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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 一章 『BALANCE BREAKER』
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メイド Death Cure

「マリリン! センねぇちゃん! 無事か!?」

 それらしい大部屋に入って開口一番、瞳に入ってきたのは何やら大きな植物の固まりさんでした。うぉ……なんだこれ。ダンジョンの中に世界樹でも生えているのか?

「え? この声はカズミちゃんですか?」

「あ、カズねぇ! 来ちゃったんだ」

「二人はこいつの裏か? しかし道が……」

 辺りを見回すと、その巨大な木は部屋の中央から真横に根っこみたいな触手を伸ばし、部屋を二分する様に根の壁を作り出していた。

 その隙間から見える向こう側の景色に、3人の姿を確認する。センねぇちゃんが剣を振り回し、その後ろでマリリンが魔法を唱えていた。更にその後ろではユリアちゃんが矢継ぎ早に回復アイテムらしきものを投げながら、同時に支援法術を使っている。

 戦闘中か。にしてはレイ君の姿が見当たらないが……。

「カズミ氏! 危ない!」

「なに!?」

 突然に俺の目の前へシン君が躍り出て、何かから俺の身を守ってくれる。いったい何事か。と思う前に、シン君が俺の方へと弾き飛ばされてきたので受け止める。

「まだ次が来ます! 避けて下さい!」

 そう言われる前に俺は動いていた。

 迫り来たのは無数の触手。木の根の様な、緑色をした太くて長い物体。それが鞭の如く次々と襲いかかってくる。俺はシン君を胸に抱いたまま必至に躱した。

「もしかして、こいつがボスか?」

「その様ですね」

 襲いかかってきた触手の先はその木へと繋がっていた。恐らく後ろ姿なので、正面には人の顔の様なものがあるのだろう。攻撃が散発的で、しかも俺が先程までいた場所をまだバシバシと叩いていたので、何となくそれが分かった。

 とりあえず、ダメージを受けたシン君にプチポを使う。時間優先でバシャッとかけて、水も滴る良い男を作り出しちゃいます。すぐにプチポ液は消えちゃうけどね。

「すみません。回復が追いつきません。もうすぐこっちはやられちゃうかもしれません」

「カズねぇ、プチポ頂戴!」

 いやいや、そう言われてもねぇ。マリリン達がいる向こう側に行く手段が無いんですけど? マリリンが俺達との間にある触手の壁を炎の魔法で焼き尽くそうとしてますけど、火の玉がその壁へと辿り着く前に触手の鞭が自己犠牲精神で食い止めちゃっていました。

 しかもその触手、無限再生してまっす。センねぇちゃんがいくら斬っても、マリリンがいくら燃やしても、すぐにそこから新しい触手が生えて元通りです。

「早く頂戴!!」

「お、おう……」

 マリリンがちょっと怖いです。なので、ダメ元でも良いので素直に従っちゃいます。

 プチポボウを構え、鞄から適当にプチポちゃんを取り出してセッティング。触手の壁の隙間に標準を合わせ、マリリンへと当たるように位置を微調整。距離的にいってマリリンへ当てるのは難しそうだけど、とりあえずやってみないことには始まりません。

 準備は整った。後は引き金を引くだけです。センねぇちゃんの剣撃で触手の数が一時的に減りました。今ですか? 今でしょ。

「カズねぇ、もっともっと! センねぇにもお願い!」

 うまいことヒットしてくれましたけど、この状況下ではほとんど気休めの様な気がしちゃいますよ。でもとりあえず次のプチポを手早くセットして、センねぇちゃんに向けてシュート!

