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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 二章 『ACCELERATION WORLD』
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姪 to Poison Virus

 迫り来る負の恐怖。忍び寄る影。吹き荒れる風邪。

「まさかマリリンが風邪引くとは思ってもみたかったっす。大丈夫っすか?」

「うん……ゴホッゴホッ。全然大丈夫じゃない、かも……」

 俺の背中におんぶされたマリリンが盛大に風邪のウィルスちゃん達を撒き散らします。う~ん、盛大にうつされそうな気がします。風邪は誰かにうつして治すという荒療治がありますけど、まさかそれを狙ってるんですかねー。ここはゲームの中だからそんな仕様があっても不思議ではありません。風邪をうつされた場合は辛さ2倍仕様も適用されてたら嫌だな~。

「何にしても、お二人が元気そうで安心しました」

「私達より、マリリンの方が心配です。ここに来てからほとんどずっと状態異常にかかりっぱなしですよね」

「きっと水が合わなかったんでしょう」

 いや、自業自得のような気がしますけど? 買い食いしたり、裸のまま暴れたり。原因となるものが思いっきりありますです、はい。

 ……え? ダンジョンはどうしたって? そんなのサクッと攻略したに決まってるじゃないですか~。レイ君の罪はたかが知れてますから、発生したダンジョンの難易度もたかが知れています。シン君達にとっては朝飯前の難易度でしたよ。それでもレベル2の俺ちゃんには一撃死しちゃうクラスのモンスターさんばかりでしたけど。

 ちなみにシン君はいつの間にか下位上級職の『戦棍使い』になってました。『もどき』という言葉が消えただけですね。レベルもがっつりあがって40代。HPは千を越えたそうです。俺ちゃんの10倍ありまっす。

 マリリンは以前のままで中位下級職の『赤の魔法士』のまま。レベルもシン君とだいたい同じぐらいでちょっと上といった感じ。ずっと同じ職だったのにクラスアップしたシン君にレベルが追いつかれてるのは職業ランクの影響ですね。中位下級職より下位上級職の方が同じ敵を倒した際に得られる経験値は多いです。レベルアップに必要な経験値の量も若干少ないです。

 マリリン、クラスアップを早く行いすぎてちょっと苦労してるみたいです。あと少しでレベル45になるので一個下の下位上級職にクラスチェンジ出来るようになるけど、どうするか悩んでいるみたいですね~。そろそろ寄り道クラスチェンジしておかないとボーナス補正が少なくてみんなから置いていかれるので、がむしゃらに中位中級職を目指すのは厳しいんだそうです。

 あ、余談ですけど、最下級職から下位中級職にクラスアップするにはレベル15必要です。下位上級職にクラスアップするにはレベル30、中位下級職にはレベル45です。

 それとは別に、最下級職にクラスチェンジするにはレベル10、下位中級職にはレベル25、下位上級職にはレベル45必要となってます。どっちを行ってもレベルは再び1からスタート。以前になっていた職業に戻っても以前のレベルまでレベルアップしやすくなるという補正はありません。但し、そのレベルに至るまでは若干の追加能力補正が貰えるそうです。どれもこれも俺ちゃんには縁の無い情報ですけどね。

 一直線型のマリリンはそんなこんなで最近は大変苦しんでますけど、その反対のセンねぇちゃんはお気楽モードです。水や剣に関わりそうな職業を片っ端から取っているため、レベルが低くても職業ボーナス補正で結構強くなってます。解放してる職業数もPTの中でダントツです。

 マリリンの様にただ一直線にクラスアップしてるだけだと、『見習い魔法士もどき』『見習い魔法士』『魔法士』『赤の魔法士』といった感じで上位職が順に解放されていきます。それに対しセンねぇちゃんの場合は、例えば最下級職の『片手剣士見習いもどき』『見習い魔法士もどき』『見習い聖術士もどき』『見習い精霊使いもどき』というクラスチェンジ過程を経た事で下位中級職の派生職『水精の片手剣士見習い』の解放条件を満たし、実際にその職へクラスアップしてたりします。最下級職はレベル10でクラスチェンジ出来るので大した手間は無いですけど、そこから上は一気に修羅化するの間違いなし。下位中級職へのクラスチェンジはレベル25が条件なので、下位上級職の派生職解放は大変でっす。

