姪 no Minstrel
予想していた事だったが、俺が服装を変えると、姪の二人がファッションショーをした時よりも皆一斉にどよめいた。
「カズミちゃん……凄い格好ですね」
「うん……」
間近で見る事となった二人までもが驚いている。
「もういいな。戻すぞ」
「「あっ……!」」
見事にハモった二人の声を無視して、俺は役目を終えたとばかりに席に座る。2杯目の珈琲を口につけてリラックス。うん、とっても恥ずかしかったー。
「カズねぇ、いったいどんな職についたのか、見当がつかないや」
「私もです。何人か昨日今日で知り合った人達の服装を見させて頂きましたが、カズミちゃんほど煌びやかで眩しくて凄いとしか言いようのないコスプレ服貰った人は見ていません。本当に、いったいどんな職に就かれたんですか?」
「そうなのか? 俺が選んだのは、吟遊詩人なんだが」
恐らく、この職業の名前を聞けば二人も納得してくれるだろう。そんな淡い気持ちを込めて口に出す。あ、言っちゃだめだったのか?
「「「「「え」」」」」
あれ。驚く声が何重にも重なってる。
声のした方を振り向くと、聞き耳を立ててたらしい人達がこちらを見ていた。前後左右斜めの席にいた人達。その一人と視線が重なるが、すぐにそらされた。
俺、何か悪い事でもしたのだろうか?
「な、な、な……」
「?」
「何でそんな超不遇職を選んだんだよ! カズねぇの馬鹿!」
センねぇちゃんの言葉を奪い取ってマリリンが突然に怒鳴ってきた。そんな大声で人の名前を叫ぶなよ。と荒ぶる獣を窘めようとしたが。
「吟遊詩人って、メイド史上最悪最低の職じゃない! それをしかも、よりにもよって特典版IDで選ぶって……もう信じらんない!」
「「「「「あー」」」」」
そう叫んだマリリンの言葉を聞いて、更に周囲の声がハモる。あれ? なんでみんなそんな風に残念そうな顔をしてるの? というか哀れみの目で見るなよ。特にそこにいる剣士風の女の子さん。
「おねぇちゃん、ガッカリです。折角、カズミちゃんとキャッキャウフフの毎日を送れると思っていたのですが」
「……何となくこの職がやばいって事は分かったけど、説明してくれないと分からん」
そもそも俺に情報制限を強いたのは君達お二人さんだし。
「参考までに聞くけど、スキルは何選んだの?」
「んー? 近接戦闘用に短剣術、内職用に錬金術。あと、お遊び用にBGMだが」
「うわ……」
更に引かれた。まぁ、BGMは仕方ないと思っているので、そこは甘んじて受ける。
「短剣術って、誰でも取得出来る練習用じゃん。派生もないし効果も薄いし、ただのお試し用スキルだよ」
「錬金術は、中盤以降なら十分に需要はありますが、課程を飛ばしていきなり取得するものではありませんね。単独ではまず成功しませんし、何よりこの辺りだとまともな素材も取れませんから。でも、ほんの少しだけ全体効率が上がるという話ですから、長期的に見ればもしかしたら……でも、普通に考えてまだ誰も取りませんね」
「というか、BGMって何!? ただ音を鳴らすだけじゃん! しかも本人にリアル音楽的才能がないと、ただの雑音だし! しかもしかも、使っても何にも効果ないし! ただのゴミスキル! カズねぇ、いったい何しにこの世界に来たの!?」
別に何もしに来てないんだけどなぁ。連れてこられただけだしー、と言ったら流石に二人は悲しんじゃうかな?
「二人が一緒にこのゲームで遊びたいって言ってきたから、俺の方もちょっと嬉しくなってその願いを叶えたくなったから?」
「それじゃ全然叶わないよ! ただのお荷物じゃん!」
酷い言われようだな。一応、俺は請われて来た立場にあるんだけどねー。
「とりあえず、落ち着け。ほら、どーどー」
「私は馬かっ!」
「……その内、誰かの上に乗るか乗られるかしますけど」
卑猥な表現に繋がる言葉をボソッと吐いた剣士の頭を俺はペシっとかるーく叩く。決して幼女虐待じゃありませんよ? あれ、幼女っていくつまでだっけ?