 あ、狙いがちょっとそれて、少し危険な場所に当たっちゃいました。驚いてバランス崩さないと良いけど……ほ、良かった。全然気にしていないみたいです。

 そのまま何発もマリリンとセンねぇちゃんへとプチポを撃っていく。失敗する事も何度かあったが、どうやら窮地だけは救えた様でした。

「私が持ってたストックももう切れます! 上で捕まっているレイにもお願いします!」

「上?」

 そう言われて上の方を見ると、重装備姿のレイ君が触手で宙吊りになっていました。ぶらんぶらんと揺れています。なんでそんな事になってるんですか、ちみは。PTの大黒柱なんですから、そのんあ所で遊んでちゃダメでしょうに。

「あの、もしかして……」

「敵はゾンビフラワーです。頭にキングがついてますけど」

 うほ。これ、ゾンビちゃんですか。なるほど、納得です。あの悲鳴はレイ君のものだったんですね。

 となると、マリリン達の正面にある顔はでっかいゾンビちゃんのそれか、もしくは悲鳴をあげている幽霊さん達の顔でビッシリ埋め尽くされているのかも知れません。フラワーという事なら、この触手も蔓ですね。よく見たら所々に葉っぱらしきものがついていました。

「レイさんとはほとんど最悪の組み合わせですね。ただでさえ植物系は広範囲攻撃をしてくるので盾職はあまり役に立たないというのに」

「ゾンビが天敵のレイ君には酷な相手か。役立たずの二重奏だな。むしろお荷物か」

「お荷物かどうかは、恐らくあそこから降ろしてみれば分かると思います。カズミ氏、レイさんをあそこから降ろせますか?」

「あそこからか? 流石に俺との相性も悪いからな。たぶん、無理だ」

 困った事に、レイ君を宙吊りにしている蔓はマリリン達がいる方のエリアから出ているものだった。そのため、その蔓を斬るためにはかなり近くまで行く必要がある。そして、今の今までセンねぇちゃんとマリリンがその蔓を斬るか燃やす事が出来ていないという事は、当然他の蔓によって妨害されているという事になる。

 いくら回避が得意だからといっても、あの巨大な敵の身体を使ってジャンプしている間に次々と襲ってくる無数の蔓攻撃を全て躱すのはまず不可能だ。何発か受けても良いという条件であればまだ可能性ではあるが、困った事に今の俺は一撃でも受ければ即死という身の上。知恵を絞っても、賭けても良いと思える様な成功確率はまず導き出せないだろう。

「とりあえず、回復だけしておくな。俺達が現れた事であのキングゾンビフラワーの意識も分散するだろうから、センねぇちゃんかマリリンがうまくレイ君を救出してくれるのを待つとしよう」

「はい。でも現状を見る限り、それは望み薄だとは思いますが」

「ここは合流出来ただけでも良しとすればいい。別に死んでも良いんだしな。時間的に言って今日はこの辺でお開きになりそうだが、また明日も挑戦するんだろ?」

「勿論です」

 さーて。マリリンとセンねぇちゃんが元気な事は確認出来たし、後は適当に流して終わりかな。レイ君は……見た感じでは気絶してるみたいだし、回復するだけなら別に何でも良いか。中毒症状なんて気にしても仕方ないよね。

 んじゃ、折角だから実験用に作ったプチポちゃんでも試してみるかな。これ使えば一発でHP全開になるでしょう。ユリアちゃんもアイテム切れそうって言ってましたから、後は法術で回復してもらうという事で。

「エネルギー充填120%。ターゲット確認。この一撃で決める!」

「その台詞、味方の回復時に吐くような台詞じゃありませんよ」

 金色に輝くプチポ液が風をきってレイ君の方へと飛んでいく。っていうか、何で金色に輝いているんですか。作った時にも瓶に入っている時にもそんな色はしていませんでしたよ。

「あ、防がれた」

 そして防がれるという、何とも悲しい結末をその金色のプチポちゃんは迎えてしまいました。うぅぅ……そのプチポちゃん、それなりに大きな代償を支払って作ったプチポちゃんなのに。自己犠牲精神の固まりでもある蔓さんによってアッサリと防がれちゃいました。くすん。

 と思った瞬間。

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

「……え? あれ?」

 突然に強烈な悲鳴が室内に響き渡り、キングゾンビフラワーがバタバタとのたうち始めました。あれあれ? どうしたのかな? なんでプチポちゃんを受けて、そんなにダメージを受けてるんですか?

「あ……もしかして、不死者系の魔者(ましゃ)に回復法術をかけるとダメージ扱いになるという仕様が、先程のプチポにも適用されたんですかね」

「そうなのか? にしては、あの苦しみ様はちょっといきすぎだと思うんだが」

 キングゾンビフラワーは――ちょっと長すぎるから、略してゾンフラちゃんにしますね――見る間に活力を失っていきました。部屋を二分していた蔓の壁もしおれて通れる様になり、マリリン達のいる方へと移動しても全く攻撃を仕掛けてくる気配はありません。それどころか、レイ君を宙吊りにする事も止めてしまい、簡単に助け出す事に成功してしまいます。

「カズねぇ、一体何やったの?」

「何と言ってもな……レイ君を回復しようとして、とっておきのプチポを撃ったらあれに防がれただけなんだが」

「つまり、プチポをあのゾンビモンスターさんに使ったという事になるのですね?」

「まぁ、そういう事だな」

「にしては、明らかに様子が変ですよね。私もダメ元で回復法術をあのモンスターさんに使ってみましたが、ほとんどダメージは与えられていませんでいた。いったいどんなプチポを使ったんですか?」

「あーっと。それはだな……」



 アイテム名:プチプチポーション・プチ×50

 制作者:

 生産熟練度:24

 効果:使用するとHPが793回復する。MPが11回復する。SPが9回復する。

    ヒーリング効果で5秒ごとにHPが10回復する(継続時間395秒)。

    クラスBまでの毒/麻痺/盲目/沈黙が回復する。

    攻撃力+7、防御力+10(ヒーリング効果継続中のみ)。

全属性耐性+5%(ヒーリング効果継続中のみ)。

    クリティカル効果発動率+8%(効果が倍になる)。

中毒症状1500秒(ヒーリング効果後)。

 説明:



「ちょっ!? 何ですかその壊れた性能は!?」

「基本回復数値が1のプチポを、どうやればそんなハイグレードプチポに出来るんですか? 追加効果にしても、並のアイテムを軽く越えちゃってますけど……」

 うーん、やっぱりそうだよね~。ただ単純に1個ずつちびちびと混ぜていっただけなんですけどね~。生産物の効果+10%というのが、恐ろしい結果を招いているみたいです。これ、もしプチポちゃんじゃなかったらどうなるんだろう……。

 ちなみに、混ぜ混ぜは50個でやめておきました。だって怖いし。軽く計算してみたら、101個目で回復値が10万越えちゃいます。中毒症状も半日越えちゃいますけど、まぁそっちは別にあまり気にしなくても良いよね。

 これ、アイテムごとに効果上限とか設定されてないのかなぁ。

「カズねぇ、グッジョブ! たぶんあれ、クリティカル判定も入ってるよ」

「クリティ……一撃1500越えのダメージですか。しかもヒーリング効果で更に1500ダメージ与えてしまうんですよね」

 ボス級のモンスターにしてみたら、あんまり気にしなくても良いダメージだと思うけどね~。

「あと、たぶん自己再生能力も半分ぐらい失われているかもしれません。ゾンビフラワー系って確か、体内にある毒の効果で再生能力を高めていますから。その対策として、毒を除去するのは有効な手段だったりします」

 人にとっては毒でも、ゾンフラちゃんにとっては薬扱いなのね。

「でもそれなら、先にユリアちゃんの法術で毒を除去すれば良かったんじゃないか?」

「持続性がなければすぐに大地からの養分で毒は復活しちゃうんです」

「つまり今は、キングプチポの」あ、なんか頭にキング付けられた「ヒーリング効果時間のかげで毒の中和が継続されているという事ですね」

「それにたぶん、ヒーリング効果がきれた瞬間から発生する中毒症状のせいで、今度は大地から養分が吸えなくてまた暫く毒は復活させる事が出来なくなると思います」

 そして大地の養分はドリンク扱い、と。見事にはまっちゃってますねー。俺はただ単にレイ君を回復させようとして使っただけなのに。少しだけ実験もかねてたけど。

 それなのにゾンフラちゃんったら横取りしちゃって。

 まぁ、自業自得ですね。欲張るとあんまり良い事ありませんよ?

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