表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第一章 鬼の子
22/43

第十九話 夕暮れと別れ


『し…シグレ…!?』



なんで生きてるんだ?とでも言いたげな表情をしているリヒトを横目に、俺は目の前の青年にニヤリと笑いかけた。


「どうだ?まだやるか?」


「っ……!」


青年は今までの表情を無くし、悔しそうに顔を歪めた。


……そもそも、どうして俺が()()()()()のかが理解できないようだ。


…流石にサラっと「不老不死」であることを明かすのはまずい。そうだな…


「…リヒトか…!」


あれま。勝手に自己簡潔したよ、こいつ←


でも、そうした方がいいかもな……

まあ、それでもしもリヒトを狙うようであれば…



俺は容赦しない。



「ああ。さっき、お前をブッ飛ばした時の術の力でな。」


「このっ…」


「おっと、動くなよ?今度はお前が死ぬ番になるぜ?」


そう言いながら、更に刀を青年の首に近づける。少しでも動けば切れてしまいそうな距離だ。


「…フン…ボクに情けをかけるの?」


「…ただの気まぐれさ。」


「殺さなかったこと、後で後悔するよ?」


明らかに窮地であるのに青年は笑った。


……「狂気」のせいか。そうじゃなきゃ、こんな状態で笑える訳がない。




それに……



俺が意識を取り戻したのは殺されて数分後。


その時、会話が聞こえてきた。



―…「いいよ?別に逃げたって。……でもねー、キミが逃げれば()()()()()は水の泡。それじゃあ困るんだよね〜」



()()()()()



それが妙に気になる。というか、何か…引っ掛かるんだ。



その“計画”を今コイツを尋問した所で、素直に吐くとは思えない。


だから、()()殺さない。



「別にいいさ。次に会った時にトドメを刺せばいいだけだからな。」


「へぇ……それ本当に出来るかな?」


すっと刀を離すと青年は立ち上がり、懐からお札を出しながら術式を展開した。


同時に姿が変わる。


黒い髪に赤と黄色の瞳。そして真っ白な肌。

黒系の服と赤いスカーフを巻いた青年。



恐らく、これが本来の姿だろう。


「……じゃあね。憎たらしい()()さん」



そう言いお札から黒い靄が現れ、青年を包み込むと一瞬にして消えた。


黒い靄も残さずに。




辺りには静寂が広がる。







「………」



多分、あの青年とはまた会う。そして戦う。

そんな気がした。





「ま、取り敢えず終わったな。」


色々腑に落ちないけど、街を襲ったり、リヒトやリアンを殺そうとしたアイツは去った。


あの青年の気配は完全に「この世界」から消えたからな。


終わったと言えるだろ?←



「時雨っ!よかったああー!」


「おい、フラン…」


いきなりフランが飛び付いてきた。

…まあ、仕方ないよな。俺にしか出来ないあんな方法でやれば…な。←


「…心配かけたな。」


そう言いながら、フランの頭を撫でる。


前に目をやると、リヒトがこちらに近づいてきた。


『……なんで…アンタは…でも、よかった。』


「…あんたにも心配かけたな、リヒト。」


『…ああ。』










…どのみち、アレだけ騒ぎをたてたんだ。


しかも、街の連中にはその原因は"リヒト"になっている。


本当は例の青年のせいだが、アイツは逃げたし、しかもリヒトに成り済ましていた。


となれば……リヒトはもう、此処には居られない。


そうなると、リヒトは旅に出るべきなんだろうけど……


それは多分、出来ないことだ。


理由として、言えるのは……










リヒト=ルーシェトスは人間ではない。




しかも、




俺らと同じ存在であるからだ。



青年の“計画”が何なのかは知らん。だが、何故リヒトを使ったのか?


恐らく、リヒトの"力"が熟すのを待っていたからだと思う。


その"力"は“計画”の為には必要なモノの一つ。だからこそ、待っていたんだろう。


あの足枷は"力"を溜めるために必要なモノ。

でも、フランが解いてしまったことにより、リヒトの"力"は「リヒト自身」を覚醒させてしまったんだろう。



今のリヒトは"神体"を得てしまっている。



それだけはハッキリわかる。



なんせ、気配が俺達と同じモノになっているからな。





となると………



「リヒト、話がある。」


『……?』



俺はリヒトに俺の正体、そしてリヒトの正体を話した。



…当然、いきなりのことで当惑していたが、薄々は勘づいていたらしい。


「…だったら話は早いな。」


『と言うと…?』


「俺らの所……神々の世界に来いってことだ。」


『……え!?なんで…』


「なんでって……この世界に留まったままだと、またアイツが来るかもしれないし、それにあんたも“神力(しんりょく)”を使いこなせない。」


『“神力”…?』


「…要は神々が持つ魔力の様なものだ。それが使いこなせないと、周りに悪影響を及ぼす。また厄神扱いされるぞ?」


俺がそう言うと、リヒトは顔を強張らせた。

まあ…そうだよな。軽くトラウマなんだろうし←


「…この世界の人の為にも、お前の為にもなるんだ。だから」


一度言葉を切り、俺は手を差し出す。




「俺達と来い、リヒト」





少し戸惑いながら、リヒトは手を取った。










「それじゃ、帰るか。」



『ま…待ってくれ!』


「どうした?リヒト」


リヒトを見ると、彼はリアンの方を見ていた。



…ああ、そうか。



「…わかった。行ってこい」


俺が言うと、リヒトは軽く頭を下げながらリアンの方へ向かった。



『リアン』



声をかけると、彼女は振り返った。

その表情は、微笑んでいたがどこか悲しげだ。



「リヒト……ありがとう。」


私と"私"は貴方に救われました、と続ける。


「……正直、とても恐ろしい思いをしました。でも……貴方(リヒト)やシグレさんが来てくれた。」


そう言って、一度目を閉じた。



「リヒト……貴方には謝らなければいけませんね……。貴方は悪い人ではなかったのに、"鬼の子"などと呼び、語り継いでいたことを……」


悲しそうにリアンが話そうとすると、リヒトが彼女の頬にそっと触れた。


『…リアン。…気にするな。本当は、オレがいけなかったんだ。

あの時……オレの事なんてみんな忘れていると思って、街にいかなければ……こんなことは起きなかった。沢山の人達が傷つくことはなかったんだ…!』


でも、と……リヒトは続ける。


『……許せとは言わない。ただオレは、ちゃんと別れをしたかったんだ。』



連れ出された時、リアンがオレを庇ってくれた時。



……別れを言うことが出来なかった。



『だから、今……言いたい。』


「……ええ。」



リアンの頬から手を離し、彼女の手と自分の手を重ねた。










「……ぁ、……ありが、とう。リアン……そし、て今度こそ…さよ…なら…。」





途切れ途切れだが、リヒトはそう"言った"。



心の声なんかではなく、己の声で。



確かに、石は割れた。だが……僅かに残っていたのか、或いは奇跡なのか、それは分からない。



リアンは驚いたように目を丸くしたが、すぐに悲しげに微笑んだ。



「こちらこそ、ありがとう……リヒト。……さようなら…」





リヒトは頷き、踵を返した。


俺達の所に戻ってきて、その瞳が僅かに潤んでいるいるのに気づいたが、あえて何も言わなかった。



空を見れば覆っていた雲は晴れて、夕陽が辺りを照らしている。

その色に、ふとアイツを思い出した。



(………アイツの髪と、同じ色…か。)



街の方が騒がしい。



兵士達がこちらに向かってきているのだろう。向こうの方に兵士らしき人物が見えた。多分、アルフとアーシャもそこにいるだろう。リアンも気づいたのか、そちらに向かって走り出した。



「……今度こそ行くぞ、フラン、リヒト。」


「うん」


『…わかった』



術式を展開させ、光に包まれる中、リアンとアーシャがこちらを見ている……ような気がした。



ただ、




『ありがとう』




と、心の声は聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