 とはいえ、このランク分けルールはモンスターさん側にも適用されているので、同じレベルに見えるモンスターさんでも高いランクを倒せばそれだけ多くの経験値が入ってきます。自身の職業ランクよりも高いランクにいるモンスターさんを倒せば更に経験値アップ。まぁ、ランクの高いモンスターさんの方が強い傾向にあるのはお察しの通りですけど。それでも、低ランク高レベル/同ランク同レベル/高ランク低レベルのモンスターさんのどれと戦って経験値を稼ぐか選べるので、相性の良いモンスターさんを見つけやすいです。

 反面、職業ボーナス補正不足のマリリンは、敵さんをあまり選べません。今はほとんどのモンスターさんが自身よりも低ランク同レベル/極低ランク高レベルなんだそうです。つまり、経験値が少なくてなかなかレベルアップしません。それでもなんとかレベル45まで上げて、せめて下位上級職へクラスチェンジを解放してから次のステップに進もうと頑張っています。藻掻いてます。

 あ、忘れてましたけどセンねぇちゃんの今の職業は下位上級職の『水刃一刀流剣士』レベル30代後半だそうです。一刀流なのに刀じゃなくて両刃の剣を持ってますけどね。しかも腰に2本ぶら下げ、腰の後ろにも×印の様に2本背負っています。使うのは1本だけだけど、気分でどの剣を使うか選んでるそうです。たまに2本持って二刀流モードです。盾は持ってません。

 俺ちゃんはずっと『吟遊詩人』です。この前ようやくレベル2になりました。寂しいなぁ。

 お巡りさんに捕まって牢屋に入れられていたレイ君は、現在強制的に『脱隊勧告を受けた危険分子』という称号持ちの下位中級職『前科7犯の免停中衛士・暗黒鎧/大盾』という不思議なネーミングの職業になっています。強制クラスチェンジなのでレベル1です。シン君達の助けを借りないと脱獄出来なかった理由がそこにあります。脱獄するためにダンジョンに潜っても即刻即死させられますからね。俺ちゃんのお仲間♪ ……嬉しくないけど。

 流石にそのままではまたすぐに捕まる危険性があるので、すぐにレベル上げて他の職業にクラスチェンジです。あの禍々しい全身鎧もすぐに教会へ駆け込んで解呪して脱ぎました。まだ下位中級職なのでレベルアップはあっと言う間です。これがもしもっと上のランクの職業だった場合には阿鼻叫喚。犯罪道まっしぐらしちゃってると足を洗うにも難しくなっていく仕様です。面白いね。

 転職するとこの『前科7犯の免停中衛士・暗黒鎧/大盾』という期間限定職は消えるそうです。つまり、二度とその職業には就く事が出来ません。意図的に罪を犯しても、今度は前科8犯という新職になるそうです。いや、どうでも良いからそんな情報。

 マリリンから風邪をうつされたくないからなのか、それとも早く転職したいからなのか、レイ君達はすぐに経験値稼ぎに行ってしまいました。風邪っぴきのマリリンを介抱してる俺ちゃん以外のみんなでです。流石にセンねぇちゃんも風邪を引いたマリリンの近くにはいたくないようで、俺ちゃんに押し付けてきました。俺は風邪をうつされても良いのかよ……。まぁ、戦力になりませんからね。適材適所でっす。

 そして最後にユリアちゃん。このPTの中で唯一の回復職です。ユダちゃんが抜けた穴を埋めるように後衛寄りの職業に就いてます。未だに細身の剣とかバックラーとか持ってて前後衛どっちでもいけます的な装備スタイルですけど、マリリンと同じ中位下級職で『コーネリア聖術剣士・第十四階位・細剣/回復』というやたら長ったらしい名前の職業に就いてます。レベルは30代前半です。

 コーネリアというのは教団の名前で、まぁ宗教団体です。なので、それがついてると回復系がより得意になるとでも思って下さい。聖術剣士というのは、魔法剣士と同じ意味です。【魔】属性の魔法を使う剣士なら魔法剣士、【聖】属性の聖術を使う剣士なら聖術剣士と呼ぶだけです。このゲームは法術というカテゴリーの下に魔法と聖術いう言葉がある世界ですかね。ちょっと馴染みがないかもしれませんけど、まぁすべて魔法と言い切っても構いませんよ。

 んで、第十四階位というのは、数字が小さいほど上位職になるという意味です。『見習い』とか『もどき』とかを使わないスタイルの職業の一つでーす。2階級が同じランクっぽいです。一番下は最下級職の二十階位、なのでユリアちゃんはもう一つ階位をあげてもまだ中位下級職のままです。何気に上のランクにいこうとすると、他の職業よりも2倍の努力が必要な所がこれまたマゾっぽい仕様です。まぁ聞いてみたらNEXT経験値は控えめだから2倍程じゃないみたいですけど。

 何気にユリアちゃんの職業ランクが高いのは、回復を行うためにより多くのMPを欲したからだそうです。上位の職ほどHPやMPは多くなる傾向にあり、下級と中級の間にも大きな差があるんだそうです。だから、下位職のまま高レベルになるよりも中位職になった方がMP最大値が多くなりMP効率もアップします。事実、前職である『コーネリア聖術剣士・第十五階位・細剣/回復』レベル45の時よりも、今の方がMPが若干多いそうです。これまで経験した職業のボーナス補正の影響もあるとは思うけどね。上位職の方がボーナス補正も若干色がつくそうです。

 では、ここで問題です。この中で一番強いのは誰か?

 あ、俺ちゃんは除外ね。年齢差に伴うプレイヤースキル補正がべらぼうに影響しちゃうので。肉弾派のレイ君には余裕で勝てるけど、必中の法術をいくつか持ってる女性陣には1対1だと勝てません。シン君もちょこっとだけそういうスキルや法術を持ってるみたいだしなぁ。たぶん勝てないでしょう。必中攻撃使わせる前に即行で攻めれば勝てそうですけどね。まぁどちらにしても博打みたいになるので除外致しましょう。

 結論から言えば、ユリアちゃんの圧勝です。なんでかって? だってサポート系の法術をたくさん覚えている上に、自己回復も出来るんですから。素のステータスではセンねぇちゃんには届かないにしても2番手についてますし、一撃の威力はレイ君以外の誰にも勝てませんが継続ダメージ系の法術使って持久戦に持ち込めばOKです。バリバリの後衛でもない上に剣術の心得があるので、即行で決めにかかってきたシン君やセンねぇちゃんの猛攻にも十分耐えられます。マリリンの超強力な隕石魔法はバフかけまくって耐えきれば良いだけです。後はMP次第。その条件も中位職になった事で万事解決。

「おじさん、水ちょうだい……」

 あ、こら。ここではカズねぇと呼びなさいよ、マリリン。

どうやら風邪の状態異常でかなり精神的にまいっている様です。ここ、本当にゲームなのかな……ちょっと酷すぎな気が。まぁリアルでも同じ事をしない様にとの警告なのかもしれませんね。

「ほら、ミネラルたっぷりの冷たい水だ。あまり急いで飲まず、口に含ませる感じでゆっくり飲め」

 ちなみに錬金術で作りました。マリリンを介抱するにしても結構暇な時間が多いので、内職してます。水作るのって意外と大変なのね。

「うー……飲ませて」

 甘えん坊だなぁ。ちょっとグラッときちゃいました。普段のマリリンとのギャップがあって少し萌えです。

 いやいや、姪相手に萌えってヤバイですって。心頭滅却致しましょう。

「ん、美味しい。桃の味がする」

 そりゃ材料に桃を使いましたからね。水を作るのに桃を搾った果汁を使うのって、なんか間違っている気がします。そのまま桃の果汁を飲ませたら良かった気がします。無駄に手間かけすぎました。まぁでも、生成過程で冷えてくれたので、飲み水としてはこちらの方が良いのかも知れません。

 それに、錬金術には果汁じゃなくて水が必要だから良く作る、というのも関係がありました。別にここ王都では水不足に悩まされている訳でも無いので水ぐらいちゃちゃっと大量に手に入れる事は出来ます。でも、ただで手に入る水の質は悪くて、錬金術に使うにはちょっとね。井戸水もやや質が悪いです。お店で売ってる蒸留水や聖水を使っても別に良いんですけど、いったいどなたが作っているのか性能に差があるんですよね~。一律この性能という訳じゃないみたいです。たかが水なのに。

 という訳で、だいたい同じ性能になる自家製の水を俺ちゃんは使ってます。マイホームでプチポちゃんを作ってた時には近くに海があったので、大量の海水を沸騰させて蒸気ろ過して水と塩を作ってみたり、石や砂や布や炭とかを何層にも重ねた濾過器を作って蒸留してみたりしてました。一応、それも錬金術の中に含まれてまっす。

