冥土 to Sequel
後日談でっす。
結局、リンちゃんとチーちゃんの戦いはドローに終わった事で、俺ちゃんが持っている短剣の修理は、再度本人同士のリアルバトルへと発展致しました。
「カズミお兄さん、はい、あーん」
「あーん」
差し出されたスプーンをぱくっと咥え、大変ご満悦の様子な横取り娘ことリンちゃんが、そのまま俺の膝の上に陣取りガード体勢を取りました。まるで雛鳥のように口を開けて、次くれコール。そんなにプリンちゃんが欲しいのかな?
「む……昨日の友は今日の敵。リンちゃん、もしかして彩ちゃん陣営に寝返っちゃったの?」
「おじさん、あーん」
「俺のも食う気か」
面白そうなのでその可愛いお口にプリンちゃんを突っ込みました。
「んまんま♪ しあわせ~」
「りんねぇ……ずるい……私も……」
「チーちゃん、私のプリン殿で良ければ食べますか?」
身体を少し開き、膝を軽くポンポンと叩くササメさんはいったい何を望んでいるのでしょうか。もしかしなくても膝の上にチーちゃんを座らせたいのでしょう。
「じゃ、ユキちゃんはあたしの膝においで~」
「おじさま、あーんですの」
「くっ。既に遅かったか……」
一体誰の何を巡ってのバトルなのか既に分からなくなっている様相を呈している2人は、水面下で火花を散らせつつ俺ちゃんの姪3人を取りあっていました。残り少なくなっていくプリンちゃんを餌にリンちゃん達を誑かし、謎のポイントを貯めていきます。ポイントって何だろ……。
「また同点か~。かくなる上は、大人の魅力でカズミお兄さんを誘惑して……」
「なら私は子供の魅力でおじさんを誘惑!」
「右に……同じ……」
「左に同じなのですわ」
今度は何やら変なポーズ合戦を始めた4人を尻目に、俺はお部屋のお掃除やら洗い物を致します。昨日はみんなで焼きパしちゃったからね。今日は朝からその後片付けです。
しっかし、今日も暑いね~。なのにお子様は元気いっぱいです。一人、不思議な存在が混じっていますけど。違和感がないところが凄く怖いです。
「動かざること山の如し。真の大人というのは信じて待つものです」
そんな4人に家の仕事を邪魔されている俺ちゃんを、ササメさんは暢気にお茶を飲みながら見ているだけでした。若干、視線に熱い何かがのっているようですが、気が付かない振りをしておきましょう。そんなに俺の短剣を修理したいんですね。それとも、リンネちゃんには負けたくない何かがあるのかな?
まぁともあれ、いつかは2人のどちらかを決めなければなりません。昨日の夜は強引に有耶無耶にしてしまいましたが、たぶんハッキリさせておかないとこのまま今夜も家に居着いてしまいそうな気がします。貧乏って大変なんですね。その原因たる母親は、思わず笑ってしまいそうなセクシーポーズを取って遊んでいますけど。
という訳で、決めました。
俺はササメさんを娶……。
「あまり巫山戯てばかりいますと、私もつい手元を狂わせてしまいますよ」
そろそろ冗談が通じないようです。神速で抜刀された竹刀がおでこの上を掠めていきました。あぶっ……。
「今まで通りで」
収めるところへ無難に収め、お掃除続行。次はリンちゃん達のお部屋ですね~。ガードしてもダメですよ。服が脱ぎ散らかされていようと下着が空を舞っていようとお構いなしです。そんなに嫌なら自分達で片付けて下さいよ。
ちなみにお空を飛んでいたのは下着じゃなくて、下着を咥えたクロヒメちゃんでした。俺が部屋の中でしゃがんだ際に背中を駆け上がり、頭の上を踏み台にしてジャンプ。そのまま本棚の上に移動して隠れ家へと下着を持ち込んでしまいました。下着は洗って部屋干ししていたものをくすねてきたようです。誰の下着が犠牲になったのかはご本人が後で騒ぎ始めると思いますので、そのうち分かると思います。俺が見た事のない安物の下着でした。
「ねぇ、1つ聞いて良い?」
「1つ質問に答えるたびに1歳ちゃんと歳を取ってくれるなら」
蹴りが飛んできました。あちょーって、いったいどこの外国人さんですか。
「彩ちゃんを選んだ本当の理由は?」
「リアル女子高生だからに決まっているだろう」
即答したらまた蹴りが飛んできました。あの急所にっ!?
