姪 to March
「行くのか、カズミ」
「ああ」
「行くな、カズミ。その数で敵の砦を攻めるなど死にに行くようなものだ。考え直してくれ」
「済まない。もう決めた事なんだ」
「どうしてもか?」
「どうしてもだ。仲間は放っておけない」
トラスト・レイニーこと、シン君が敵に捕らえられたと聞いた、その翌日。ポックル君を無理矢理脅してシン君救出ミッションを即時発動させた俺は、フレ伝手で勇士を募い王都西の陣に身を置いていました。
あ、俺は発動しただけで、実際にミッションを受理して募集をかけたのはマリリン達です。
こうした個人主催のミッションはマスコンで稼いだ戦績ポイントを使用して発生させる事が出来ます。主なミッション内容は敵国への侵攻戦です。防戦一方ではただ負けを待つだけですからね。倒されては生き返る不死鳥のようなプレイヤーだからこそ可能な裏技です。皇国もだんだんとプレイヤーの扱いに慣れてきたみたいです。非人道的とも言えなくもないんですけど~。
ミッション開始まであと約30分。集まった面々の中核はいつも大迷宮で遊んでいるフレ繋がりの人達です。この侵攻ミッションの場合、マスコンじゃないので誰でも参加出来ます。勿論、最低でも王都まで来れるようじゃないと話になりませんけどね。
サービス開始からもう半年近く経っているのに未だに港街エルファシルで出不精を決め込んでるプレイヤーも数多くいます。主に母親さんが多いですね。マイホーム効果もあるみたいです。そういう人達はまず参加出来ません。むしろそんなミッションが発生している事すら知りません。
「マリ―ベル君、今日は誘ってくれてどうもありがとう。時に、今日はカズミ君はいないのかな?」
「あ、フレイヤっち。おっはー」
「もう夜でちゅよ」
「だね。カズねぇだけど、大迷宮行かないなら今日はひたすらプチポちゃん作るって言ってたよー」
実はここにいますけどね。俺の正体を知ってるマリリンには口止めしてまっす。30日続いたら欲しい物一個買ってあげる約束してまっす。必然的に他2人の姪にも何か買うことになってますけど~。
尚、このミッションはマリリン主催という事にしてあります。俺はNPC枠で参加……という訳にはいかないので、プレイヤー枠での参加です。今までダークナイトがNPCだと思っていた人達がちょっと驚いていました。してやったり。
「血が……足りない……」
「うん、だからリーリーごめんねー。今日はフレイヤっちの血で我慢して」
「吸わせませんよ」
「我慢する……明日が、楽しみ……♪」
何だか背中がゾクゾクしちゃいます。美少女キャラさんから血を吸われるのはどことなく不思議な喜びを感じてしまうのですが、徐々に血を吸われるのを拒めなくなってるのは気がするのは何ででしょうね。魅了されちゃったかな?
「もうすぐ時間ですね。何名集まりました?」
「30人ってところですね。最低でもPTが5つ作れる計算です」
「複合PTのリーダーも決めておかないといけねぇな。リーダーはやっぱマリ嬢ちゃんか?」
「あ、リーダーはあの黒い鎧の人にもうお願いしてあるから。あと、私はフレイヤっちと組もうかな~。たぶんソロになるし」
「つーか、あの黒い奴、レイ坊と似てるよな。やっぱ呪われた口?」
「知らないっす。マスコンで機械的な命令出してくる以外で話した事がないっす。というか、話し掛けても一切話してくれないっすよ。ガン無視オンリーウルフっす」
「酔い厨かよ」
「ねぇねぇ、そんなことよりさー、これからどこいくの? もしかして王城に殴り込み?」
「謀反起こしてどうする……」
「帝國の本丸まで攻め込んで、一気にこの戦争を終わらせると私は聞きました」
「誰だそんなデマ流した奴は! 帝都までいったいどれだけ時間が掛かると思ってやがるんだよ、ボケが」
「ウズウズしちゃいます。早く人を斬りたいです。人斬りの血が騒ぎます。フフッ……」
「あ、仲間です♪」
「嫌な仲間だな、おい……」
「それで? あと来てないのはシン君だけ? 珍しいね。いつもなら5分前には必ずいるのに」
