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光の奔走  作者: 如月あい
一章 光の失速
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ついていけない研修生

 幼い方だな、と、ヒラリーは憧れの美人隊長のところにいる研修生を見て思った。

 そして、これなら、どこぞの栗色の少女のようなことにはならないだろうと安心もした。

「さっき話したけど、こちらがヒラリー。今日の騒動でデュエルの隊が手一杯みたいだったから引き取ったの」

 黒髪の美女に紹介され、慌てて頭を下げる。

 今ヒラリーがいる部屋は、ルフレの隊に割り当てられている部屋で、ルフレの性格なのか、ずいぶんと仕事場にしてはきれいに片付いている。

「はじめまして。ヒラリーさん。僕はジオ・メディウムって言います」

 ヒラリーと同じく、金髪碧眼の、でも、顔立ちは幼く愛らしい少年が、名を名乗る。

 ―――メディウムって……王妃様の。

 自分の人間関係において、家柄を気にすることはないヒラリーだが、貴族令嬢として、それなりの知識は持っている。

 メディウムは現王妃の生家だ。

「はじめまして。ジオさん。今日は、よろしくお願いします」

 

 互いの自己紹介を終え、ルフレは研修を始める。

 ジオは、ヒラリーより呑み込みが早く、理解に困るヒラリーを時々助けてくれたりもした。

 途中に昼食をはさみつつ、なんだかんだで一通り、今日の分の研修を終え、ルフレがお茶でも飲みましょう、と立ち上がった時だった。

「ルフレ」

 ノックもせずに入ってきたのは、短く癖のない金髪が似合う女性だ。

「セレス。騒動は片付いたの?」

 その一言で、彼女が栗色の少女がいるところの隊長だとわかった。

「なんとか、ね。ただ、シリヤとダグラスには、教育係を引き受けてもらったけど」

「なんか、ごめん」

「……もとはと言えば、どこかの誰かさんが悪いのよ。まあ、あんたのその鈍感さも悪いのかもだけど」

「はっきり言うなんて、セレスはすごいわ」

「いいのよ。立場に甘えて嫌味を言うぐらいないとやってけないわ」

 ヒラリーには意味の分からない会話が続き、きょとんとしてしまう。ふとジオに目をやると、ジオは何故か笑いをこらえたような表情をしている。

 そして、それに気づいたセレスがジオをにらむと、ジオはわずかに頭を下げた。

「ところでセレス隊長。ルフレ隊長にお話しがあったのでは?」

 ジオは頭をあげて、どこか好奇心さえのぞかせる表情でセレスに問う。

「そうそう。シリヤをまだ借りたいって話と……」

 そこまで言って彼女は何故か口をつぐんだ。

 ルフレも不思議だったらしく、首をかしげ、そして先を促す。

「……はあ。なんで私がこんなこと……。まあいいや。ルフレは、いろいろ誤解されるから、しばらくデュエル隊長とは、話さない方がいいわ」

 一瞬、黒髪の美女が、動揺したのが、ヒラリーにもわかった。

 自分とはなしているのでなければ、ルフレを落ち着いて見つめることもできる。話していると無理だが。

「それだと私がスミアと同じく、派手にデュエルの気を引いてるみたいに聞こえるんだけど……」

 困ったように、ルフレが問うと、セレスは呆れたように首を振り、そしてもう一度、盛大な溜息をついた。

「本当、何もわかってない。あんたここに何年いるのよ? ルフレがちゃんと、気をひいてるならね、もうすでに噂は蔓延してるでしょう? というか、もう衰退してもいい時期じゃない! 違うわよ。そうじゃなくて、スミアの暴走に巻き込まれる危険性を指摘してるの! あの子はデュエル隊長と一言でも話した女全員を敵だと判定しそうな勢いなのよ!? そんなことにルフレまで巻き込まれたら、諜報科の特別部隊がこまるでしょう?!特に、ルフレの隊の乱れは、依頼を受ける私たちの隊にも迷惑なの! それに、ルフレは優秀なのに、そんなことに巻き込まれて、そもそもキャパオーバーの仕事をこなしてるあんたの仕事を増やすことになりかねないんだから」

 セレスは叱り飛ばすようにルフレに言うが、それがルフレへの彼女なりの気遣いだというのが、分かる。

 自分たちの隊にも迷惑だと、いいつつ、本当は最後に言った言葉が、彼女のいちばん言いたいことなのだろう。

 ―――セレス隊長も素晴らしい方なのね。

 ヒラリーはセレスも憧れの人リストに入れることに決めた。

「つまり、そこまで言うんだから、もう、問題は起きてるのね?」

 そんなことを考えていたから、ヒラリーは、ルフレの言葉の意味を理解しきれず、思わず眉をひそめた。

 なにがどう、つまり、なのか全く分からない。

「なるほど。僕も言われるまで気づきませんでした。さすがですね、隊長は」

 幼い顔立ちの少年、ジオが感心したようにルフレを見つめる。

 そして、ルフレはセレスを見つめ、それにつられてヒラリーもセレスを見て、その彼女が心底参ったという顔をしているのが目に入る。

「やっぱりルフレは超人よね」

「お褒めの言葉ありがとう。それで、何故か、彼女に私がデュエルに直接、交渉したことがばれたのね?」

 にこやかに、しかし、なぜだかどこか冷たい目でルフレはセレスを見据えていた。

 美人が怒ると、怖い。

 ただ、ヒラリーは、とりあえず話を半分だけ理解した。

「でも……誰が、スミアに話してしまったんでしょう?」

 半分だけ、と言ったのは、ヒラリーの疑問が、すでにその場の空気から読み取れることに、気づいていなかったからだ。

「ヒラリーさん。隊長の表情から察するに……ばらしたのはセレスさんなのでは?」

 そう、ジオに言われるまでは。


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