↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第一章 鬼の子
23/43

第二十話 大天使と妖精と龍神

長い上、新キャラ追加です。

ふわり、と着地。


『……ここは?』


キラキラとした光が雨の様に降り注ぐ。その光をリヒトは見つめながら訊いてきた。


光雨(こうう)神社だ。言っとくが、すでに神精霊世界(ファイニア)……神と精霊の世界だからな。」


『わ、わかってるって!』


因みに、いつもなら光雨神社には寄らない。

理由は色々だ。←



「フラン、飛んできたら()()()とけ」


「はーい」


俺の言葉にフランは頷いた。

リヒトはというと、何のことだかわからない様だった。…まぁ、普通そうだよなぁ。



そう考えながら、境内を見渡す。


他の神々が居るところとは違い(殆どの神達は洋風の造りの建物だ。)、和風の造りになっている。"神社"と名前が付くくらいだから、鳥居もちゃんとある。


…まぁ、ここの神主というか…巫女というか…そいつはかなり洋風な服装だがな…。←


そして妙に変わったヤツでもある。


「……ん!待てぇー!」



なんて考えていると、フランが必死に何かを捕まえようと追いかけていた。

それをリヒトは首を傾げて見ていたが……まぁ、すぐにわかるだろ。うん←


「……?」


ふと、別の気配を感じる。フランが追いかけている()()()とは、また別の……


直後、何かが風を切る音が聞こえ、咄嗟に横に避けた。


さっきまで俺が立っていた所を見ると、クナイが突き刺さっていた。



「…何のつもりだ!」



気配がする所に拳を突き出す。


が。



「病み上がり相手にそれはないでしょう?」



いきなり現れたそいつに片手で受け止められた。…しかも、軽く。



「ルーシェ……」


「久しぶりね、時雨。」


そう言ってそいつは微笑んだ。長い空色と青の髪をハーフアップにした蒼瞳の少女…ルーシェ。

いや、少女ではないな……背中には純白の翼が一対ある…天使。


『シグレ……その人は?』


俺にリヒトが訊こうとしたが、ルーシェが彼に近づいていく。


「貴方がリヒト=ルーシェトスね…。」


『は、はい。』


「私はルーシェ=セレスタイト。この光雨神社の神主兼巫女であり神子です。」


サァ…と風が境内を吹き抜け、彼女の長い髪を揺らした。





「捕まえたー!」


「コラアアア!アタシを捕まえるなああああ!!」


おー。見事に雰囲気をぶち壊す声だこと。←

漸くフランはアイツを捕まえたらしく、その手の中には小さな妖精が抜け出そうと騒いでいた。


「……何なの、これ…」


そう言ったのは見慣れない金髪の少年だった。長い髪を一つに纏めており、毛先が赤色。空色のハチマキのようなものを巻き、海色の瞳で左目は前髪で隠れている少年。


「…誰だお前。」


「アンタこそ誰だよ。」




そう少年は言って睨みながら、一歩近づく。

その瞬間、強い気配を感じた。


(……何だ、この強い神力は…)


…明らかに、この少年が気配の元なんだろうけど……。多少ガタついている様にも感じられるが、そう滅多にあるような神力ではない。


多分コイツも神なんだろうけど……何の神だ…?



俺が色々考えていると、いつの間にか隣に来ていたルーシェがクスリと笑った。


「やっぱり、貴女にもわかったかしら?」


「わかった…と言えばそうだが、何の神なのかはわかんねぇな。」


そう答えると少年が目を丸くし、ルーシェを見た。


「ルーシェ……様、コイツも神なの?」


「ええ、そうよ。…ね、時雨。」


「ああ。」



俺が頷いて肯定すると、更に少年は信じられない!とでも言いたげな表情をしていた。


「ホントに…?少しだけど、人間の匂いも血の匂いもするのに…」


“匂い”?それだけで、そこまでわかんのかよ…!?