「おーい、誰かこの馬鹿を埋めてくれ。恥ずいのは俺達だが、この馬鹿を埋めた方が手間が少なくて済む」
人が寄ればカオスとは言いますが、見事に主旨が分かっていない人だらけですね。というか、マリリンとセンねぇちゃんはいったいどんなメールを送ったんだろ。フレ枠じゃなくてミッション内容を見て集まった勇士のプレイヤーさん達がちょっと引いています。
ついでに、禍々しい鎧を着てるレイ君がまるで気にした様子なく普通に笑っていることにも引き気味でっす。慣れって怖いなぁ。俺は顔を隠してるからまだ分かるけど、レイ君は顔丸出しなのに。
「じゃっじゃじゃーん。みんな集まってるね~。20時だぜ、全員しゅーごー!」
「ふるっ!」
「あ、このネタ知ってる君は大人だね! ってか、誰だよこんな夜更けに集合時間設定したの~。僕ちゃんおねむの時間だよ~」
小五月蝿い妖精が現れました。どうやら今回もポックル君が引率してくれるようです。
ちなみにメイド世界の時間で現在20時です。敵さんの所には丑三つ時に襲い掛かる予定です。つまり夜襲ですね。救出作戦ですからこれぐらいの時間帯が良いでしょう。
「お父さんが持ってるコレクションを見ただけなのに……」
「あれ、そうなの? そのお父さん、通だね」
「こらっ! あんたはまたすぐに脱線して! サッサと話を進めなさいよ!」
「そうですよ。それに小生達は不眠不休の存在ですから睡眠は必要ありません」
「うう……休みが欲しいよ~。ストレス発散したいよ~。好い加減、お姉さん担当をやめたいよ~」
どうやら今回は3大妖精全員が引率してくれるようです。姿も声も俺だけに聞こえる訳じゃないみたいです。というか、俺の担当嫌だったんだ。思いっきりノリノリだったような気がするんですけど~。
「あれ? ポックルはいつもそこにいる無口の人付きじゃなかったんすか?」
「そうだよ~」
「え? それってつまり……」
「あれ、知らなかったの? おかしいなぁ。君達って確かいっ……ぎゃああっ!」
斬り捨て御免! 人の秘密をばらそうとしちゃうお口にはチャックをしてしまいましょう。バッサリいかせて頂きました。キラーン。
「うわっ……むご」
「すげ。ダークナイトがあの剣を抜くの初めて見たぜ。余程腹に据えかねてたんだな」
「てか、中身お姉さん? うわ、なんかめっちゃ萌える」
「きっと中身はナイスバディ……しかもシャツ一枚とか、じゅるっ……」
「お姉さん人気者だね~。中身はあんなに酷いのに」
「「「えっ……」」」
あ、こら。中身の意味が違うでしょうに。性格の事ですからね。いえ、なんかそう言い直すのもすっごく落ち込みそうなんですけど……。
って、あれ? ポックル君、無傷ですか? 確か真っ二つに斬ったのに……。
「不思議に思っている方も多いようですが、ここにいる小生達は幻影であり、本体は別の所にいます。ですので死ぬ事はありません」
タイミング的にみんなが気にしたのはそこじゃないと思います。でも説明ありがとう、プッ君。
「でも痛みは本体にフィードバックしちゃうからほどほどにしてねー。さっきのはちょっとだけ痛かったかも……ぎゃああっ!」
「あ、またバッサリ。容赦ねぇ……」
「だから好い加減、話を進めなさいよ! あんた達の仲間を救い出しに行くんでしょ!」
「今回のミッションは小生達全員であなた方をサポート致します。それだけの戦績ポイントを支払われましたので」
「無駄使いもいいところね。まぁ私達はとても助かるけど」
「敵はクリューゲル山岳地帯のバルトロス砦にあり! 元は皇国の物だったんだけどねー」
「PTは……もう組んでるようね。リーダーはあなた? 嫌な予感しかしないわねぇ」
「小生も右に同じです。ですが、これが小生達のお仕事です。選り好みは出来ません」
「そう言いつつ、僕ちゃんにこのお姉さんを押し付けたのは誰だったかな~? 僕ちゃん、大変迷惑してるんですけど~? ですけど~?」
「小生の手には負えませんので。ストレスで胃がやられるのは嫌です」
「あたしも御免ね。頭の血管がプッツンしそうだから」
「うう……酷い……」
本当に酷い言われようです……そこまでかなぁ?
