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第4話

「帰って!今すぐ帰って!私が、もう一発叩く前にね!」


 怒りが身体中を駆け巡り、抑えることができなかった。


 あまりにも身勝手な二人にも怒りが湧いたし、許すことができない心の狭い自分に対しても怒りが湧いた。


 カールは、あまりの私の形相にびびって、逃げ腰になって窓の外に飛び出した。


「君が怒るのはよくわかる。でも、どうか俺たちを助けてほしい。君でないと、助けられないんだ」


 カールは、それでも最後まで嘆願することを忘れなかった。


 生活が相当厳しいことが予想される。着ている服も、つぎはぎが入った、よれよれの服だった。


「二度と顔も見たくない!消えて!これ以上、しつこくすると、人を呼ぶわよ!」


 私が渾身込めて怒鳴ると、流石に尻込みをして、去っていく。


 元来た壁をつたって芝生に下りると、周りを警戒しながらも、そそくさと行ってしまう。


「はぁ」


 一気に肩の力が抜けた。


 カールはあんなに、図々しかったかしら。今まで色眼鏡で見ていたのかもしれない。


 それとも、あの女と結婚をして、生活苦もあり、変わったのだろうか。


 どちらにしても、もう私には関係ない話‥‥と言いたいのだけど!


 なんで、私が原因で、生活苦になっているのよ!?


 私に、グランデール伯爵のところに出向き、あいつらを許してやってくれなんて、とても言えない!


 これは、プライドの問題だった。


 私は結婚式当日に、花婿に逃げられた、被害者なのよ。許すなんて、できない!


 普段は使わない頭を、ぐるぐると考えを巡らせる。


 とにかく、今、カールとあの女がどのような生活苦を抱えているのか、実際のところを調べよう。


 許すか許さないかは、状況を把握してからだわ。


 お父様に大学進学の援助をお願いするのは、もう少し後にして、私は、調査を頼むために、半年ぶりに自分の部屋の扉を開けて、外に出た。


 お母様は、食事の間で、夕食の準備をしているところだった。


「まあ!アルルちゃん、部屋から出られたのね。もう大丈夫なの?」


 お母様は、私を見るなり、目を輝かせて、抱きついてくる。


「お母様、長い間、心配させてごめんなさい。アルルは、もう大丈夫です。この試練を乗り越え、先に進んでいきます」


 お母様の手をとり、にこりと笑って言った。


「ああ、良かった!さすが私の娘、強く生きていくのよ。お腹すいたの?」


 お母様は、笑顔から今度は涙ぐんでいる。


 お母様は感情的で、くるくると表情がかわる。可愛らしい人だ。


「お母様、お腹はすいてません。用事があり、少し外出してきます。夕食には戻りますね」


 お母様は外出をとても喜び、快く外に出してくれる。


 暗くなる前にと、馬車を呼びとめ、街の探偵屋へと急いだ。


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