第32話 涙と狂気と不思議の国
今日はエース君視点です。
更新遅れてゴメンよ!!では本編ドゾー。
「あは、あはははははははっ。」
虚ろに、アリスとなった少女は笑った。
頬に流れる、二筋の涙。無表情に、ただ笑う。
少しだけ紅潮し、赤くなった頬や瞼。ただそれ以外は、真っ白で。まっさらで。
黒くて長い髪が、艶やかに光り、バサリと揺れた。座ったままなのに、恐ろしい迫力で。
「そん、な………帰り、たいの?」
隣りで、ジャック様が震えた声で少女に尋ねた。
我等不思議の国の住人に取って、アリスが「帰りたい。」と言うのは、はっきり言って恐怖であると等しい。
愛する対象が居なくなるのだ。帰らせる位なら…。
殺した方が、マシだ。
ガチャリ。自然に手が、腰に隠してあるナイフに伸びた。
帰してしまう位なら。後悔する位なら。
「ッえ、エース君ッ!!」
ジャック様の、いさめる声が聞こえた。嗚呼、そうだ。まだ殺しては、いけない。
俺には、アリスを殺す権利なんて、無いから。
でも、俺はもう後悔したくない。だって、お前の時みたいに誰かに裏切られるのは嫌なんだ。
ああ、お前はどうして帰ってしまったんだ?―――佐奈。
「あははははッ!!」
狂ったように、少女が笑った。壊れたように、繰り返される笑い声。
チリチリと、体が疼いた。その少女を、鋭利なこのナイフで刺し貫きたい。そんな衝動に駆られた。
俺に刺された、歴代のアリス達は「信じられない」という顔をして、皆死んでいった。
「愛してるって言ったのに…」誰もがそう言って、責めるような顔で、死んでいった。
愛してるが故、殺したくなるんだよ。アリス。
でも、そう言ってもどのアリスにも俺達の愛は、言葉は通じなかった。
だって、アリスに取っては俺達の愛は、歪んで居るから。
――佐奈、お前も苦しんでいたのか?
俺の頭に、いつも笑顔を浮かべていた少女の顔が、一瞬幻のように蘇る。
けれどそれは本当に一瞬で、水面に映り込んだ月のように、掻き消えてしまった。
アリスが帰りたがるのも、我等が愛するが故にアリスを殺したくなるのも、真実。
狂っているのはどちらなのか。
嗚呼、けれどアリスを殺してしまったあとに、必ず後悔するのだ。
抜け殻となったアリスを抱いて。遅過ぎた愛の言葉を、囁く。愚かな住人。
抜け殻のアリスを、首だけのアリスを抱いて悦びに浸れるのは、この国の最高権威である女王様だけだ。
「愛しているから帰るな?居心地が良い?はっ、ふざけた話ですね?可笑しすぎて笑える。」
アリスは心底可笑しそうに、黒曜石のように真っ黒に輝く瞳に狂気を躍らせて言った。
「歴代のアリス=リデル…まだハッキリと教えて頂いてないのでよくは分かりませんが、彼女等にも同じような台詞を吐いたのでしょう?そんな中身の無い言葉に、喜べると思ってるんですか?」
アリスの澄んだ声は、シンとした食堂の空気を切り裂くように鋭く響く。
「ア…、あなたを愛してるのは本当よ!?中身の無い言葉なんかじゃない!ちゃんとみんな愛してる…!!」
ジャック様が、隣りで必死にアリスの心をこの国にとどめようとしていた。
けれどジャック様は、彼女の本当の名前を知らないようだった。
アリス、と呼ぼうとして慌てて止めている。
「そうですよ!!みんな、そう白兎様も、ジャック様も、エース様も…私も…、みんな貴女を愛してるからっ…!!」
そう言ったのは、メアリだった。
スカイブルーの澄んだ瞳に、うるり、と涙を溜めて必死に叫んでいた。
それを見た、アリスの表情がグラリと揺らいだ。
黒い瞳に躍らせた狂気が僅かに薄くなる。
「ッ…それでも…私は。」
今まで顔に浮かべていた、仮面のような無表情さが無くなり、辛そうに顔を歪める。
メアリは涙を浮かべながらも、真っ直ぐにアリスを見詰めた。
「それでも、私には…自分の名前も、愛してくれる人も、帰る世界も。ちゃんと、有るんです。」
帰る場所は、ここでは無い。
アリスは、そう言ったのだ。今、この場でハッキリと。
あああ、考え無しにマジ切れさせたので、こっから先どうしよう…マジで。
はいー、今日も今日とてコメ返信。
まずはワタクシの親友、異外部調査係様からー☆
ふふふ、脳みそがこの物語に占領されそうだって!!嬉しいコト言ってくれるジャマイカ!!
あー、あとSM兄弟はシリアスな話には出てこないので、しばらく出番無いかも…すんません。
あ、あと『翡翠の森』の更新頑張れよ!!後で読みにいくからなッ!!
はーい、お次は…おお、きぃな様からです!!
ああ、この前の台風凄かったっすねー。タイムリーな話題だったというのに更新遅れてゴメンナサイ…。
ええっっと、はい。とうとう利出さんがブチっと切れました。ウフフ、今後の展開どうしよーってな感じで迷ってます。
次も楽しみにしてますっ、という言葉にズキュンと来ました。私はあなたのコメント楽しみにしてるぜ!!
えーと、お次は…ああ、初めましてです。みゅう様から!!
ウフフ、物語の影響を受けるのは私も同じですよー。そういうワケでどんどんアリスの本探しちゃって下さい。
そしてなんとチェシャ猫さんと利出さんが好きキャラだとか…フフフ、作者の思惑通り!!アリガトござーい!!
ああ〜、あと余談なのですが、今日クラスの男子の一人(背小さい。S氏)が信じられないこと言いました。
「チェシャ猫ってなんだ?」
S氏!!そりゃ無いぜ!!
思わず「それは不思議の国のアリスという物語に出てくるキャラクターで…云々。」と、マジでキャラの成り立ちから役割、さらには二次創作においての扱いまで説明しそうになってしましましたよ…。
そんな私の脳みそは、もう4割程チェシャ猫に乗っ取られてます。きっと。
それでは。あ、皆様コメント有難う御座いましたー!!