「それじゃ、行くわよ。この私が案内してあげるんだから感謝しなさいよね!」
ツンデレっぽい言葉を吐いてくれたピクリちゃんの後ろに続いて移動を開始致しました。時間削減のためか、一瞬で目的地に着いちゃいましたけど。いやー、移動短縮にも戦績ポイント使ってて良かったでっす。じゃないと、この数で長い道中ずっとは辛すぎますから。会話だけでなく道程も脱線しそうです。
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
「みんな着いてきてる~?」
「声が大きいですよ。ここは敵地ですのでお静かに」
「あ、そうだった。ごにょごにょ……」
「今度は小さすぎるわよ。面倒だけど私達は法術音声に切り替えましょ。あんた達は念話でOKだからね。それぐらいのサービスはしてあげるわ」
『了解っす』
『もともとPTチャットで対応する予定だったんだけどねー。ってか、法術音声と念話って同じじゃね?』
「厳密に言えば違いますね。ですが今はその説明は省かせて頂きます」
「ミッションゆーせ~~ん」
『御意』
『お……漆黒の覇者さんが命令出す以外で初めて喋ったっす』
『渋いな、おい』
『中身、本当に女性? まさか漢と書いて乙女と読むってオチじゃ……』
『やべ。想像しちまったじゃねぇか』
『血……不味そう……毒はいってそう……実は青いかも……』
なんかまた変な設定が付け加えられてしまいました。半分正解ってところが凄く悲しいです……。内面は男、外面は女。住みにくい世の中だな~。あれ、この場合ってナベさんって言うんでしたっけ?
現在、俺達は砦近くの岩陰に潜んでいます。山脈ですからね。隠れる所がたくさんあってとっても楽です。時間帯も深夜ですし、ちょっと雲がかかっているのでかなり暗いです。その暗闇を利用して手を繋いだりしてるカップルらしきプレイヤーも見えます。デートじゃないんですけど……彼等には死亡フラグが発生してるという事で納得しちゃいましょう。戦いの前にいちゃつくのは危険です。
「大きな砦だね~」
「皇国建国以前からある建造物らしいですね。何度か改修してるそうです。西にある穀倉地帯を手に入れるまでは現役だったそうです」
『それ、いつ頃の話っすか?』
「少なくともあんた達はまだ誰も産まれていないわね」
『最低でも80年以上ですか。それにしては綺麗ですね』
『……今、聞いちゃいけない事を聞いた気がするのは何でだろう』
『姉さん、気にしちゃダメよ』
『そうそう。私達にはあと80年以上の未来が待ってるんだから。20年も残ってない人達の事なんて気にしちゃダメ』
『もしかして親子3代プレイヤー?』
『フフっ、4代ですよ』
『血……まだですか……?』
『ちなみに彼女が最年長です。私の母です』
『げっ。ずっと血、血って言ってるって、まさか飯はまだかってのと同じ意味だったのかよ』
『ねぇ、まだ~? 早く斬りたいんだけど~?』
『一番下の子です』
『将来がすっごく不安だな……いや、なんか未来が見えてそうで怖い』
『あと、ついでにバラしちゃうけど、あたしはその姉ね~。ピッチピチの女子高生なんだよ~』
『女子高生の血……じゅるっ……』
『いやいや、お婆ちゃん。曾孫の血にまで食欲を感じちゃダメでしょう』
『……?』
『なんでこの4人は戦闘になると一糸乱れぬ動きが出来るんだ……特にお婆ちゃん、神秘過ぎるだろ……』
馬の耳に念仏、馬の耳に念仏。俺はな~んにも聞いてません。聞いてませんったら聞いてません。いつも抱き付いてきて首にカプッと吸い付いてくる可愛い女の子が、実はリアルでは妖怪お婆さんだったって事、ぜんぜん聞いてませんよ。うわ、背中のゾクゾクが止まりませんっ!