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
その後の話で、吟遊詩人という職が、本当に酷い職業だという事を二人に熟々と説明された。
要約すると、こんな感じになる。
1、吟遊詩人は、レベルアップに必要な経験値が怖ろしく多い。それはもう、本当に。
2、クラスチェンジするには、どの職でも最低レベル10が必要である。
3、スキルの変更は、クラスチェンジ可能なレベルにならないと出来ない。
これだけ聞けばもう十分だった。やばいよね。
更に加えて、俺の場合は……。
4、豪華特典版はその特性上、キャラを変更出来ない。つまり、やり直し不可。
5、豪華特典版に限り、唯一チュートリアルクエストだけが、職を強制的に変更する事が出来た。だけど俺はもうそれをクリアしてしまった。
という状況になっている。豪華特典版じゃなければまだ救いがあったという事だ。ちなみに5番は別に救済措置ではないと思うけどね。学者妖精プクーラ君はチュートリアルクエストを一度失敗したらもう職業変更サービスをしないって言ってたし。
ついでに、こんな仕様もある。
6、スキルレベルは、職業レベルが上がると同時に更新される。つまり、職業レベルが上がり難くなる後半になると、同時にレベルアップするスキルの御恵で、職業のレベルアップが有難く感じるようになる。それは兎も角として、最初からレベル上げが怖ろしく難しい俺の場合、スキルレベルは上がらないに等しい。
7、当然、PTを組んでもレベル差によって補正がかかる。なので、高レベルの人とPTを組んで強い敵を倒しても、経験値は全然美味しくない。むしろ不味いかも。
そして、最後に。
8、スキルは、普通の職ならば10個つける事が出来る。でも中には不遇されている職もあり、吟遊詩人はその極めつけ。1個しかつけられない。
9、豪華特典版を使用している人に限り、スキルは+2個付けられる。
思えば、この9番がいけないよな。俺も、付けられるスキルがもし1個だけだったら、たぶんその時点で疑問を感じて学者妖精プクーラ君に質問した筈だ。まぁその時には既に後の祭り状態になってるけど。
でも付けられるスキルが3個って聞いたなら、まぁ十分に納得出来る範囲だよね? まさかこんなトラップまで仕掛けられていようとは……恐るべき、メイドオンライン。
尚、このゲームはシリーズものらしい。オンライン版は内容が随分と膨大になったらしいが、オフライン仕様だった前作までをプレイしている人ならば、大抵の人は吟遊詩人が如何に不遇扱いを受けているか知っているという。オンラインゲームなのに珍しくβ版はなくて突然に発表、発売されたゲームなので、情報ソースはほぼそこが尽きるとか。
それを聞いて、一縷の望みを込めて自身のステータスを確認した。が、NEXTと書かれた部分の数値が天文学的な値となっていたので、俺はすぐに諦めた。
「メイドオンラインへようこそ」
マリリンが皮肉としてそう言ってくる。とどめの一言だった。
俺、これから何をして過ごせばいいんだろう?
