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「え…?」
「ですから、依頼は終了いたしましたので、確認をして頂けます?」
あのあと、ルイはまず風魔法を使って辺り一面を見事なまでに除草した。魔法で刈り取ったが故に地面スレスレ、均一に刈ることができた。
そうして出来たのはうずたかく積まれた草の山。そこからはスキル付与魔法の出番だ。先程ウィリアムに丁寧に教えて貰ったお陰でルイは薬草学というスキルを覚えていた。そのスキルをアイテムボックスの中にあった飲料水に付与して飲み干す。そして、片っ端から分類していった。
最初はやはり手こずったものの、ルイにはウィリアムがついていた。ウィリアムはルイが何をしようとしているのかを察知し、補助に回ってくれたのだ。スキルレベルがあがればすぐに教えて貰い、上のレベルのスキルを付与していく。一口飲んだだけでスキルが付与されるというのは今回初めてわかったことだ。一瓶全て飲み干さなければ効果が出ないとなると、多分タイムアップになってしまっただろう。それだけ飲めばお腹がたぷたぷになってしまうからだ。
そうして、なんとか売れる草の仕分けが終わったのが、辺りが薄暗くなる頃。街の傍とはいえ魔物が出ることもあるし、人の出入りだってある。ウィリアムはそういった部分を上手く補助してくれたので、スキル付与の瞬間を誰かに見られたり襲われたりと言うことはなかった。こればかりは頭が上がらない。
そして最後の仕上げに土魔法を使ってこれでもかと地面を平らにならす。お陰で視界に入る部分は凹凸のないキレイにならされた地面になった。大分ぎっちりと固めたので雑草も生えづらいだろう。そういった魔法での荒技をやってギルドに到着したのがつい先程だ。
ルイに依頼を勧めてきた受付係を捕まえて、依頼完了の報告中である。
ちなみに、ウィリアムは何も言葉を発していないが、ルイの連れであることがわかるような位置に立っていてくれていた。何かあれば師匠として発言してくれるのだろう。
「あの、失礼ですが虚偽の申告はランクを落とす原因にもなりますよ?」
「何を根拠に虚偽の申告だとお思いになったのか聞いても?」
ルイは余裕の微笑みで答える。実際依頼は完了しているのだし、焦る理由が一つも無い。
対して相手は余程ルイが依頼達成したということが信じがたいのだろう。訝しげな表情を隠しもしない。だが、後ろにいるウィリアムが気になってそこまで強く言えない、というところだろうか。
「…依頼完了の証拠はあるのでしょうか?」
「ルイ、アレだしてやりな。十分証拠になるだろうよ」
早めに謝罪をすればよかっただろうに、彼女にそんな考えは無かったようだ。明らかに虚偽の報告だと決めてかかっている。まぁそれはルイにとってどうでもいいことだ。売られた喧嘩は倍返し、それだけの話である。
ウィリアムの言葉に頷いて、アイテムボックスの中身をぶちまけた。
(事前に一袋分ギルドに引き取って貰えてよかったわ)
中から出てきたのは付与アクセサリー…ではなく、大量の薬草だ。元々中に入っていた付与アクセサリーはギルド長であるピーターに預かって貰っている。流石にあの量の付与アクセサリーを一括まとめ買いするほど、このメグルのギルドに財力は無い。さりとて、ルイとしてもいつまでも容量がパンパンのアイテムボックスを持ち歩くつもりはなかった。
そこで、ピーターの名義でギルドの貸倉庫を借りてもらい、そこに保管することになった。保管を肩代わりしてもらう代わりに、余裕が出来たときに格安で付与アクセサリーを売る手はずになっている。
一歩間違えれば付与アクセサリーを総取りされてしまうような条件だ。ピーターは渋ったが、付与魔法が出来るルイからしてみれば総取りされたところで特に痛手はない。それに、これでギルド長からの信頼が買えるのであれば安いものだと判断した
おかげで、分別した薬草を苦も無く持ち帰ることができた。
「な、アイテムボックス!?
いえ、それ以前にこの量は…」
「ふふ。私が虚偽の報告をしているかもしれませんから、ちゃあんと一つずつ確認して下さいましね。
その前に、街道の整備の確認でしょうか?
一つずつ確認するのは大変時間がかかると思いますので」
受付とはいえギルド職員であれば、薬草学のスキルは持ち合わせているだろう。それを考えればざっと見ただけでも確認は出来るかもしれない。が、それでも別に構わない。この不当な言いがかりを撤回して、依頼完了をさせてくれれば。
が、そこに意外な人物が通りかかった。
「あい、わかった。その確認作業は一つ一つ手作業でやること。いいな、カタリナ」
「ギ、ギルド長!?」
「それと、他の職員の方はカタリナさんのお手伝いをしないようお願い申し上げます。
あ、ギルドのお金でなく自腹で冒険者さんを雇うのであれば反対はしませんよ」
「エヴリーヌさんまで!?」
どうやら受付係の女性はカタリナというらしい。ギルドトップとその妻の登場で一気に青ざめている。
「あ、残業代はつけねぇからな。
そもそもこんな細っこい嬢ちゃんにこんな短い期限で街道整備なんざ出来るわけねぇだろうが」
「で、でも…」
ここで素直に自分のやらかしを反省すれば良かったものを、彼女はまだ抵抗する。それが彼女の命運を左右した。
「なるほど、よぉくわかった。
お前さんは冒険者育成義務違反でちょっと話を聞かなきゃなんねぇようだ」
「そ、そんな!?」
「冒険者もギルド職員も、等しくギルドの不利益になるようなことはとるべからず…冒険者ギルドに関わる人間なら一番最初に教えられることです。
知らないとは言わせませんよ」
ピーターやエヴリーヌの対応を見るに、これは冒険者ギルドとしてもケジメをつけなければならない問題のようだ。確かに彼女のような人間が受付ならば安心してギルドで依頼を受けられない。
新人冒険者が自分に見合わない依頼を受けようとすることは勿論あるだろう。最終的には自己責任だが、受付係はそれを止める義務がある。冒険者を無駄に散らせることはギルドの不利益に繋がるからだ。
今回の場合止めなかったのではなく、敢えて困難な依頼を渡した。たまたまルイだったから魔法による力業で解決したものの、普通の新人女性冒険者であれば依頼は未達になったはずだ。これはギルドの信用問題に関わる。
「これは…やり過ぎました?」
ルイとしては彼女が痛い目を見てくれればそれでいい、という程度だったがよく考えれば彼女のしたことはイタズラですむことではない。個人的には減俸と上司からの叱責ぐらいかと思っていたが、物理的に痛い目も見る可能性がある。
「いやぁ…あれは庇いようがない。
ギルド職員が新人冒険者潰しに加担しただなんて背後を疑われても仕方ない案件だ」
こっそりウィリアムに聞いてみたが、彼は残念そうに首を横に振った。
「キチンとやんなきゃピーターの責任問題になる。
ま、依頼を受けたのがオマエさんで良かったよ。依頼は達成、道も意味わかんないほどにキレイになったし、薬草の在庫も潤う。
彼女はまぁ残念だがギルドの掟に従って貰うしかねぇわな。例え背後がなくても、こんな馬鹿なことをする奴がまた現れないためのケジメとして」
「最初に認めて下さればまだマシだったのでしょうけれどね」
「どうだかなぁ…。
ま、こっから先は俺らの領分じゃないし、飯食いにいこう」
「食べにと言うか…作りに、なんですけどね」
ピーターが手振りで「もう帰っていい」と示してくれたため、二人はギルドをあとにする。ギルドには女の甲高い泣き声と、それに釣られた人だかりができていた。
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