「ねぇ、そろそろ良いかしら? 好い加減、作戦の説明をしたいんだけど?」
『あ、どうぞっす』
「砦に突撃して玉砕! 以上!」
「それはあなたの願望ですね。作戦でもなんでもありません」
「あ、分かっちゃった? 僕ちゃん的にはそれが一番美味しいシチュエーションなんだよね~」
「確かに、早く終わってくれる事には大賛成です。ですが、それでは彼等をサポートする小生の能力を疑われてしまいます。あなたお一人でなら兎も角、小生を巻き込まないで頂きたい」
『あの……いつの間にかマリリンの姿が見えないのですが、どなたか御存知でしょうか?』
『あれ、本当っすね』
『本当でちゅね。いません』
「あの子なら、いつものように空の赤い悪魔になってるわよ」
『え? なんでっすか?』
「その理由も含めて、さっきから作戦を説明しなさいって言ってるんだけどね。ポックル、あなたが受けたミッションなんだから早く説明しなさい。それとも何かしら? 私があなたの代わりに説明しても良いの?」
「出来る事なら小生も代わりたいですね。このたびのミッションで支払われた戦績ポイントは相当なものですので、正直ポックルが羨ましいです」
「へっへ~ん。伊達に毎日苦労はしていないのだ~。代わってあげないよん。って、お姉さん、ストップストップ! メインサポーターを変えな……ぎゃあっ!」
『うわ、微塵も容赦ないっすね。メイン変えたうえに斬り殺すって、どれだけ鬼畜っすか』
「あら、私がメインサポーターで良いの? 催促したみたいで悪いわね」
『冗談じゃなくてマジなんだな。こえぇ……』
「それじゃ、早速説明を始めるわね。今回のミッションには、特別に協力者が現れてくれたわ。あそこよ、見えるかしら?」
『暗くて見えませんね……でも、言いたい事は分かりました。あの辺りにマリリンが飛んでいるのですね』
「そういうこと。そして、協力者は元第24位王位継承権の持ち主である皇国の元王女ヴァージニア・ブルージェイド・アーデル・フォン・フェネシス・ドラグニアさんよ。今はもうただの天馬騎士だけどね」
『うぉ……こんなところでそんなレア情報が発覚するとは。もっとアタックしてれば良かったぜ』
『あ~な~た~?』
『じょ、冗談だ、マイハニー』
『爺ちゃん、まじキル』
ちなみに俺は既に知ってました。隠し事は良くないって事で、勝手にヴァニーちゃんがベラベラ喋ってくれましたよ。それってアタックしてきてるって事なのかなぁ?
追加情報で、ヴァニーちゃんの名前の最後にドラグニアっていう龍っぽい名前がついてますけど、その名の通りヴァニーちゃんは龍の血を引いているそうです。ヴァニーちゃんの先祖は皇国が出来る以前にこの辺りを支配していた今は亡き小国の王族だそうです。
皇国は、建国時の謀反でその龍の血を引いた王族を捕らえて、自らの一族にも龍の血を混ぜようとしたらしいです。だけど龍の血の影響なのか、赤ちゃんを産もうとしても死産が多かったり産時に母胎が耐えきれず亡くなってしまう事が相次いだため、途中で断念したそうです。
それでも、無事に龍の血を受け継いだ子供は何人かいたそうですけど、後継者を作る段階で問題が発生するため、徐々に排斥されていったそうです。跡継ぎを作れない王は国を滅ぼす要因にしかなりませんからね。最終的にヴァニーちゃんの代で龍の血を受け継いだ王族は全員王位継承権を剥奪され、以後は皇国の騎士として飼い殺しされているそうです。
尚、龍の血を受け継いでる人が男の場合は相手方の女性が赤ちゃんを産む際に母胎が耐え切れず死ぬケースが多く、龍の血を受け継いでる人が女性の場合は死産するケースが多いそうです。前者より後者の方が総合的なダメージは少ないですけど、後者は子供を産めるのが一人しかいないため、ほとんどが前者の方法で産まれた子供だそうです。
それと、お腹を痛めて産んだ赤ちゃんが何度も死ぬのを見るのは辛く、後者の場合は自殺する人が続出したとか。ヴァニーちゃんはそんなことありませんよね? いえ、俺が父親になるかどうかは別として。
というか、俺はこっちの世界では女性キャラなので、どうやってもヴァニーちゃんとの間には子供は作れません。……あれ? なら何でヴァニーちゃんは俺にアタックしてきてるんだろ……もしかして、百合です?