♪御意見、御感想をお待ちしています♪
リン「リンちゃんと」
チー「チーちゃんの」
「「あとがき劇場!!」」
リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」
チー「ドンドン、ぱふぱふ」
リン「おじさんの、バカーーーーーー!!」
チー「カズミちゃんの、おバカさんですーーーーーー!!」
リン「あー、すっきりした。チーちゃんもスッキリした?」
チー「はい。スッキリしました。こういう事だったんですね」
リン「うん。ほんと、おじさんったら何て事してくれたんだろ」
チー「そうですね。本当におバカさんです。私達のメイドライフがズタズタです」
リン「だよねー。折角、一緒に遊んであげようと思ってたのに」
チー「一緒に遊びたくて、とってもウズウズしてたのに……」
リン「よりにもよって、超々不遇職の吟遊詩人を選ぶとは思わなかったよ」
チー「確率約2千の一です。ありえないです」
リン「あー、こんな事なら先に私達の方で決めておけば良かったかなー」
チー「です。でも、カズミちゃんにはどんな職が似合うでしょうか?」
リン「そうだねー。チーちゃんが前衛の剣士で、私が後衛の魔法士だから」
チー「回復役が欲しい所ですね」
リン「ううん。おじさんには絶対に似合わないから、やっぱ盾職あたりかな?」
チー「カズミちゃんには似合いそうですけど……」
リン「あ、そか。カズねぇだと、逆に盾職の方が似合わないかもだね」
チー「PTバランスを考えなければ、前衛がとってもお似合いです」
リン「その場合、剣を持つ事になると思うけど、チーちゃんと被っちゃうよ?」
チー「う……それは嫌です。でも槍とか斧とかはなんか違う気がしますし……」
リン「火力の線でいくなら弓職なんてどうかな?」
チー「散財が凄くておねだりしにくくなるので却下です」
リン「なら盗賊! って、チョロチョロ動き回れるのはなんかやだなー」
チー「戦闘の邪魔です。それと、何となく嫌です。絶対却下です」
リン「うーん、困った。カズねぇの職、悩むなー」
チー「えと……リンねぇ。そんなに悩まなくても……」
リン「よし! わかった! リンねぇは私達の専属メイドになって貰おう!」
チー「!?」
リン「それなら問題ないよね、チーちゃん」
チー「問題はないというか、もう手遅れというか……」
リン「うん。それじゃ私、早速カズねぇとこに行ってくるね!」
チー「え!? あ、ちょっと……。ああ、もう行っちゃった……。
リンねぇ、足早い。というか、まっしぐらすぎ……。
カズミちゃん、もう吟遊詩人になってるんだけどなぁ。
だからこういう話しになったのに……」
プク「……おや? お嬢さん、お一人ですかな?」
チー「え、あれ? プクーラさん?」
プク「どうも、お久しぶりです。小生は妖精三賢者の一人、頭脳担当のプクーラです」
チー「あ、どうもです。えと……プクーラさんは、どうしてここに?」
プク「どうしてと問われましても、小生はただ通りかかっただけですが」
チー「通りかかった……だけですか?」
プク「はい。決して機会を窺っていた訳ではありません。通りかかっただけです」
チー「でも、ここ……プライベート空間……」
プク「賢者である小生には容易き事です。ピクリさんもそうでしたでしょう?」
チー「そうなんですか?」
プク「はい。第6話の事です。一瞬、不法侵入していましたね」
チー「んと……それを言うなら、プクーラさんもそうなのでは……」
プク「問題ありません。小生はたまたま通りかかっただけですので」
チー「だから、ここ……外界から完全に隔絶されたプライベート空間……」
プク「完全ではありませんよ。その証拠に、小生はここにおりますし」
チー「不法侵入……」
プク「断固として違います。それより、そろそろ締めなくてはならないのでは?」
チー「納得いかない……。リンねぇ、助けて……」
プク「仕方ありませんね。ここは小生が締めさせて頂きます。
御来読の皆様方。本日も本作品をお読み頂き誠に有り難う御座います。
僭越ながら、本日はこのプクーラが皆様方に感謝の言葉を贈ります。
明日もまた足を運んで頂けると感激の極み。
是非とも、永く御愛読の程、宜しくお願い致します。
少し長くなりましたが、本日はこれにて締めさせて頂きたく思います。
それでは皆様方。名残惜しいかとは思いますが、失礼致します。
締めの挨拶は、妖精三賢者の頭脳担当プクーラがお送り致しました」
チー「うう……。とっても長いです……」
♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪




