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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 一章 『BALANCE BREAKER』
58/115

姪 to petit petit potion petit

 あれから一週間が経ちました。

「おじさまおじさま。もしかして、これはおじさまの手料理なのですの?」

「みゃー」

 などと意外そうな目でユキちゃんが俺の事を見てきたのももはや過去の事。俺の家へと突然に転がり込んできた姪三人衆の中で一番年下のユキちゃんも、猫ちゃん同様すっかりこの生活に慣れてくれたようです。

 さてさて時間が経つというのは早いもので、もう始業式の日です。つまりリンちゃんとチーちゃんとユキちゃんは、今日から学校に通っちゃいます。みんな転校生です。4月の始業式に転校だと全然新鮮味がないですけどね。

 ただ、ちょっとだけユキちゃんの事は心配です。ユキちゃん虐められないかなー。ユキちゃんって語尾が独特だし、それに名前の件もあるしな~。それに何より可愛いし! 心配だから俺も一緒に学校へついていこうかな~。どうしよっかなー。

 そのユキちゃんですが、俺の妹の娘で、本名は雪璃(シュェリ)と言います。名前の通り、ハーフです。でも誰もそんな読み方出来ないし、何より呼びにくいので、みんなユキリちゃんとかユキちゃんって呼んでます。雪の様に白い肌が特徴の可愛い女の子です。

 チャイナドレスとか似合いそうな名前をしている女の子です。でも何故か今はメイド服を着ていました。えっと、これから学校に行くんですよね?

 そのメイドなユキちゃんの膝の上には、全身真っ白けな毛をした白子猫ちゃん。ユキちゃんの膝元がとても気に入ったのか、さっきからずっと丸くなって寛いでいます。起きたばかりなのに、また寝てます。三匹いる猫ちゃんの中で一番物怖じしない性格なのか、あの日、夕方になってコッソリ猫部屋のドアを開けた所、真っ先に部屋から出てきた猫ちゃんです。

 名前はシェラーリと言います。事前にみんなでかわされた約束通り、一番その白子猫ちゃんに気にいられたユキちゃんが名付け親です。なんかフェラーリみたいな名前ですねー。格好良い女性の名前って感じがします。それにユキちゃんの本名に似てますね。いったいどっちから取ったんですか~?

「おじさん……ジャム、にぅ……ください、です……にゃー」

「にゃー」

 そう言ったチーちゃんの頭には、可愛い黒子猫ちゃんの姿がありました。ある意味、ユキちゃんの膝元にいる白猫ちゃんより怖い物知らずにも思えますけど、どうやらその黒子猫ちゃんは、兎に角高い所が好き!なタイプなようでして。今はチーちゃんの頭の上にいますけど、さっきは冷蔵庫の上にいました。チーちゃん、そのままの状態で学校に行かないでね?

 チーちゃんは俺の姉の下の娘で、本名は千鶴(ちづる)ちゃんと言います。本当ならちぃちゃんと呼んだ方が正しいのだけれど、千という漢字がカタカナのチにも見える事から、チーちゃんと呼ばれるようになりました。

 そのチーちゃんも、何故かメイド姿です。いや、だからこれから学校……。

 どうもユキちゃんは事前にお母さんから俺へのお土産というか餞別というか面白半分の嫌がらせというか、この家ではメイド服を着て俺に誠心誠意奉仕するように申し渡されていたようでして。ユキちゃんはその命令を忠実に守っているのか、一週間ずっとメイド姿でした。

 チーちゃんはそんなユキちゃんに何故か対抗心を燃やしてしまった様で、ならば私も誠心誠意奉仕しますです、と言ってメイド服を着てしまいました。というか、何でチーちゃんもそんな服を持ってるんですか。

 ちなみに、頭の上にいる黒子猫ちゃんの命名はチーちゃんが行いました。クロヒメだそうです。何だか高貴な雰囲気を思わせる名前ですね。

 そんな事より、チーちゃんそろそろニャー語を混ぜるのやめませんかー? 癖になっちゃうと学校でもつい口に出ちゃいますよ。

「おじさんおかわり!」

「にゃん!」

 うん、リンちゃんは今日も元気です。元気に2杯目の御飯をご所望です。気が付くと俺よりもいっぱい食べてます。リンちゃん良く動くからな~。

 リンちゃんもチーちゃんと同じく俺の姉の娘さんです。本名は鈴音(すずね)ちゃんです。チーちゃんのお姉ちゃんです。幸いにしてメイド姿じゃありません。メイドさん二人を横に侍らせています。ある意味、一番奉仕されているご主人様です。奉仕してるの俺だけどね!

 そんな快活少女リンちゃんと一番意気投合しているのは、白黒両方の色を持ち合わせている子猫ちゃん。リンちゃんの足下でガツガツとおまんま食べてます。いえ、食べてました。リンちゃんがおかわりしてきたのと同時に俺の足へと頭をこすりつけてきて、ずっとおかわりを強請ってます。

 はいはーい、ちょっと待ってねー。先に大きい野獣ちゃんの御飯を用意してあげないと、俺ちゃん痛い目見ちゃうんですよー。最近、リンちゃんが狂暴になってきましたよっと。

 そんな白黒子猫ちゃんの命名権は、それが当然の様にリンちゃんが掻っ攫っていきました。一応、俺に一番懐いているようにも見えたんだけどね~。ここは大人になって、涙をのみました、うう……。名前はエルフと言うそうです。え~と、いったいどこから名前をとったんでしょうかね~。もしかして願望からです?

「ごちそうさまー」「ごちそう、さまです、にゃー」「ごちそうさまですの」

 ちゃんと両手を合わせての食後の挨拶です。躾はちゃんとしないとね。でも食器の後片付けは今日だけ免除です。だってもうそろそろ危ない時間だし。チーちゃんとユキちゃんの着替える時間まで含めると、むしろピンチってません?

「チーちゃん、ユッキー、早く早く」

「はいですの。急ぐのですの」「待って……リンねぇ……」

「3人とも、明日の準備は今日のうちに済ませておこうな」

 朝寝坊? いえいえ、ラジオ体操に毎日出かけている子供達の朝は俺よりも早いのです。むしろ俺が叩き起こされる方です。今日はリンちゃんにエルボードロップで起こされました。なのでちょっと胃の辺りが痛くて食欲が……。

「いってきまーす」

「おう、いってらっしゃい」

 そして今日も平穏な一日が始まります。こんな平和な時がいつまでも続けば良いですよね~。……エルボードロップされて朝起こされるのって、平和な証拠ですよね?



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 リアルで一週間が経てば、メイドオンラインの世界では約100時間遊んじゃっている事になります。その間にも色々ありました。

 例えば借金とかです。なんと、随分と減っているんですよ。何故かな~っと思ってちょっとササメさんにそれとなく聞いてみた所、どうやら修理素材の物価が一時的に超高騰したそうです。何でかって? 例のモンスターが街を襲撃してきた事件で、みんな武器防具の耐久が物凄い事になったからだそうです。

 加えて、マイホーム確保にみんなが奔走してしまい、一時的にほとんど狩りが行われず物の供給が一時的に途絶えたそうです。で、急激に修理素材が高騰したんだとか。

 それでです。俺ちゃんが荷物預かり所の倉庫に預けていた、グランドアントという蟻くんモンスターからゲット出来る大量の修理素材が、丁度良くそのタイミングで借金のかたに買い取られたんですよね。倉庫の肥やしにしておくのも勿体ないし、みんなの役にたったんなら良かった良かった。

 それでもまだ借金は90%近く残ってるけどね。200万なんて稼ぎはちぇせぇちぃせぇ。マリリンとセンねぇちゃんが買ったマイホームのお値段よりも高いけど!

 そしてマイホーム確保が一段落すれば、今度は金策ターンです。俺が持っていた蟻くん素材も、すぐに供給過多で以前よりも安く手に入る様になりましたとさ。

「カズねぇ、プチプチポーション・プチちょうだーい」

「おう、たくさんあるぞ。いつも素材を恵んで貰ってるからな。いくらでも持ってってくれ」

「2千個ほど貰っていきますね。50個単位でまとめてください」

「あいよ。少し待っててくれ。今、移し替える」

「じゃ、私はその間にジャンゴに餌やってくるね」

「あ、私もいきます。畑の世話をそろそろしないといけない時間でした」

 他に変わった点と言えば、錬金術スキルの熟練度が着実に上がっているという事だろうか。というか、判明した事実がありました。生産スキルの熟練度って、スキルレベルに見合ったアイテムを生産すると熟練度ツリーが現れるみたいなんですね。そしてそのツリーに表示される一度生産したアイテムに熟練度を振って、そのアイテムを作った際の効果を高める事が出来る様になるみたいです。

