第34話 消えた記憶に繋がる不思議。
メアリの涙を見たら、ぎゅうっと胸が痛くなった。
彼女にとって私は、邪魔な恋敵のはずだ。でも、メアリは私を愛していると、言いきってくれた。
ごめんなさいと、罪悪感が首をもたげる。
そもそも、この国にとってアリスとは何なのだ。
私がアリスで。けれど、今までにもいなくなってしまったアリスがいて。
『この国の外から入って来た少女は全てアリス=リデル』
白兎が言った言葉。
「私にとって、…アリス=リデルという存在は、愛して止まない存在だ。だから、貴女が来てくれたことが嬉しくて堪らない。それは、ここに居る白兎も、この国の全国民も同じなんだ。だから、…どうか。」
クイーンの言葉。
揺れたのは、甘く粉っぽい、おもちゃみたいな林檎のコロン。
幼い私と、友達だったはずのあの子。
分からない、分からない。記憶が錯綜する。
あの子は、今何処にいる?どうして私は忘れていた?
あの子の好きだった、『夕子ちゃん』の好きだった本は――――、
「わぁ!不思議の国のアリスだぁ!!今日も読んでくれるの?」
「うん。だって夕子ちゃん、この本大好きなんでしょ?私、夕子ちゃんのこと大好きだもん。」
―――――不思議の国の、『 ア リ ス 』。
あの子と、この国が繋がっている?そんな、偶然だろうに。アリスだなんてモチーフ、どこにでも…。
でも。
「ええ。その本、実はとある女の子がかいたんですよ。」
夢図書館の、あの娘。あの言葉。
分からない、分からないよ。
「ああ、あ。」
自分の口から、無意識に唸るような音が漏れる。
「アリスちゃん…。どうしたの!?アリスちゃん!」
ジャックさんが、私に必死に声を掛けてきたのが、聞こえる。
嗚呼、彼らも悪いひとじゃないんだ。ただ、狂っているだけ。そうなのか。
でも、私は。私だって。
アリス=リデルじゃない。普通の有素利出っていう女の子なんだ。
あの子のこと、思い出したいはずなのに。