やっぱり、神力が高いヤツは……恐ろしいな、うん。←


今度は俺が驚いていると、ルーシェはまた笑った。



と思えば、その間にフランから抜け出すことに成功したらしい、人形の様な大きさの妖精が割って入ってきた。

そして、溜め息を吐きながら


「あぁ……漸く解放されたー…」


と言った。長いアクアブルーの髪と青色の瞳で、背中には透き通った羽。まさしく妖精だ。


「大丈夫か?アクア。」


「大丈夫よー……って、アタシをフランに捕まえろって言ったのは時雨なんでしょーー!?」


「だってお前、たまに鬱陶しいくらい飛び回ってる時あんだろ?人間サイズにもなれるんだから、そっちでいろよ。」


「それは急いでいるからよ!人間サイズだと都合悪くなる時もあるの!もうッ!!」


軽くからかうと妖精…アクアは頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いて拗ねてしまった。

…やっぱ、容姿も少し幼い少女だからか、性格も子供っぽいなぁ……←


『なんなんだ……この状態は…』


「それは言えてる……」


ほったらかされていたリヒトと少年がそう呟くのが耳に入った。






あの後、神社から少し離れた所にある、ルーシェ達の屋敷(和風)に移動した。

俺はと言うと、縁側で一息ついていた。かと思えば、さっきの少年がこちらを見ているのに気づく。

外見年齢はフランと同じくらいか。…気が合えばいいけど。


「…で?何なんだよ。」


「それはこっちのセリフだよ。アンタこそ何なんだよ?」


…あー。名前とか言わなければダメか。まぁ……多分この少年も神だから隠す必要はないだろうがな…。


「…霜月時雨。闇を光に変える神で"異世界の放浪者"だ。」


そう名乗ると、少年は目を丸くしていた。…なんで?


「…アンタが、"異世界の放浪者"…?」



「そうだが……。って、お前は名乗らないのかよ?」


俺がそう言うと、少年は少し不満げに名乗った。


「……八雲海瑠(カイル)。龍神で“八雲”と呼ばれてた。」


龍神か……。どうりで神力が高い訳だ。


「んで、カイル。何が言いたいんだ?」


「何って……何で時雨から人間の匂いがするのさ?」


「そりゃ元人間だから。」


「………あー…それもアンタなんだ。」


それもアンタなんだって…なんだよ←


俺がしかめていると「アクアから聞いたんだ」と答えた。…アクア、なんて言ったんだ、おい。



「…まぁいい。俺が元人間だとなんか悪いのか?」


「そうじゃない。……聞きたい事があっただけ。でも…」



「でも?」




「…きっと、アンタからはこの質問の答えは出てこないと思う。だから、聞かない。」




質問…?色々気になるが、まあ…人間云々が関わるなら、多分カイルの言う通り、答えは出ない。


神の素質があると知った時、自ら神になると迷いなく言った俺には……きっと。



「……ま、それはある意味正解だな。」


「…やっぱり。」


「おい、なんだよその目は。」


ジト目でカイルは睨んでくる。…なんなんだ、コイツ。



「……仲良くなれそう?」


「「うわっ!?ルーシェ(…様)!?」」



びっくりした…。いきなり出てくるから、俺もカイルもデカイ声あげちまったよ!…というか、気配しなかったよ、ルーシェ……!


…という、ツッコミはさておき。改めて俺はルーシェと向き合う。


「…で、来たってことは……リヒト用の"霊玉(れいぎょく)"はあった訳だな。」


「ええ。……念のため、神力測定でもしておこうかしら。」


「……ああ、あの物理か。」


「失礼ね、あれは測定法の一つよ。」


「あれがかよ……」


……まあ、アレだな……。


リヒト、頑張れ。(色んな意味で。)←







再び境内に入ると、アクアは人間サイズに変化(へんげ)して、木の小箱を手にして跪いている。


フランとカイルも大人しく黙って遠巻きから見ていた。そこに俺も混じっていたけどな。


かなり一変したことにリヒトは戸惑っていたみたいだが、ゆっくりと彼に近づくルーシェを見ると、自然に跪いた。



ルーシェは一礼し、リヒトの頭に右手をかざす。そしてその手を振り上げ、拳を作り……




ごんっ!



