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異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第三章 初代"異世界の放浪者"と過去
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第三十二話 辿り着いた世界は

お久しぶりです。

ようやく更新しました←



「…久しぶりね、時雨」


 そう言って微笑む女性…(みこと)を見て、俺は少し驚いていた。


「…ユミル、どうしてこの世界に…」


 俺がそう言ってみれば、ユミルは目を丸くする。


「え…特に意図せずやっただけだけれど……」


 …つまり、まぐれか。いや、神や精霊(おれたち)に限ってそれは無いか。となると…何か意味があってこの世界に…?

 あるとするなら……


(…………)


 …ああ、確かにある。あるが、あまりいい思い出ではない。


「それにしても…まさか貴女の先代様も来るなんて意外ね。」


「…だろうな。というか俺もついさっき会ったばかりだし。」


「そうだね…時雨。」


「あら、その程度なの!?」


 なんだかすごいわ~…と驚いている命。それはさておき。


「特に意味なくこの世界に来た…とは考えにくいな。」


「…それって、君が一緒だったから…?」


「その可能性もある」


 なんだかんだでここの世界との縁はある。…いい意味より悪い意味の方が個人的には思うが。

 とはいえ、折角着いたというのにそのまま帰るというのもどうなんだろうか。意図してないとはいえ、ユミルにも失礼だろうし。…一応、軽くは見ていくか。


「…よし。久々に行ってみるか」


「…行くって、そこの国に?」


 そう言って向こうに見える国を指差すユミル。和風建築の建物が多いということが遠目でも何となくわかる。


「ああ。…一度来たことがあるが、もう何百年も昔の話だ。変わってる方が多いだろうし…気になるからな」


 俺がそう言えばユミルは納得するように何度も小さく頷く。そうして何かを思い付いたのか、命の方に向き直る。


「…成る程…。あ、命様」


「何かしら、ユミル」


「向こうの国で、何か名物とか特産物ってありますか?」


 …何を言っているんだろう、この先代様は……。

 思わず呆れた顔を向けるが、ユミルは気にすることなく命に「どうなんですか」と聞く。…しかも、何だか嬉しそうだし。


 命はしばらくユミルを見詰めた後、吹き出した。


「ふふっ…やっぱり、あの(ヒト)の遣い達は変わり者ね」


 一頻り笑った後、いいわよ、と彼女は答えた。その時のユミルの表情ときたら…本当に嬉しそうで、目もキラキラしていた。


「じゃあ、着いてきて。私は人間達に気付かれないように姿を消していくけど、貴方達には見えるから」


 そう言って、その場でくるりと回り、魔力を纏ったのを感じた。特殊な魔力と自分の持つ神力を混ぜ合わせて“姿を消す”。この術はある意味幻覚にも近い。あまり姿を見られたくない、そういう神がよくやることだ。


 さらに、使用者が認めた相手にだけは見えるようにする、という調整も可能らしい。だから、確かに姿消しを行ったのにも関わらず、俺達の目には命の姿が見えていた。


(……何百年ぶりの街に、思い出すようなことはないだろう。それに、俺は――)


「時雨?」


 ぼんやりと考え事をしていると、命が俺の顔を覗き込んできていた。


「いや、なんでもない」


 適当にそう誤魔化す。…どうも駄目だな、ここの世界は…。普段はそんな事ないのに。

 先を行く、ユミルと命を一度見て、空を仰ぐ。


 綺麗な、青空が広がっていた。



 ◇


「さて、着いたわ!人間たちの噂話とかだけど、ここのお店の御団子、いいらしいわよー」


「(成る程…)」


 街の中。命はある店を指差しながらニコニコとしている。俺とユミルにしか命は見えていないため、ユミルは小声で返し、小さく頷く。

 そして、その店へ向かっていく。…チラッと見えた横顔は、先程見た時のように目がキラキラしていた。


「…アイツ、どんだけ食うこと好きなんだか…」


「そうねー。これで十軒目だけど…やっぱり、あの(ヒト)の遣いって何か変わっているわぁ…」


 十軒目の店で団子を注文しているユミルを見ながら、命が苦笑しながら言う。…さっきからよく聞く“あの(ヒト)”って一体何なんだ。一度周囲を確認してから、命に話しかける。


「(…なんなんだよ、その“あの(ヒト)”っていうのは)」


「あら、知らない?〝神樹の精霊王〟の事。あるいは〝大樹の神〟。」


「(神樹の…?)」


「そう。私や兄弟神である月詠と同じように、神精霊世界(ファイニア)ではない世界で役割を果たしている神の一人よ。名は“譲葉(ゆずりは)翡翠”っていうんだけど……」


 命がそこまで言った時、俺の横を一人通り過ぎて行った。

 思わず、その人物を目で追う。



 白い髪で、指先まで包帯が巻かれた少年。



 ――昔、俺が見たことのある少年によく似ていた。



「   」


 思わず、名前を呟く。


 振り返るはずなんてないのに。


 少年は振り返った。


「…あの、呼びました?」


 あの時と、同じ声で。

 あの時と同じ紫の瞳が俺を捉えた。




 そんな、ありえない



 だって、だってお前は――――




 もう、昔の人間のはずだろう?






「時雨!?」



 命の声がした。

 けど、答える気力もない。


(わからない。わからないんだ……)


 訳の分からない現実に、俺は意識を手放した。






 

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