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二日ダンジョンに潜り、一日を休養や趣味に費やす。
そんな探索周期をウィリアムに提案した次の日に、ルイは冒険者ランクが一つあがった。
「昨日から言われていたことではありますけれど、実感すると嬉しいものではありますね」
「ちなみに、普通は何日かにわけてギルドに実力を示すモンだからな。
一日で桁外れの納品しやがって」
「まぁまぁ。ちょうどハネウサギの肉は品薄だったので、お陰さまでがっぽり稼がせてもらえましたし。ルイさんのランクはあがって、私の評価もあがる。
いいことづくめじゃないですか」
普通ではないのだと釘をさしにきてくれたギルド長ピーターと、ルイの担当をしてくれている目を銭にしたクラーラがにこやかにランク昇格を祝ってくれた。
「一応これからは二日ダンジョンに潜ったら一日休養日という風に活動しようと思っていますので、無茶な納品はそこまでしない…はずです、たぶん」
「いやぁ…どうだろう?」
「えっそこ師匠が否定するんですか?」
「いやだって…集中力すごいし」
「あはは。二人のお姿が見えたら、速攻で部屋押さえるようにしますね。
どうせハチャメチャな量を納品してがっぽり稼がせていただけそうなので!」
クラーラにも遠回しに肯定されてしまった。まぁ歓迎されているようなので構わないけれど。
こんな感じで無事にルイは昇格した。
だが、ここから先の道のりが長いらしい。
「Cランク昇格条件は二つだ。
一つは冒険者としてきちんと生きてきたっていう証明。そっちの方は、今のお前らのペースで半年も続けてりゃ十分だろ。
だがもう一方の昇格条件はギルド職員との手合わせだ。
こっちが問題かもしれんな」
「別に勝つ必要はありませんが、それなりの実力を示す必要があります。
そうなるとちょっと魔法使いであるルイさんには不利かもしれませんね」
実力は折り紙つきなのですが、とクラーラが困ったように言う。
「対人戦だと、魔法使いは不利ですものね」
「ルイの場合はそこまで不利ってこともないとは思うけどな。長い詠唱をあんまり必要としないだろ?
初めてハネウサギに使った魔法を発動すれば大丈夫だとは思う。
…ただし、試験官を殺さないよう十分注意してくれ」
「…手加減はかなり難しいのですが」
やるのは試験であって殺し合いではない。だから、殺さないように相手を倒す必要があるというのはわかる。けれども、殺さず試合を続けて、しかも相手を圧倒するというのは非常に難しい。
「そこは頑張ってくれ。
あとは回避スキルのレベルをあげて、相手の攻撃が当たらないようにすれば大丈夫だ」
「それ全然大丈夫じゃありませんよね!?
試験官になるほど腕が立つ方の攻撃を回避するって、どのくらいのスキルレベルが必要になるんですか!?」
何度も言うが、ルイの身体能力は並だ。ちょっと見栄をはって並、その程度。
運良くというか、ジャナンナの貴族らしく魔法への適性はあったけれども、身体能力においては平凡極まりない。
「まぁそのためにダンジョン潜るわけだし。
頑張って肉狩ろうな!」
脳天気に明るく響くウィリアムの言葉。しかし、出来ることは地道に鍛錬を積む以外にないということはルイも理解している。
そこからの日々は、多少単調ではあったが充実していた。
ルイの回避や探知スキルもゆっくりではあるがレベルがあがり、それより更にゆっくりなペースでウィリアムの魔法のレベルも上がっていく。彼は肉を焼きたいという欲求からか、火魔法の伸びが一番良かった。
料理や付与魔法の研究も、成果はどうあれたっぷりと時間をとることができた。
お陰でスキル付与魔法もそれなりに伸びを見せ、回避や探知を底上げすることはできるようになった。もっとも、Cランク昇格にあたり、どの程度の回避スキルが必要かはやってみないとわからないので、コレで十分とは言えないのが悩みどころではあるけれど。
そんな充実した日々を過ごしていたのだが、すぐに停滞がやってきてしまった。
「そろそろ別のダンジョンに入ってみませんか?」
ルイは手慣れた様子で多くの魔物の首を吹き飛ばしながらウィリアムに声をかけた。有り体にいうと、少々マンネリ化してきたのである。今はまだ肉ダンジョンの9階で、更に深い階層に潜れば多少の変化はあるだろう。
けれど、現れる魔物はいわゆる獣系。肉ばかりドロップするのだから当然かもしれないが、戦う相手が獣特化してしまいそうなのだ。
「えー肉狩り放題なのに」
「このままだと獣狩り専門になりそうなので。獣の攻撃パターンに慣れすぎると他の相手のときに困りそうじゃないですか。
それに回避スキルの伸びが悪くなっています。
やはり別の行動パターンを持つ魔物と戦う方がよいかと思いまして」
「あーまぁ…そうだよなぁ」
「それにそろそろウィリーさんも魔法を実践で使ってみては?
火魔法ならもういけると思うんですが」
「ってことは外れダンジョンかぁ…」
「はい。外れダンジョンについても色々調べてみました。あいにく一番詳しいであろうエヴリーヌさんには会えていないんですが。
あそこは魔法使いと相性が良いんですね」
外れダンジョン、正式名称は「機械の廃墟」という。
ここは今の技術ではとうてい作れない金属の固まりが蠢くダンジョンだ。動くときに独特の音がする場合が多く接近されていることに気付きやすい。一方で、生物には無理な動きや異常な射程の攻撃があるらしく、接近に気付いて油断していると思わぬ痛手を負ってしまうのだとか。
このダンジョンは食料を求める冒険者にとってはハズレかもしれないが、魔法初級者にとっては大変勉強になる場所のようだ。生憎とエヴリーヌに話を聞くことはできなかったが、それでも断片からいろいろ推測することはできる。
「魔法の初級者であれば、あそこ以上にうってつけのものはこの街にはないでしょう?
それにあそこなら回避スキルを磨くのによいかと思いまして」
「うん、まぁありだと思う。
ただ一つだけ言っておくと、俺はあそこでは戦力にならないと思ってほしい。これは命にか関わるから忠告しておくな?」
「それは物理的な攻撃が効かないから、ですよね」
「そういうこと。
弱いやつなら金属の継ぎ目を狙ったりできるけど」
確か一層に出てくるのは鳥のようなコウモリのような形をした機械だったはずだ。機械の体が重いのか、さほど素早くはないと聞いている。練習用の動く的としてちょうどよい、とかなんとか。
「あまり深い層にまでいくつもりはないですよ。
ただ、回避の練習と無生物を探知する練習。それからウィリーさんの魔法練習になればと思いまして」
「あーまぁ肉焼いてるだけじゃだめだよなぁ。
でもなぁ…」
「まだ何か懸念が?」
ダンジョンの奥深くまで行かなければ怪我なく帰ってこられるはずだ。しかしながら、ウィリアムは妙に渋る。訝しげに見つめていれば降参したようにウィリアムが白状した。
「食えるもんドロップしないからやだなーって」
「…では、明日は機械の廃墟にいくということで」
「じゃあ不測の事態を想定して、今日はこのあと休みにしようか。その分あのダンジョンに適している付与飯作ってもらったり、俺の方でも便利そうな道具とか情報収集しておくよ」
そんな打ち合わせをしてその日は解散となった。
今エヴリーヌは例のダンジョンに泊まり込みで調査をしているらしい。そのせいで詳しい話は聞けなかったが、もしかしたら現地で会う可能性はある。詳しい話はその時に聞いてもいいし、会えなければ慎重に進むだけだ。
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明日も12時頃更新を予定しています。
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