第十話 変化と帰還
神殿の外に出ると、空は薄明かるくなっていた。
じきに夜が明ける。
…ぶっちゃけ、リヒトの話を聞いていたのもあり一睡もしてない。←
流石に眠くなってきた…一度街に行って宿屋で休むか。
そう思いながら街に向かう足を速めた。
◆
街に入ると何やら騒がしかった。早朝から何なんだか…
それをスルーして宿屋に向かおうとすると、いきなり乱暴に腕を掴まれた。
「…なんだよ…」
掴んできた相手を睨むと相手…の兵士も睨み返す。
「ちょっと詰所に来い!」
「は…?何でっ…!?」
強引に手を引かれ、俺は無理矢理詰所に行く羽目になった。
――――――
詰所
「兵団長!犯人と思われる少年を確保しました!」
…少年ねぇ。俺は女だがな…男装しているだけで。←
っていうか…
「俺…なんもしてねぇぞ?」
「とぼけんな!クソガキ!!」
いきなり男に突き飛ばされ、思い切り床に叩きつけられる。
「ってて…」
俺を突き飛ばしたのはどうやら兵士とは別の…商人風の中年の男だ。俺が起き上がると慌てて兵士達が男をとめようとしているところだった。
「落ち着いてください!」
「落ち着けるか!コイツが俺の馬車を壊したんだ!!コイツが俺の魂をぶっ壊したのと同じだ!!」
男は怒鳴り散らしながら俺の胸倉を掴み殴り始めた。
「このッ!クソガキめ!!」
「っ…てめえ…」
俺が抵抗しないのをいいことに殴るのを止めない。…やられっぱなしは大嫌いなんだが…。
「こら!止めなさい!」
漸く兵士に取り押さえられ俺は解放された。
こんなんじゃ、どっちが加害者で被害者なんだか←
「…痛ぇし…俺はなんもしてねぇぞ?おっさん」
「まだシラを切るか!」
怒りで冷静な判断ができそうないと兵士は見たらしく男を別の部屋に連れていった。あー…殴られたところ痛い。←
「…で。何なんだよ……俺はホントに何もしてねえからな?」
俺は正面にいる兵団長と呼ばれていた金髪の若者を見た。
その視線に気づき、兵団長は苦笑しながら話し始める。
「すまないね。彼はいきなり馬車を旅人風の少年にバラバラに壊されてしまったから…。キミが犯人じゃないのはわかってるよ。」
「…は?」
どういうことだ?
「実を言うと、我々の隊がその場を目撃していてね…濃い灰色の髪で短い黒系の服を纏った赤い瞳の少年……それが犯人だ。」
「…なんか、俺と微妙に一致してるところがあるな…そいつ。」
つーか、なんでいきなり馬車を壊す必要があるんだ…?さっきのおっさんの様子じゃお互い面識があるわけではなさそうだし。タチの悪い腹いせとか八つ当たりにしては…やり過ぎだよな…まあ、マジギレしたミネルならやりそうだが←
「…ひょっとして、君はシグレさん?」
「え?ああ。そうだが…なんで知ってるんだ?」
所謂エスパーか?←
兵団長は笑いながら近づいて来た。
「妹のアーシャから聞いたんだ。申し遅れたけど、私はアルフ。この街の兵団長だ。」
アーシャ…?
あ。リリアの従者か。確かに金髪といい、アーシャとどことなく似ている。…やっぱ、兄妹って似るんだな。←
アルフが差し出してきた手を握り、握手をする。
「ああ。よろしくな」
◆
…まあ…なんだかんだで俺の身の潔白は証明されたし、おっさんも謝ってきたし…いいか。←
てな訳で再び街の外。
あの後、アルフから忠告された。
「まだ犯人は捕まっていない。それに…シグレさんがまた犯人扱いされるかもしれないから、街を出ていった方がいい。…暫くしたらきっと大丈夫だろうし」
ってな。
…まあ、俺も犯人扱いされるのは嫌だしな。言われた通りに俺は街を出たんだ。
それに…ある程度わかってきた事もあるしな。その為にも元の世界戻る必要がある。
出きるだけ人目につかないところに移動しようとすると例の神殿が見えた。
よく見ると…リヒトが出てきている。そして、何かを投げた。
それは、ふわりと飛び弧を描きながら俺の足元に落ちた。
…紙飛行機だ。
俺が拾い上げるとリヒトは手を振ってきた。俺も手を振るとリヒトが笑ったような気がした。そして神殿の中に戻って行った。
紙飛行機を開くと
【ありがとう】
と、ただ一文書かれていた。
でも…なんだか不思議な気持ちだ。ただー文なのに…
そう思いながらも俺は術式を展開させ、目を閉じた。
そして、光に包まれ飛ばされるような感覚
すぐに水の中に入ったような感覚がしたかと思えば…なんだか懐かしいような気がした。
目を開くと見慣れた景色
「時雨っ!」
フランがいきなり飛びついてくる。そして
「お帰り」
満面の笑顔でフランがそう言った。
「…ただいま」




