第35話 見つけた答えは理屈の裏に。
何にも分からなくなって、ぐらりと眩暈がした。
何処もかしこも謎だらけの、この不思議の国。
「アリス!!」
不意に聞こえたのは、聴きなれた声。
この国に来て、最も一緒にいた、不思議の国への案内人。
「白兎さん…、」
私に、この国の情報を聞かせはしまいと、昨日私を気絶させた、彼。
それは愛故のことだろうか。そうだとしたら、きっと狂っている。
「アリス、お願いです。…帰らないで下さい…!」
白兎は、赤い瞳でこちらを見つめらがら私に駆け寄ってきた。
食堂で騒動があったことを聞いて来たのだろうか。
何も言わずに彼を見つめた。
白い兎の耳に、さらさらと揺れる銀の髪。赤い瞳は何よりも赤く、瞳に映すもの全てが真っ赤に見える。
まさに、アリスの物語の白兎。
「アリス、僕達は貴女が帰ってしまうことだけは、耐えられないのです。どうかこの国にいて下さい。どうか、アリス。御慈悲を…、」
哀しげに耳を垂らし、彼は私にそう言った。
メアリに白兎。ぎゅっと胸を掴まれたように痛む、胸の奥の罪悪感は増すばかりだった。
彼らを置いて帰ろうとする私が間違っていたのだろうか?ここにいれば、無償で愛してくれる彼ら。私を必要としているこの国の住民を置いて帰ることは、そんなにも無慈悲だろうか?
「アリスちゃん、…お願いよお…。」
ジャックさんも力無くうな垂れて、私を見ていた。
「……、」
迷う心から、答えは見つけられない。
迷子はアリスの筈なのに、私では無く不思議の国の住人である彼等のほうが、幼い迷子のような顔をしていた。
悪い人ではなくて、ただ狂っているだけなのに。彼等を置いて、迷子を捨てて帰るのは悪いこと?
私は…、本当に帰りたいのだろうか?
知りたいだけじゃないだろうか。この国の人に、私がアリスと呼ばれるその理由。この国が、私に対して隠している秘密。
―――――――そして、私が遠い昔に忘れてしまった友達、『夕子ちゃん』のことを思い出したいんじゃないのか?
本当に帰りたいんじゃなくて、帰ると脅してこの国とアリスの関係を聞き出したいだけじゃないのかな。
じゃあ、私はまだ…、帰ることはしないほうがいいのかもしれない。
「分かりました、…私はまだ、帰りません。」
今は、まだ。そんな風に、心の中で卑怯な理屈をこねた。
愛されることは心地良い。けれど隠される秘密は不快なのだ。
はい!シリアス終わり!!あはは、あんまりにシリアスな空気に私が耐えられませんよ!
あ、帰らない宣言してますけどあくまで『現在』に限っての言葉ですので。悪しからず。