いやん、そんな女性同士でなんて……いや、それはそれでありかな? じゅる……。
『あれ、なんかダークナイトが震えてるっす。夜だから冷えるんすかね~。その鎧、体寒耐熱性能は低いんっすか?』
『武者震い?』
「僕ちゃんは知ってる……その震えがいったい何なのかを……」
「あなたと彼女は付き合いが長いですからね」
「話を続けるわよ。もう貴方達も分かったと思うけど、マリーベルちゃんは作戦開始から少しして空から陽動を仕掛けてもらう事になってるの。あの子の法術は特別だからね」
『いっそいつぞやの特大隕石かましてあの砦を潰しちゃえよ』
「別に私はそれでも良いけど、今回のミッションの主旨をもう少しよく考えた方がいいわね。それだと、救出対象も一緒に潰されてミッション失敗になるけど?」
『結果的にそれでシンが捕虜から解放されるなら俺はそれでも良いっす』
『良い訳ねぇだろ。それじゃなんで俺達はここまでやってきたんだよ』
『フレンドの私達は兎も角、ミッちょん報酬目的で参加してくれた人達には悪いだろう』
「そういう事。それにもし救出対象を殺しても、ホームポイントは既に強制変更されてるから貴方達の目的は達成されないわよ。だから、あの子はあくまで陽動ね」
『分かりました。マリリンは囮ですね』
『敵にとっては悪夢にしかならないと思いますが。少なくとも注意は間違いなくマリちゃんに向かうと思います』
「それで? 僕ちゃん達は何処に引率すればいいの?」
「あんたは……さっきまでメインサポーターだったのに、なんでそんな事も知らないのよ!」
「だって今までずっとそれで大丈夫だったから~。お姉さんが何でもかんでも一人でやっちゃうから、僕ちゃん何にも仕事なかったんだもん」
「別の子に変えてもらおうかしら……こんな役立たず、早く消した方が良いわよね」
「小生も同意致します」
「うわーん、2人が虐める~。お姉さん、助け……ぎゃあっ!」
『もうそのコントは見飽きたっす。早く話を進めるっす』
『流石、悪者同士。慣れるのが早いな』
『誰が悪者っすか!?』
「いいから、話を進めるわよ。貴方達がこれから向かうのは、ここより少し南にある隠し洞窟よ。そこから入って砦地下に張り巡らせてある用水路を通り砦に侵入。つまり、敵の注意が空に向いている間に地下からコッソリ侵入して救出対象を解放するって段取りね」
『しつもーん。その隠し洞窟って、敵にも知られてるんじゃないんですか~?』
『姉さん流石』
『いよ、大統領』
『ふっふ~ん。貴方達とはここが違うのよ、ここが』
『後は胸さえあれば……可哀想に。その年で一番下の妹とはりあえるって、どんだけ~』
『うう……どうせ私はペチャパイですよ。貧乳同盟筆頭ですよ……』
「その辺は大丈夫よ。あ、あなたの胸の事じゃないからね。その隠し洞窟は、亡国の王族だけが知ってる秘密の抜け穴らしいから」
『それってつまり、元王女さまからのリークって事で良いんすか?』
「その通りよ。ヴァージニア様が特別に教えてくれた内容よ。何だか彼女、そこにいる唐変木にベタ惚れらしくてね。いつもいつも彼女にだけとても協力的なの。彼女が参戦するマスコンにヴァージニア様が毎回現れるのもそれが理由。今回のミッションも、本当は彼女が参加するものじゃないのに、何故かついてきちゃったのよ。フットワーク軽すぎ。皇国でもかなり問題視されてるみたい」
『御転婆姫っすね~』
『もうお姫様ではありませんけどね。でもその気持ち、分かります。恋する乙女は盲目』
『いや、その相手が女性ってのにはちょっと引っかかるものがあるんだが。禁断の愛かよ』
『王侯貴族にはよくある話ですね』
『よくある話なのか……ならば私のカズミ君へのこの想いは別に不思議な事ではないんでちゅね』
『あ、飛び火した……誰か後でちゃんとフォローしとけよ』
「兎に角! そういう事だから、ちゃっちゃと移動するわよ。あんた達の無駄話に付きあってたら夜が明けちゃいそうだわ」
『御意』
『おっ……本日二言目っす。今日は隕石の雨でも降りそうっすねー』
『いつも降ってますけどね』
「それじゃ、れっつらゴーなのだ~!」
『あ、それマリリンの台詞……』
という訳で、ようやく進軍を再開致しました。
余談ですが、この森へ飛ばされた瞬間に時間もドビュンと過ぎてます。既に丑三つ時を越えちゃっていました。早くしないと本当に夜明けが来てしまいそうです。
さぁ、待っててねシン君! そして一緒に夜明けのコーヒーを飲みましょう! あ、もちろんリアルででっす。本日、シン君は俺の家にお泊まり中でーす。ニヤリ。
2014/12/04 一部修正




