺は、満足していた。


もう、悔いはない。

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