 何これ、ちょっと面白いシステムですね。生産アイテムごとに成長要素があって、色々楽しめそうですよ。

 職業レベルが上がらないとスキルレベルは上がらないし、スキルレベルが低いとスキル熟練度は上がりやすい。スキル熟練度が高くなってくると当然熟練度はあがりにくくなるし。かといってスキルレベルをあげないと上位の生産アイテムのツリーは解放されない。そして生産系の職業を持っている場合は、職業補正によって色んなメリットがあります。

 あと、生産すると職業の方の経験値も微少にですけどもえらえます。だから永久に職業レベル1/スキルベル1で熟練度稼ぎは出来ない様です。

 職業レベルが低くても、生産職じゃなくても、結構やり込める仕様ですね。しかもなかなか思い通りにならないスキルレベルとスキル熟練度が四苦八苦させてくれます。転職して職業レベル1にすると、いくら生産スキルのレベルが高くても上位のアイテムは生産成功率が極端に下がってしまうみたいですし。転職したてで高位アイテム作りでレベルアップ!という手法はちょっと難しいようです。

 ちなみに俺の場合は、非生産職での生産になります。しかも職業レベルがまず上げられない吟遊詩人なので、錬金術スキルはレベル1のまま、熟練度をがっぽがっぽです。今のうちは嬉しいけど、それはつまり高位アイテムはまず作れないという事を意味してるんですけどね。

 そんな俺が今作っているアイテムはというと……。



 アイテム名:プチプチポーション・プチ

 生産熟練度:18

 効果:使用するとHPが1回復する。ヒーリング効果で1秒ごとにHPが1回復する(継続時間1秒)。



 え、微妙? まぁそうですよね。使うとHPが1回復して、その1秒後に1回復して終わりですからね。結局、HPが2回復するだけのアイテムです。

 でも驚くなかれ。このアイテムの凄い所は、実は別の所にあるのだ。

 例えばチーちゃんことセンねぇちゃんから頼まれた様に、50個分を一つにまとめるといったいどうなるかというと。



 アイテム名:プチプチポーション・プチ×50

 生産熟練度:18

 効果:使用するとHPが50回復する。ヒーリング効果で1秒ごとにHPが1回復する(継続時間50秒)。



 となるんですよ! しかも手を加えればヒーリング効果の回復合計値はそのままで、回復量、回復時間も変更する事が出来ます。5秒ごとにHPが10回復出来るといった感じにですね。

 いやはや、リンちゃんことマリリンが言うには、これが結構重宝するみたいなんですよね。回復役がいない場合って基本的に戦闘中はアイテムで回復するしかないんですけど、回復アイテムって結構値段がかかっちゃうんです。HPが30回復するアイテムが300FGとか。ばかにならない金額です。

 ならば回復系スキルを持てばいいという話になりますが、その場合もう一つスキル枠を使用する羽目になるそうです。回復魔法スキルを持っていても、魔力スキルを持ち合わせていないと使えません。短剣術スキルを持っていても、技力スキルを持っていないと必殺技は使えません。うぉ……俺の短剣術スキルの価値がまた下がった!?

 そんな訳で、前衛職系のみなさんは回復スキルを持ち合わせてない事が多かったりします。逆にそんなもの持っていると、PT組んだ時に回復ばかりさせられ後衛化扱いされる事が多いそうです。

 そういえば以前一緒に冒険したユリアちゃんって前後衛兼任職みたいでしたけど、ほとんど後衛みたいな動きをしてましたよね。一応ユダちゃんという回復専門職がいましたけど、人数比を考えるとユダちゃん一人では回復が追いつきませんし。うん、納得です。

「プチポ50を50個完成っと」

 サービスサービス。プチポちゃん大量に余ってるから500ほど割り増しました。あ、プチポって言うのはプチプチポーション・プチの略称ね。だって長いんだもん。

「しっかし……そろそろこの部屋も手狭になってきたな。調子に乗ってプチポばっかり作りすぎたかな? 販売ルートでも開拓するかな……」

「あ、それならユダっちに相談してみたらー?」

 丁度ペットに餌をやり終えて帰ってきたマリリンがそんな事を言ってくる。リアルでは猫ちゃんを飼ってるので、こっちでは犬を飼い始めました。ブルドッグのジャンゴくんです。

「ん? ユダちゃんは回復職だからライバルだろう?」

 むしろ、フフフ……ッとダークな笑みを浮かべながら、嬉々としてどぶ川に流し捨てている光景が思い浮かんでしまう。可愛い女の子にそんな妄想をしてしまうなんて、俺ってなんていけないおじさんなんだろうね。

「最近、転職したらしいよ~? みんなで買った家が商店街にあるから、折角だし修行も兼ねてお店を経営してみるんだってー」

「ユリリンとユダリンは、リアルでは商人さんの家系なのだそうです。物資流通業?」

 遅れてセンねぇちゃんも畑に水やりを終えて帰ってきました。その畑に実らせているのは食べられない物ばかりだったりします。具体的に言うと、毒物……。毒料理スキルをそろそろ本格的に育てるつもりだそうです。えー。

「となると、ユダちゃんの恋人であるレイ君は、そのうち婿養子に入るという事かな?」

「もうこき使われ始めてるんだって。この前ちょっとシンちゃんに愚痴ってるの聞いちゃった」

 おおう……そんなレベルのお話なんだ。んじゃ、そのうちこっちでも二人の結婚式が行われるかもなー。礼服どこかに売ってたかな?

 という訳で、早速お宅訪問と洒落込みました。勿論、大量のお祝い品を持参してね。全部プチポちゃんだけれども。

 こじんまりとしたお店のカウンターに立っていたNPCのおばさんに話し掛けてユダちゃんを呼んでもらいます。そしたら突然に背後から抱きしめられました。そして、だーれだ。そんな事をするのはユダちゃん以外にいないでしょうに。

 そのままひっついて離れないユダちゃんを連れて店の奥へとゴー。いや、重いから。勿論そんな事は口が裂けても言えませんけどね。

「カズミン、ついに私の愛を受け止めてくれるのですね! 籍を入れるのはいつに致しましょうか?」

 俺の耳にふっと息を吹きかけながらそんな事を言ってくるユダちゃんを、俺は一人で相手にしなければなりませんでした。マリリンとセンねぇちゃんはここまで俺を案内してくれたらサッサと狩りに出かけてしまいましたよ。もうちょっとぐらい付きあってくれても良いのに。女子トークは無理ですけどー。

 その後、四苦八苦しながら俺の要件を伝え、無事にプチポちゃんがユダちゃんのお店に並ぶ事になりました。効果を説明して、実際に使ってみて効果を確認し、更に俺ならばプチポちゃん達を一つにまとめれる事を伝えるのに何でこんなに時間がかかるんですか……。

 さて、マイホームの部屋を埋め尽くしていた大量のプチポちゃんも、これで少しは減ってくれるでしょう。まずは1箱分持ってきたプチポちゃん計千個をユダちゃんに渡しちゃいます。一つの瓶が1センチ四方程度の大きさなので、箱詰めしたら軽くそれぐらいの数になっちゃうんですよ。

 ちなみにその瓶は市場に大量に出回っています。低レベルの生産職の人達はレベル/熟練度上げで大量に作りますからね。だけど瓶が小さすぎて売れない。だからとってもお買い得でした。瓶10個で1FGとか、安すぎです。

 ところでこのプチポちゃん、いったいいくらで売る事になりますか?

 あ、1個2FGですか……。1個あたりHP2回復するから、まずはそれで様子を見ると。回復アイテムの相場はもっと高いけど、ちまちましすぎて使いにくいですし、何より知名度が低すぎで売れるかどうかも分からないからと。だから買いやすいように安くして、少しずつ知名度をあげて顧客開拓も同時に行う手法をとるそうです。そして取り分は半々だそうです。

 まぁ俺としては材料費がほぼタダだし、調子にのって大量作成してしまい置き場所に困っている状態ですしね。最終的に入れ物の瓶みたいな値段になっても仕方ないと思っています。

 マリリンとセンねぇちゃんには結構評判いいんだけどな~。まとめたら、だけどね。

 じゃ、宜しくお願いしまーす。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 それから数日後。

 売れ行きが好調のためユダちゃんに納品を続けていたら、何故かレベルが上がりました。

 えっ!?

ユキ「あれ? あとがき劇場はどうしたのですの?」

リン「あれはお休みの間だけだよー。新学期が始まっちゃったから、時間取れなくなっちゃった」

チー「学生さんは大変なのです。お勉強で毎日アップアップなのです」

ユキ「だとしたら、私の出番が少なくなっちゃうのですの。困ったのですわ」

リン「夏休みに入ったら、また再開すると思うからそれまで待ってねー」

チー「ちなみに、お話の中での夏休みの事なので、現実と勘違いしない様にして下さいね」

ユキ「しくしくなのですの……」

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