「カズねぇ、さっきから何作ってるの?」

「ひーみつ。マリリンが元気になったら教えてあ・げ・る♪」

「……プラチナむかつく」

 いや、単に今は教えたくないだけです。だって、病人の近くで毒物を作ってるなんて、口が裂けても言えませんよ。いったいあんたは可愛い姪に何をするつもりだ的な? 殺す類の毒じゃなくて、麻痺させたり性的に興奮させちゃう系の毒だったらもっとヤバヤバでっす。もちろん、今作ってるのはそんな別方面で危ない毒ではありませんけどね。

 飲んだり傷口から体内に入ると普通にHPが徐々に減っていく類の毒です。どんな物かというと、こんなものです。



アイテム名:プチプチポイズンドリンク・プチ

 生産熟練度:1

 効果:使用するとHPに1のダメージを受ける。

    クラスAの状態異常・毒を発生。1秒ごとにHPに1のダメージを受ける(継続時間3秒)。

    防御力-1(状態異常継続中のみ)。

    クリティカル効果発動率+1%(効果が倍になる)。



 ……いや、混ぜませんからね? 混ぜ混ぜして超強力な劇毒を作る気はありませんから。というか、試しに混ぜ合わせてみたらボンっといって俺ちゃん死にかけたので、まだその方法が分かっていません。単純に混ぜ合わせるだけじゃダメみたいですねー。

 ちなみにプチプチシリーズの一つです。略したらプチポちゃんになります。名前被っちゃうので、毒プチポちゃんって呼びますね。

 あと、毒アイテムなのに何気にドリンクっていう明らかに飲料水のカテゴリーにされてるのは何故に……。盛れって事ですか? 剣や矢に塗るんじゃなくて?

 で、何でこんなものを作っているかというと、毒は薬にもなるからです。盛るためじゃありません。これから戦争がおっぱじまるのでその備えとして毒を大量に仕込み始めている訳じゃありません。前言通り、薬を作るためです。

 この毒プチポちゃんを素材にした薬があるんですよね。明らかに苦そうですけど。でも薬が出来るんです。そう教えて貰いました。情報通のシン君からです。

 HPを回復するプチポちゃんも良いけど、状態異常を回復する薬も作って欲しいそうです。プチポちゃんでも確率で状態異常を回復出来る効果がつきますけど、運の作用が大きいですからね。それにどのプチポちゃんがどの状態異常を回復出来るか、使う前にいちいち性能を確認する必要があるので面倒なんだそうです。それなら最初から状態異常の回復薬を作ってしまえという訳です。

「カズねぇ……汗が、気持ち悪い……拭いて……」

 あと、色んな意味でちょっと危ない発言をしてくるマリリンの風邪を治してくれる効果がついてくれないかという気持ちもありますけど。別に姪の身体を拭くのは構わないんだけど、ここはゲームの世界だからなぁ。リアルの姪なら兎も角、思い切りデフォルメされた別人の女の子の身体を拭くって、ちょっとどころかかなり危険です。

「一人で起きて服脱げるか?」

「お願い……」

 いや、本当に危険です。ひたすら甘えてくるんです。全部俺ちゃんに丸投げです。

「ん……冷たくて、気持ち良い……もっと、お願い……前も……」

「そっちは自分で拭け」

「ケチ」

 俺が女の子キャラになってるのもきっと影響してるんだろうな~。ファミリーフレンドであり女性キャラ同士ということでハラスメント警告も全く出てきません。いや、それってどうなんだろうね。ちょっとフリーダム過ぎません?

 男女間ならちゃんと設定してれば警告とかしてくるのに。場合によってはモザイクまで出ちゃうのに。性転換してる俺ちゃんだけに、ちょっとヤバイです。

 ……ん? なんかちょっと引っかかる記憶が。何だろう。よく分からないけど、なんか何かが引っかかってます。けど分かりません、思い出せません。いったい何が引っかかってるのかな。

 まぁ思い出せないという事は大した内容では無いのでしょうね。サクッと忘れましょう。その時が来たらまた思い出す事でしょう。気が付く事でしょう。

 ちなみにその日、シン君達は宿に帰ってきませんでした。チャットも通じません。どうやら俺ちゃんみたいに何かのイベントに巻き込まれたみたいですね。

「カズねぇ、行っちゃヤダ。一人はヤダヤダ。一緒に寝て、お願い」

 危険なフラグが立ちました。いえ、別に一緒に寝るのは良いんですけどね。リアルでもたまに夜中にトイレで起きて、そのまま寝惚けて俺の布団の中に潜り込んできますし。そんなの普通です。

 風邪、本当にうつされちゃうかも……。ヘルプミー!!

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