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
ここからが本当の?後日談でっす。
頻繁にササメさんとリンネちゃんが家を訪れるようになりました。名目はリンちゃん達と遊ぶため、本音は無償で提供される食事と涼を漁りにです。2人が貧乏というのは本当らしく、利用出来る相手はとことんしゃぶり尽くすようです。
貧乏は人を強くするとは言いますが、そもそもこれぐらい図々しくないと生きてはいけないそうです。こっそりササメさんに家計簿を見せてもらったら、あら真っ赤。収入やばいじゃん……よくこれで今まで生きてこられましたねと言いたくなるような数字でした。
日雇い仕事をする気が起こらない日には朝から晩まで入り浸っているリンネちゃん。ダメダメな母親です。見た目にはまるで違和感のない我が儘ぶりですけど。
ササメさんは部活動で学校に行ったり勉強で図書館に行ったりするので、基本朝晩の食事時にしか現れません。朝のラジオ体操が終わったら一緒に家についてきて朝御飯を食べ、夕方にリンネちゃんを回収するついでに夕食を御馳走になっていくという生活スタイルです。それでも十分図々しいのですが、まぁそこは美麗の女子高生剣士さんと毎日お食事が出来ると思って見て見ぬ振りをしてあげましょう。遊び人の母親を持つと大変ですね。
ただ、いつまでもというのは良くないです。
という訳で、定職に就いていないリンネちゃんにお仕事を斡旋して、無理矢理働かせる事に致しました。娘が一人前になるまではちゃんと育てろよゴラァ! いい年こいて、いつまでも遊び半分で過ごしてるんじゃねぇ! リンちゃん達の教育上にも宜しくないですからね。心を鬼にして職場に放り込みました。
放り込んだ先は保育園。何故か保育士の資格を持っていたのが幸いしました。サクッと決まりましたよ。
まぁリンネちゃんは精神年齢が低く、それでいて子供の面倒を見るのは好きみたいですからね。最初の数日間はこっそり様子を窺っていましたけど、結構うまくやっていけてるようで何よりです。他人様のお子様相手ならそう簡単には責任放棄できないと思いますし、本人も楽しみながらやっているので大丈夫でしょう。天職だったようです。
しっかし……園児に混じっていてもまったく違和感が感じられないというのは、本当にいったいどういう事だ。流石に頭一つ分以上飛び抜けているので園児に間違えられる事は少ないらしいが――ある時点で脅威だけどね――近所の子供だと本人が答えてしまったら誰もまるで疑わないぞ。というか、紛らわしいから止めろ。
さてさて、リンネちゃんが晴れて就職した事で、リンネちゃんササメさん親子の財政事情も随分と改善致しました。だからと言って2人が家にやって来る回数が減ったかと言えば、否。朝は毎日ラジオ体操に参加して、そのまま朝御飯を馳走になりに来ています。
但し、保育園で飼育している鶏が産む卵や、ある程度生活に余裕が出来てきた事で始めた家庭菜園の収穫物をたまに持ってきてくれます。リンちゃん達ともたまに商店街へとお出かけして、アイスやらプリンやらを奢ってくれているようですね。
万事解決、一件落着です。
……あれ、何が問題だったんだっけ? まぁいいや。きっと大した事ではありませんね。
夏が終わり、新しい季節がやってきました。リンちゃん達も新学期です。ササメさんと一緒に登校です。まさかササメさんを毎日家から送り出す羽目になるとは思ってもいませんでした。5人仲良くいってらっしゃーい。
お帰りなさ~い。今日はまた新しいお友達を連れてきたんですね。
初めまして。こんにちは。ゆっくりしてってくださいね。
へ~、ササメさんの紹介なのですか。ササメさん経由でリンちゃん達と知り合い、リアルでも友達になったんですか~。へ~、ふ~ん。
……ん?
リアルでも友達? それ、どういう意味です?
「こちらの世界で会うのは初めてですね。初めまして、カズミ氏。僕は如月真と言います。あちらの世界ではシンと名乗っています」
ササメさんには後で教育的指導を行いましょう。
可愛い悲鳴をあげてくれても止めませんからね!




