第8話
屋敷に着くなり、お母様にただいまも言わず、部屋で親に頼らない生き方を考えてみる。
大学進学だと、お金がかかり、親頼みになってしまい、アウトだ。
奨学生になるという選択もあるが、私はそんなに頭が良くない。いや、悪い方だ。
本屋で買ってきた「就職案内」をぱらぱらとめくっていく。
‘’デパートの販売員 給料1800セント″
″海風レストラン給仕 給料1500セント″
″道路工事塗装 日給200セント″
就職先はなくもないが、私がやりたいものと違ってくる。やはり、大学を卒業しないと、研究職や大会社への就職は難しい。
なにより、給料が安すぎる。
アパート代や引越し代、家具代も、親に払ってもらうわけにはいかない。
先立つものは金だ。カールやミンティアの生活が思い起こされる。
貧困街で生活するなんて、絶対無理だ。でも、自立は諦められない。あの二人に、負けてしまう気がする。
夕食時、私は家族に報告をすることから始めた。
「私、自立をすることにしました。行き先が決まり次第、家を出て行きます」
「何を言ってるんだ?!お前にそんなことできるわけがないだろ!」
お父様は、飲んだスープを吹きこぼし、顔を赤くして反対してくる。
「どうしたの?半年間籠っていたから、変な考えを思いついてしまったのかしら」
お母様は、おろおろとうろたえ、お父様のご機嫌を伺っている。
お母様は、いつもお父様の機嫌を損ねるのを、恐れているのだ。
「アルル、私は、あなたが決めた道なら、どんな道でも応援するわ。私は、家を出るなんて無謀なことはしないけど」
お姉様は、わりと冷静に受け入れている。なんでも自分で決めたことを行動にうつしていく、私の勝ち気な性格に慣れている。
「お前は、世間の厳しさを知らないから、そういう、無謀なことを考えつくのだ!泣きついてきても、決して助けないからな!」
お父様は、完全に怒りの糸が切れたようで、頭ごなしに反対するが、私は右から左へとお父様の説教を流していく。
考えてみたら、お父様の顔色を見て、お父様が喜ぶ道を選んできた。
女だから進学も良い顔をしなかったし、女は嫁いで家事育児をするのが良しと考えている。
「お父様は、頭でっかちです!」
どうやら私のやる気に火がついてしまったようだ。
「何?!」
「最初からできないと決めつけなくても良いと思います!」
「ぬうう!生意気な!そんな口応えをするなら、今すぐ出ていけ!」
「ええ!今すぐ出て行きますとも!」
売り言葉に買い言葉であるが、後には引けず、その場から早足に部屋に行き、簡単に荷物をまとめた。
「今まで育ててくれて、ありがとうございました!!」
私は怒りに任せて頭を下げ、お母様が引き止めるのも聞かず、家を飛び出した。
(私だって、自立していけるわ!)
家を出たからには、進むしかない!




