表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第一章 鬼の子
21/43

第十八話 "力"――…それは、


『フラン…!大丈夫か!?』


「……なんとか。まだ痛いけど…」


なんとか合流し、二人はいつ来てもいいように構える。


構えながら、フランはチラッとリヒトを盗み見る。


(何だったんだろう…アレは……)



例の青年に殺される、と覚悟した時、強い"魔力と似た何か"を感じた。


そして…――


――…『落とすのは鉄槌、今此処に光の鉄槌を下さん!《レイディアント・セイバー》!!』



リヒトの術が炸裂し、青年を吹っ飛ばした。


術の詠唱を心の声だけで行い、そしてあの威力の大魔法。



(……うーん…今はいいか…)



多分、あの青年はまた起き上がるだろうとフランは考え、先程の疑問を振り払った。




フランの考えは当たり、青年はゆっくりと起き上がった。


『何なんだよ…アイツは……』


リヒトは引き攣った表情を浮かべ、まるで化け物を見るような目で青年を見た。



「良く分からないけど……目的とかに対する執念のせいとか?」


或いは本当に人間じゃないとか、とフランは考えたが口にはしなかった。


彼はフランの言葉に納得したらしく、頷いた。


『…ワリと正解かも。』


「わぉ。」


少し戯けながらフランは言い、青年を見据える。






「っ………」


腕を痛めたのか、左腕を押さえたまま立ち尽くしていた。



「チャンス、かもね!」



『……ああ!』



そう話しながら二人は同時に跳躍し、青年に近づいた。



「くらえっ!《閃光突(せんこうとつ)》!」



青年に向かってフランが魔槍を閃光の如く連続で突く。

そして、最後に重い突きを入れ、青年がよろめく。


「うぐ……っ」



それを見逃さなかったフランがリヒトに向かって叫んだ。


「リヒト、このまま押し切るよ!」



『わかってる!《襲雨連牙(しゅううれんが)》!』



魔力で作った大量の短剣に、光の魔術をかけた物を幾つも放つ。


「くっ……!」



青年が闇の槍を作り上げ、それで振り払うが、防ぎ切れなかった短剣が青年を掠めていった。

それを見て、青年は何かブツブツと呟いた。


「この力、この魔力……―――リヒト=ルーシェトスっ……貴様ああああああああぁぁぁ!!」



そしていきなり声を荒らげ、幾つもの小さな闇の刃を放った。



「『!』」


二人は咄嗟に横に跳んで回避した。だが、青年の攻撃は止まない。



「っ…なんなのよ…!」


『……くっ』


リヒトとフランは背中を預けるようにして構え、彼女が詠唱を始めた。


「新月の力よ、今此処に矢となれ、刃となれ《新月ノ刃》!」


新月を思わせる球体が現れ、そこから真っ黒な刃が青年に向かって飛んでいく。



「…邪魔を、するなああああああああああああああああああああああッ!!」



自分に向かってくる刃を振り払うように、槍を振り回す。

だが、それはかなり滅茶苦茶。更には魔力も込められていたのか、たまに衝撃波が放たれ、二人が回避するのには厄介なものになった。


「…幾千の無罪の者を焼きし業火よ、その血を新たな焔となりて、包み込まん!《ブラッド・インフェルノ》!!」



そしてあの時の術を詠唱し、発動させる。二人の目の前に血のような紅の炎が広がり囲んだ。



あと少しで炎に巻かれる、というところでフランが詠唱を完成させる。



「《禁術の結界》!」



赤く輝く魔力の壁が四方から現れ、炎を防いだ。

だが、周りを見て自分達に逃げ場がないと気づき、フランが思わず呟いた。


「これじゃあ…炎を消さない限りは……」


その様子を見て、青年はニヤリと口角を上げた。


「…ははっ……あはははははっ…!まあ、結果オーライかぁ。」



青年は言いながら笑う。だが、今までとは何か雰囲気が違う。

そう二人は感じた。



そして、青年は両腕を広げながら空を仰ぎながら言った。




「…壊してやるよ……何もかも、全部…!」





その瞳には、今まで以上の狂気が渦巻いていた。


「禁術使いのお前も、リヒト=ルーシェトスも、リリア……リアンの生まれ変わりも…街も、世界も全部、全部!!」



狂ったように笑い、服の装飾品として着けていた青い石のついたアクセサリに触れる。

青年が口を開いた時、先程までの「青年の声」でなく、「リヒトの声」になっていた。


「これがあれば、ボクは"リヒト"になれるからな…!」




『オレの…声を…?いや、あの時に賢者が使っていたヤツだ…!』


リヒトの言葉にフランは目を見開いた。

そして、ある考えに辿り着く。


『計画……じゃあ、あの賢者もお前だったのか!?』


そう言うと、青年は目を細めた。


「今頃気づいたんだ。どのみち手遅れだけど。…そうそう、この石を壊そうなんていう馬鹿なことしないでよね?そんなことしたら、リヒトは本当に"声"を失うかもよ?」




『!』


思わずフランを見ると、彼女は首を横に振った。


「…もし、本当にあの石にリヒトの"声"を封じているなら……アイツが言った通り、"声"を失う確率が高いよ。」


『そんな……』


そんな二人のやり取りを見て、青年は嘲笑していた。


「さてとー…どっちを先に殺そうかなぁ?」


楽しそうに言いながら、青年は神殿の方に目を向け、口角を上げた。


「……そうだよなぁ…リヒトになりきることも出来るし、相手は非力だから……リアンの方がいいか!」


『っ!!』


青年の言葉にリヒトの顔が強張る。青年を止めようと構えたが…その目には迷いがあった。


「リヒト……」

そんなリヒトを心配するようにフランが顔を覗き込む。


「はやくしないと…!リアンが危ないよ!!」



『っ……』



暫くの沈黙。



その間も青年は、リリア……リアンを隠した場所へ近づいていく。



『オレは……―――――』



顔を上げたリヒトの瞳には、僅かにだが、強い意思の籠った光を宿していた。



『…決めたハズだ。少しでも抗ってやるって…。

助けようとした人に不幸が降りかかろうとするなら、それを振り払うって……』



自分に言い聞かせるようにそう言いながら、リヒトは一歩を踏み出した。

『だから…――――――』













物影に隠れながら、リリア改めリアンは震えていた。


理由は簡単だ。先程の会話を盗み聞きし、自分が"リアンの生まれ変わり"だと知り、ショックを受けていた。



リアン自身、薄々は気づいていたが、まさかそれがこのような大事に繋がるなんて思っていなかっただろう。



「……に、逃げなきゃ…!」


そう自分に言い聞かせるように呟き、フラフラと立ち上がり、少しでも青年から離れようとする。





だが。





「どうしたんだ?()()()…オレが怖いのか?」


瞳には狂気を湛え、不敵に笑みを浮かべる青年が、まるで小さい子供をあやすような声で言う。


それが更にリアンの恐怖心を掻き立てた。


「こっ…来ないでっ!」



恐怖に顔を強張らせる彼女を見て、青年は口角を上げた。



「怖がらなくていいんだぜ?大丈夫……―――――――

楽に死なせてやるからさ…!」



「いっ……嫌…!」


数歩後ろに下がるが、青年は更に近づいてくる。


今のリアンに逃げる程の力は恐怖のあまり、残っていない。


「…たす…けて…っ!」



震えながらリアンは目をぎゅっと瞑った。


それを見て、青年は笑い声を上げた。


「ハハハハ…!無駄だよ、今のオレに手を出したら後悔することしかないから、誰も来ねぇよ!!」



そして、青年は手にした短剣を振り上げ…――――










『させねぇッ!!』





キンッ!




「ッ!?」



甲高い金属音が響き渡り、青年の短剣は宙を舞ってから地面に落ちた。



「お前…っ!」



自分の邪魔をした人物……リヒトを睨み付けた。


だが、リヒトは短剣を弾いただけで終わらせなかった。




『もう、終わりだ……!』



そう呟きながら、短剣を青年に向かって突き出し―――――…










パリン










青年のアクセサリの石……"リヒトの声を封じた石"を壊した。


その瞬間から、"リヒトの声"から青年の声に戻った。



「な……あっ!?」


青年は一瞬、何が起きたのかわからなかっらしく、目を見開いたまま固まってしまった。


リアンの前にリヒトが守るように立ち、同じようにフランも駆け寄り、彼女の前に立った。


「ハハっ……やってくれるじゃんか、お前ら……とことん邪魔してくれるねぇ…」


その言葉に何か気づいたのか、フランが《禁術の結界》を張った、その直後。




「いい気になってんじゃねえええええええええぇぇぇぇぇぇぇッ!!」



青年の叫び声と共に、激しい闇の衝撃波が放たれる!


フランの判断で直撃は避けられたものの、今度は身動きが取れなくなってしまった。


「くっ…!」


『フラン、大丈夫か!?』


「わたしは平気。でも…結界が…ヤバイかな」


その言葉に首を傾げていると、ビシッと嫌な音が聞こえた。


見ると、赤く輝く結界にヒビが入っている。

それを見たフランが、顔を歪めた。


「この結界…長くは持たないね。」


「そんなっ…!」



『クソッ…!』



リアンは表情を強張らせ、リヒトは思わず悪態を吐く。



闇の衝撃波は収まる気配がない。このままだと、結界が崩れた瞬間、全員一気にやられてしまう。


そんな考えがよぎった。







その時。空から無数の光の刃が青年に降り注いだ。


「っあああああああああああああああああぁぁぁッ!?」


青年の悲鳴が木霊し、倒れ込む。


そして、青年の首に刀を突きつける人物が。




その人物を見て、誰もが驚愕の表情をしていた。






「う…ぐっ……な…何で、お前が…!」


その人物は口角を上げ、答えた。


「倒した、って油断してただろう?残念だったな。」









その人物は、先程()()()()ハズの時雨だった。



まさかの時雨復活!←


そろそろ一章も後半です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