『いだぁっ!?』



降り下ろした。と言うか、殴った。


『な……いきなり、何が…!?』


「貴方の神力を測定しただけです。」


『測定!?あれで…!?』


まぁ、普通はそうだよなぁ……。フランとカイルもリヒトに向かって憐れみの目線を送っていた。


昔は、術やお札とか道具を色々使ってやっていたが、急にあの方法……つまり殴る方法に安定させた。

しっかし……俺もやられたことがあったが……痛い。凄い痛いよ、本当。


リヒトが若干涙目で殴られた頭を押さえているのを横目に、ルーシェはアクアの持つ箱から何かを取り出した。


蒼い石の勾玉の首飾り。


その石からは強い力を感じた。


「……霊玉…。」


カイルがそう呟く。その視線は鋭く、睨んでいた……が、どこか悲しげでもあった。


ルーシェが手にしている物に気がついたのか、リヒトは体勢を正した。

そして、その首飾りを彼に掛ける。


「リヒト=ルーシェトス、貴方に"霊玉"を授けます。」


静かにそう言い、リヒトは頷く。


それを見たルーシェは優しく微笑んだ。





儀式を終え、俺達はリヒトの元へ駆け寄ると、色々聞きたいことがある、と言いたげな表情をしながら立っていた。



『…で、"霊玉"って何なんだ?』


「"霊玉"は、俺ら神々及び精霊達の神力を安定させたりする為のアイテムだな。」


『へぇ……。じゃあ、フランのリボンに付いている緑の飾り石も…』


「"霊玉"だよ。」


服のリボンを軽くいじって、胸を張りながらフランは自慢気に言った。


『でも、時雨は付けてないよな?』



「ああ、別に常に付けていなくても構わないんだ。ただ、神に成り立てみたいなヤツには常に付けていた方が、神力も安定しやすい。」


『つまり、今のオレの場合は常に付けていた方がいいと……』


「そう言うことだ。それと、俺の"霊玉"は武器とかを仕舞っている空間にあるから、常に付けている状態でもあるぜ。」


『マジか。やっぱり凄いんだな、シグレは…』


そう言ってリヒトは頷く。

…同時に、何故か視線を感じる。振り返ると、カイルがジト目で俺を見ていた。


さっきから何なんだ、この龍神少年は…



「カーイールー!」


「うわ!?なんだよ、いきなり!」


お。ナイス、フラン!←

ニコニコしながらフランはカイルの腕を引っ張り、屋敷の方に連れて行ってしまった。その向こうからアクアの声も聞こえる。多分、遊びたいから連れて行ったんだろう。


それと入れ替わるように、今度はルーシェがやって来た。


「さて、リヒトには修行してもらわなくてはならないわね。」


『修行?』


リヒトが首を傾げるとルーシェは頷き、答えた。


「ええ。貴方は最近神体を得たばかりだと聞いたわ。だから、神力の安定や能力の強化の為にもこの神社で修行してもらいます。」


霊玉を貰っただけでは意味がないからね、と続けた。


「それと、貴方の"声"も……ね?」


『!』


「どうにかしたいでしょう?なら、私の所に来なさいな。()()()()さん」


いたずらっぽい笑みを浮かべながらルーシェは言う。

…確かに、リヒトは"リヒトの声"を封じた石を壊したから。状況が状況だったからな……


そのせいで、声はもう戻らないと思っていたが…

リアンとの別れ際にリヒトは声を発した。完全ではなかったものの、あれは奇跡としか言い様がない。


となれば……


「上手くいけば、取り戻せるかもな。リヒト」


「それに、レウスの霊薬や神薬を使えば……可能性はかなり上がると思うわ。」


…あの悪趣味持ちの水と海の神兼薬屋やってるレウス、ねぇ……

まぁ、レウス本人はかなりアレだが、薬の効果は本物だからな…。


リヒトは暫く驚いた表情のままだったが、やがて頷いた。


『…やります。それに、オレは神様になれると知ってからは…神様になりたいと思っていますから。』


もう、誰も傷付けないように。

もう、誰かを不幸にしないように。


『誤った力を得ないように……お願いします、修行させて下さい。』


そう言って、深く礼をするリヒト。


それを見てルーシェは頷き、微笑んだ。


「よかった、貴方の決心も聞けて。」


修行は明日から行います、とルーシェはリヒトに告げると彼は大きく頷いた。


「但し、神見習いとしての修行だけじゃありませんからね。掃除、洗濯その他諸々、雑用もしてもらいます。」


『え?あ、はい!』


…恐るべし、ルーシェ式の修行。←


でも、リヒトはどこか嬉しそうな表情をしていた。






…そうだ。


「なぁ、ルーシェ。カイルって一体何なんだよ?俺が反撃しようとした時、『病み上がり相手に…』って言ってたし…」


「病み上がり相手に、はそのままの意味よ。」


「何で病み上がり…?」


俺がそう言いかけたとき、カイルがこちらに向かってくるのが見えた。


「カイル…」


「……時雨、だっけ。」


「ああ。」


相変わらず、俺を見るときは必ずと言っても言い程ジト目だ。


「…やっぱり、わからない。」


「何が?…と言うか、お前…霊玉は持ってないのか?」


霊玉を持つ神や精霊からは、僅かにだが気配が異なる。

でも、カイルからはその気配を感じない。


カイルは背を向けながら答えた。



「ないよ。人間に壊されちゃってね。」




吐き捨てるようにそう言うと、フランとアクアが呼ぶ声がして、そちらにカイルは駆け出した。





「壊された…?人間に…?」


「ええ、そうなのよ。だから今、彼の霊玉は修復中よ。そんなに時間はかからないと思うけど……」


ルーシェは一度言葉を切り、カイルが向かった方を見詰めた。

その目はどこか悲しげで、でも鋭く射抜く様だ。



「彼が人間を信じられるようになるまでは、霊玉を返す事はしないわ。」




正直、ルーシェの言葉に俺は驚いた。リヒトを見ると、彼も同じように驚いていた。


『それは、どうして…』


「…話は長くなるわ。それでもいい?」


そう言うルーシェの表情は明るいものではなかった。


一体、あの龍神少年に何があったのか。

俺とリヒトは頷き、話を聞くことにした。



カイルは一体なんなのやら…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。